第2話 亮の開放

和美が一恵に聞くと一恵は直ぐに答えた。

「はい、雪さんは美咲さんのところへ

行って昨日の事件の経緯を

 話して捜査活動に移っています」

「和美さん私たちどうすれば良いですか?」

玲奈は心配になって和美に聞いた。


「亮が戻るまで会社を守らないと、

関係各社には亮は急な出張で

アメリカに行った事にしましょう」

「分かりました」

みんなが返事をした。


~~~~~

警察庁の分室では美咲と雪が話していた。

「まさか国際的なテロリストジャック・モーガンが

 絡んでいたなんて・・・」

美咲は雪の話を聞いて驚いていた。

「しかも、亮が学生時代すでに

ジャック・モーガンと関わっていた」


「ええ、やはり亮は普通の人生は

歩めないのね。なんかかわいそうな気がする」

美咲はため息をついた。

「雪さんとにかく、全力を尽くして捜査をするわ。

日本がテロリストに狙われているのが

 事実なんだから」


「はい、それで捕らえた四人は?」

雪は与謝野、谷垣、大島、古森の自供が気になっていた。

「ええ、谷垣は自爆するほどの敬虔な

イスラム教信者、自殺する可能性があると

小妹に聞いているので残りの三人が先に口を割ると思う」


「そうですね」

「まずは樫村警部補が清水の家宅捜査でどれくらいの

 証拠を取ってくるかね」

「美咲さん、それで亮はどうなるんでしょう?」

雪は亮の事が気になって聞いた。


「ええ、それは父が防衛省に連絡を取ってアメリカ軍に

交渉しているわ、日本のヒーローを捕まえるなんて許せない」


~~~~~

検査キットの色が青に変わった時、

樫村は清水を睨みつけた。

「覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕だな、清水さん。

 我々はこんな事であんたを逮捕するつもりはない、

 本部でゆっくり聞かせてもらうよ」

樫村は清水に手錠をかけマンションから

警察庁へ移送した。

~~~~~

ニューヨークの千沙子の電話が鳴った。

「もしもし」

千沙子が言うと和美から静かに話した

「中村です、亮さんが大変な事になりました」

「どうしたんですか?」

千沙子の心臓の鼓動が早くなった


「アメリカ軍に身柄を拘束されて

アメリカに連れて行かれました」

「亮はいったい何をしたんですか?」

和美は美佐江と千沙子の身代わりの

誘拐から始まったテロ事件の話をした


「それで爆弾の爆発を止めたんですが、

それがアメリカ軍の秘密兵器だったそうです」

「それって言いがかりじゃない」

千沙子は怒りを露わにした。

「それで亮はどこに行ったんですか?」


「ニュージャージー州フォートベルヴォアール

アメリカ陸軍基地だそうです」

「わかりました、ありがとう和美さん。

 亮が保釈された時の為にこっちに待機するわ」


美喜はブルーノ・ジャックマンに電話を掛けた。

「ジャックマンさん、美喜です」

「やあ、美喜さん久しぶりだね。どうした?」

「亮がアメリカ軍に身柄を

連行されてしまったんです」


「なんだって!理由は!」

「それが・・・」

美喜は事の経緯を話した。

「わかった、フォートベルヴォアールは

情報保安指令部があるので

 亮に情報漏えいの可能性があるか

どうかを取り調べるんだろう。


 私の元部下や弟子たちがあそこに

いるので情報を取ってみよう。

 それからスチュアート上院議員にも伝えておく」

「ありがとうございます」

「美喜さん、EMP爆弾は国家機密なので

他には話さないように」


「承知しています」

「そうですね、最初に私に話して

くれたのは賢明な判断だった」

美喜は電話を切ると手を握りしめた。


~~~~~~

「ロビン、亮が目を覚ましたそうだ」

クリスがロビンに電話を掛けた。

「無事なんだな」

「ああ、しかしすぐに取り調べが始まる」

「うん、おやじの弁護事務所に連絡を

取ってすぐに身柄開放の手続きを取る」


「わかった、僕も尋問に立ち会うので

結果を報告する」

「頼む、亮を守ってくれ」

「わかっているロビン、任せておけ」


情報保安司令部の会議室に呼ばれた

亮は制服を着た六人の軍人と

クリスの前に座らされた。

「具合はどうかね?」

真ん中に座った男が亮に聞いた。


「はい、救助と救命処置に感謝します」

亮の丁寧なあいさつに恐縮した男がきいた。

「私はトニー・ハンクスです。まず名前を」

「團亮、日本人です。

日本で会社を経営しています」


「それが、どうしてEMP爆弾に遭遇した」

亮はトニーの質問の答え、

自分の姉の身代わりを誘拐その黒幕のテロリスト

ジャック・モーガン、その誘拐犯が

使っていたボートにEMP爆弾が

セットしたあったことを伝えた。


「なるほど、それでEMP爆弾を

どうやって解除しましたか?」

トニーが亮に聞くと亮はクリスの顔をチラッと見て


「10分前に爆弾の中のモーターが動き出したので、そこに

 ボートのエンジンから電気を持ってきて爆弾のモーターに

 過電流を掛けてモーターを破壊しました。そして船を沈め

 海中で爆発させました」

「うーん」


トニーはクリスの顔を見て

「クリス、團の対処法はよかったのか?」

「はい、我々がもし爆弾の処理をするのならば

爆発を防ぐ処理をしているうちに

タイムオーバーでした、それを内部から

破壊するなんて考えも及びません、

しかも被害を最小限にするために船を沈めるとは・・・」

クリスは首を横に振った。


「團、どうして過電流を思いついたんだ?」

クリスが亮に聞いた。

「はい、中に入っていたコンデンサーや

基盤が秋葉原で売っているような

手作りの安物だったので、

過電流で破壊できると思いました」


「なるほど」

クリスは大笑いをしそうになったが

それをあわてて口を塞いで止めた。

「と言う事はやはり」

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