第33話 再会

 エリーゼ元に駆け寄る一人の影。


「アイネ?!」


 何者かと身構えたが、エリーゼが名を呼ぶ声がさらなる混迷に誘う。


「ビャク!」

「え、父さん?」


 エリーゼと女性が抱き合って再会を喜んだかと思えば、二度と会えないと思っていた父が現れた。


「ど、どうして?」

「父さんは盗賊に負けるほど弱くないぞ。まぁ、馬車の馬が、矢で怪我をしたのに驚いてな。勝手に走り出したもんだから、戻ってくるのに時間が掛かったが…」


 「落とし物だ」と言って、あの日無くした腕輪をそっと手に乗せた。


「あ、あぁ…」

「今まで…よく、一人で頑張ったな」

「うあぁああー!」


 自然に涙が溢れて止まらない。父の温もりを感じながら、沸き上がる何かを堪えられなかった。

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