第32話 合流

 エリーゼと共に瓦礫の中を隠れ進む。


 スラムのゴロツキが火事場泥棒に夢中になっているとはいえ、エリーゼの姿を見留めれば手を出してくるだろう。


「はぁ…はぁ」

「大…丈夫か?」


 短距離を走っては急停止を繰り返し、まだ幼い白蓮たちは息を切らしていた。


「ええ…」

「ハァ…そ、そうか?」

「私より貴方は大丈夫?」


 崩れた外壁を駆け上り、地割れがもたらした被害を目の当たりにしたことで、抑え込んでいた罪悪感が顔を出していた。


「あ、うん。…なんとかね」


 気のない返事を返し、周囲を見渡す。


 都市に入る為に空掘のスラムで、二束三文のゴミを漁っていた。もし一人であったならパックのカードは勿体なくて使えなかっただろう。


「ひ…お嬢様!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る