第19話 侍女

 白蓮が幼児を保護し連れ去った後。ゴミ山にはとても似つかわしくない綺麗な装衣をした女性が、散乱した道具類を眺めていた。


 それは白蓮が回収しきれなかった道具類であった。


「姫様…」


 美しい瞳は憂いを帯び、不安に揺れている。


「見付かったか?」


「いいえ…」


 深々と被ったフードで顔を隠した男が、メイド服の女に話しかけた。


「俺も息子を探したい…手は貸すが最優先にはできん」


「理解しております。しかし、この地の領主が相手です…」


「領主のバカ息子が、俺の息子のマジックリングを持ってやがったからな。次いでに調べておくさ」


 女は頷くと男と共にその場を去った。


 遠目で見ていたスラムの住人達が、道具に気が付くと瞬く間になくなった。

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