第7話 隠れ穴

 スライムをやり過ごし、足場の悪いゴミの上を駆け抜けて隠れ家を目指す。そこにはこの世界で生まれ育ち、生き抜いた自分の全てが詰まっていた。


 白蓮が家として使っていたのは、堀の内壁が崩壊してできた浅い空洞であった。隠れ家の入り口を塞いでいる瓦礫を僅かにずらし、生まれた小さな隙間に身を滑らせる。


「ふぅ…」


 踏み固められた地面の上に腰を落ち着ける。


「腹ァ…減ったな」


 スラム暮らしがイメージだけの前世であっても、安全な食料が貴重品であるのは的を外さない知識だろう。カードに収められた物が劣化しないのだから、非常用としても早々に手を出せる代物ではない。


 白蓮は体を休めながら、自身がスラム来る事になった日を思い返した。

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