第8話 当日1

 木製の車輪が石を蹴散らしながら、情勢都市へ続く街道を進む。


「ビャク、昨日は5歳の誕生日だっただろう?」


 優しく声を掛けるのは、馬車を走らせる行商人の父。


「ほら、そろそろ自分のカードを持っても良い頃だから」


 そう言って差し出された藍色の石が付いたブレスレットとカードを収めるケース。


「この腕輪を付けていると、自然に回復する余剰魔力を貯められるんだ。この魔力を使って、カードから物を取り出すんだ」


 そう言うと父がカードから水筒を出して見せる。


「魔力を使わず無理やりカードから取り出す事も出来るが、それをやると二度とカードを再利用できなくなるから気を付けろ」


 無邪気な顔で解ったと頷く白蓮の耳に馬の嘶く声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る