給食

時間は昼休み。給食の準備を終えて食べてる最中にそれは始まった。




「優くんは綾乃ちゃんといつ出会ったの?」



…出たよ、この質問。



「綾乃とおれは小学1年の時に図書室で出会ったんだ。」



「え〜…たった一言で終わらせないでよ。」



綾乃の方に話さない様に目を配らせたが、話したそうに体を揺らしていたので昼飯を食べる事にした。


「仕方ないな〜…私から話してあげる!」



その言葉でクラスは大いに盛り上がっていた。



「小学1年生の時だったかな?優と初めて会ったのは放課後に図書室だったんだ。その時の私は今とは違って根暗な性格だったから、優が図書室に入ってきても気付かないふりして本を読んでいたの。そんな私を優が見つめてきたから私の内心は大慌てで。」



「え〜…優くんってその時から綾乃ちゃんが好きだったの?」



「そうだったら良かったんだけど〜、その時に優が興味があったのは私が読んでた本だったのよ。その本を優は買いたかったらしいんだけど、図書室にあったと分かったから読みたかったんだ。」



「えっ…それなら何で今の関係になれたの?」



「その時に私が『何か用ですか?』と勇気を出して優に聞いたら優が『あ、その…その本読み終わったら教えてくれない?早く読みたいから』と言ってきたから私は慌てて本を差し出したの。そうしたら優が驚いた顔して『まだ読んでるんじゃないの?』と聞いてきたから私は『何回も読んだから良いよ。』と言ったの。…その頃の私はあがってたからもう少し落ち着いてればなぁ。」



「へぇ〜、それがきっかけで仲良くなれたんだ。」



「そうそうこれがきっかけで家が近いのもあって今でも一緒に家族旅行やお祭りに行ったり公園やお互いの家で遊んだりしてるの。」



「…これカップル認定していいんじゃね?」



クラスメイトの一人がそう言うと、周りが僕を見ていた。



「ちょっと待てよ。まだカップルではないんじゃないか?」



「純ちゃん、それはどういう事かな?」



綾乃は声を震わせながら純に聞いていた。その後の純の言葉で綾乃がキレる事を皆分かってたのか空気が静まり返っている。



「だってさ、カップルってデートするもんだろ。綾乃と優はしたのか?」



「…!!!」



純からの意外な言葉に純以外の時間は止まっていた。



「確かにデートしてないもんな。だったら、まだカップルじゃないか。」



「デートしてないとか関係ないよ。一緒に家族旅行に行ってるならカップルで良いじゃん。」



「ご近所同士でする家族旅行は別にカップルじゃなくてもするだろ。オレ達も友人同士で行ったことあるしな。」



クラスメイトは僕の事そっちのけで僕と綾乃がカップルであるかないかで言い争っている。



「おい、お前らうるさいぞ。給食は食べたのか?時間がないぞ。」



時計を見ると、先生の言った通り給食を食べる時間が少なくなっていた。クラスメイトの殆どは慌てて箸をすすめる。そんな中、綾乃がとんでもない事を言った。



「…言いたくなかったんだけど優と一緒にお風呂に入った事あるんだよね。」



クラス中が騒がしくなっていた。発狂している者や黄色い声をあげてる者や吹き出している者が現れてるのが目に映った。



「綾乃と風呂に入った事あったけど、小学一年生の時の一回きりだったろ!?その時は異性で風呂入る事はヤバい事だって知らなかったんだよ!!」



僕の言葉を聞いたクラスメイトは僕に冷やか視線を送っていた。



「…優と綾乃はカップルかもしれんなぁ。」



「純…?」



「デートしていなくても一緒にお風呂はカップルかな〜?ヤバい事だって知らなくても裸の付き合いしたんだからなぁ。」



僕は食器を片付けて静かに教室を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る