1学期
第1話 男鹿 純
午前
初めて僕の女友達になってくれた男鹿 純。今日はこの子を観察して友人になれるか判断してみようと思う。
「おはよう、優。」
「おはよう、純。」
朝の挨拶を済ませたらすぐにホームルームが始まった。
(…綾乃がすぐに朝の挨拶して来ないのは珍しいな。)
「先生の自己紹介はこの前したから今日は何も言う事はない。ホームルームはこれで終わりにするからどんな自己紹介にするか考えといて。」
「優、おはよう。」
「おはよう、綾乃。」
先生が教室から出るとすぐに綾乃が挨拶しに来ていた。
「あのさ、優…純ちゃんと何かあった?滅茶苦茶仲良くなってるよね。」
「あぁ、純と友人になったから話してるだけだよ。あいつ女の姿した男だから話しやすくてさ。」
「…本当にそれだけ?」
「?…何だよ。そんなに俺と話したいなら話せば良いだろ。」
「今は話したい事思いつかないから大丈夫。また後でね。」
「お、おう…。」
「…おやおや、モテる男は良いですなぁ。」
「うっせぇよ、純。茶化すなよ。」
「おはよう、優、純。優は朝から両手に花を持ってて羨ましいな。」
「おはよう、友和…って友和まで茶化しにくるのかよ!」
「おはよう、友和。友和は分かってるねえ、朝から彼女と話してる所を見ると口を出したくなるよなぁ。」
「お前ら、いちゃつく暇があるという事は先生の自己紹介よりも良い自己紹介を思いついたんだな。お前ら4人先に自己紹介決定な…いやぁ、楽しみだなぁ。」
どうやらチャイムが鳴っているのに気付かずに話し込んでいたらしい。声のする方を見ると、笑顔で怒っている先生が教壇に立っていた。
「…言いたい事は分かるな。」
「…はい、すみませんでした。」 「すみませんでした!」 「ごめんなさい。」 「すみませんでした、次からは気をつけます。」
僕達はそれぞれ謝った後に自分の席に着いた。
「最初に誰が自己紹介する?」
「私から自己紹介します!」
4人で相談しようとしたら綾乃が自信満々に名乗り出ていた。
「私の名前は藤咲 綾乃です。趣味は読書で…優の彼女です、よろしくお願いします!」
…おーーーい!!!
声を押し殺して静かにした僕とは違いクラスは騒がしくなった。特に女子の質問攻めが騒音そのものだ。
「これ以上質問されたら自己紹介がこの時間で終わらなくなるから休み時間にする様に。」
先生がこの事態を収めてくれたおかげで何とかこの場は切り抜けられた…この後にある休憩時間が怖いけど。
「次は誰が自己紹介するんだ?」
「おれがするかな。」
「純か…いつでも良いぞ。」
「おれは男鹿 純。親父と小さい頃から柔道を続けている。昼休みにドッチボールするから一緒にしたい人は遊ぼうぜ!」
純らしい自己紹介だが、純を知っているクラスメイトは拍手し、純を初めて見たクラスメイトは目を丸くしている。
「次は俺だな…最後は嫌だし。」
「相変わらず優は無難に済ますなぁ…。好きなタイミングでして良いぞ。」
「…佐藤 優です。趣味はゲームや読書です。よろしくお願いします。」
よし、これで無難に自己紹介出来たはずだ。
一安心して座ろうとしたら、クラスメイトの女子の1人が言った。
「もしかして優くんと綾乃ちゃんって図書室か図書館で出会ったの?」
これを聞いた女子達は津波の様に僕に押し寄せてきた。
しまった、趣味が読書と言うべきではなかった!
そう気づいて席に座ろうとしたらすでに女子達に周りを囲まれていた。
「質問は自己紹介が終わった時だと言っただろ、早く席に着け。…よし。じゃあ、最後の自己紹介よろしく。」
先生が注意してくれたおかげで何とかこの場は凌げた…後でお礼でも言っておこう。
「最後は僕かな…僕は財前 友和。趣味はないですが、家の都合で沢山の習い事を習ってます。4年生の時に転校してきたばかりでまだ分からない事ばかりですが、宜しくお願いします。」
「…財前ってもしかしてあの財前グループの?」
「…えぇ、そうです。」
次の獲物を得たかの様に友和に色々質問しようとクラスメイトの何人かは近づこうとしたが、先生の咳払いを聞いて大人しく座った。
その後のことは余り覚えてない…思い出したくもない。
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