小さな恋愛ごっこ
迷人
プロローグ 入学式
僕は佐藤 優(さとう ゆう)、今日の長生(おさき)小学校の入学式で5年生になる。
「おはよう、優。」
「…おはよう、綾乃。」
この子は藤咲 綾乃(ふじさき あやの)、幼馴染。僕から貰った二つのリボンが気に入っているのかいつもツインテールの容姿は良い方の女の子。意外にクラスで人気がある。
「おはよう、優。」
「おはよう、友和。」
この子は財前 友和(ざいぜん ともかず)、小学4年生の時に転校してきたお金持ちの男の子。初日に僕から話したら友達になってくれた性格も頭も良いイケメン。
「優とクラスが違ったら嫌だなぁ…同じだったら良いね。」
「…違ったら違ったでどうにかなるさ。」
「その話はクラス名簿を確認してから考える様にしよう。」
「そうだね、そうしよっか。よし、早く一緒に見に行こう、優。この時の為に態々3人で校門の前で待ち合わせしてたんだしね。」
「…うん。友和も一緒に見ようぜ。」
「分かった。」
僕達は3人で玄関前にある看板に貼ってあるクラス名簿を確認した。
「やった!また3人一緒のクラスだよ、優。良かったね。5年1組か…。」
「…また一緒か。」
あぁ、また変わらない日常を過ごすのか。
「優、また宜しくな。」
「あぁ、また宜しくな友和。」
3人で教室に入るといつものクラスメイトといつもの挨拶をする。殆どが知っている面々だからクラス替えした感覚がない。
本当に変わらないなぁ…。
「ほら、時間になったから席に着け〜。」
よく見知っている先生の言葉でクラスの皆は席に着く。
「少し席に着くの遅かったぞ〜…次からは早くしろよ。知らない人がチラホラいるから自己紹介な。先生の名前は両角 双葉(もろずみ ふたば)、25歳の独身の女教師だ。先生と結婚したいなら早目に告白しろ、宜しく!」
皆が驚いている中、先生は堂々と立っていた。
「少ししたら入学式が始まるから先生の合図で廊下に並ぶ様に。先生以上の自己紹介をする生徒は明日するから考えておけよ。よし、ホームルーム終わり!」
「教師がそんな事言っていいんですか!?」
「おっ、良いツッコミだ。君、学級委員長決定ね。」
「…えっ?」
「あ、もう時間だわ…皆廊下に並んで〜!」
両角双葉先生…またの名をもういい双葉先生。真面目に付き合えば付き合う程付き合った生徒や先生がもういいと言って諦める事から裏ではそう言われている先生。そんな先生だけど、生徒の悩みや質問には真面目に答えてくれるから好かれている人には好かれている。本当に先生なのか分からない人。
体育館では先に6年生が整列していた。真面目に立っている人、ふざけてる人、イチャついている人がいた。整列し終えて周囲を見渡しているとTシャツハーフパンツの同学年の女子がいた。一瞬男子だと思ったけど明らかに目立つおっぱいで女子だと分かった。恥ずかしくないのかと思って見ていたら顔が合ってしまったので目を背けた。もう一回見てみると僕を見てニヤけていた。そんな事があったから今日の入学式は全く頭に入らなかった。
教室に戻ってホームルームをすぐに終えて家に帰ろうとすると声をかけられた。綾乃かと思って適当に返事したら違った。先程の女子だった。
「よぉ、さっきはおれに見惚れてたのか?」
「さっきは男か女か確認しただけだよ。それよりその格好恥ずかしくないの?」
「動きやすければ良いんだよ。男とか女とか気にしてたら外で遊べないからな。」
「…だったら俺とも遊んでみるか?」
「いいぜ!おれの名前は男鹿 純(おが じゅん)、気軽に純と呼んでくれ!んじゃ、明日からよろしく!」
「皮肉が通じないのかよ!付き合ってるこっちが馬鹿らしくなってきた。…ごめん、よろしく。」
「優、一緒に帰ろうって誰その男の子…いや、女の子!?」
「初めまして、男鹿 純です。優くんはおれに見惚れてたのがきっかけで今お友達になりました。」
「!!!…お前!?」
「ねぇ、優…どういう事?」
「Tシャツにハーフパンツの格好してたから男か女か確認してただけだって。」
「わたしという彼女がいながらそんな事するんだ!」
「あ〜もう、うるせえなぁ!只の幼馴染なだけだろ!!」
「うっへぇ〜…あつくなってきましたね。こっちまであつくなる前に帰りますかね。…ん?」
「…初めまして、僕は財前 友和だ。」
「初めまして、おれは男鹿 純です。」
「純…誤解を解くまでは逃さないぞ。」
「純ちゃんだっけ…優とはどんな関係になりたいのかな?」
「…フッ。」
「あ、てめぇ…友和!今自己紹介しておれを逃さない様にしたな!」
「そもそも俺は彼女とかそんなのどうでも良いんだ。勝手に彼女面して迷惑なんだよ!言葉選びに気を遣うのも疲れるから違うクラスになりたかったぜ。」
「何でそんな事言うの!?私の事嫌いじゃないなら別に良いじゃない!いつも一緒にいるならカップルでも変わらないでしょ!」
「…誤解を解く事をそっちのけで喧嘩してるけどいつもこんな感じなのか?」
「悪いな、いつもこんな感じだ。」
「純、お前からも言ってくれよ!彼氏になる事を望んでないのに勝手に彼氏にされるのはおかしいし純と話しただけで浮気になるのもおかしいって!」
「…まぁ、それが本当なら確かにおかしいな。異性の友人と話してるだけなのに浮気になるんだならな。」
「純ちゃんもそんな事を言うんだ!私は優と一緒にいたいだけなのに…もう勝手にすれば!」
「それなら勝手に純と友達やらせて貰います。ありがとうございます。」
「おいおい、それは言い過ぎだろ、優。」
「だって、純と友達として仲良くしたかっただけなのにやめろと言われるんだぜ。キレても良いだろ…。」
「…そう言う事を言われたらおれからは何も言えなくなるだろ。」
「!!!…帰る!」
「2人共、言い過ぎだ!綾乃、帰る前にお互い謝ってから帰れ!」
「…分かったよ、友和。綾乃、言い過ぎた、ごめん。」
「…私も言い過ぎました、ごめんなさい。」
「お互い言いたい事はあるだろうけど、今日はこれで解散。じゃあ、また明日学校でな。」
「友和、格好良いじゃん!」
「…純、折角良い感じで終わったのに茶化すなよ。」
「あはは、ごめんごめん。じゃ、また明日。」
「じゃあな、純、友和、綾乃。」
「じゃあね、優、友和くん、純ちゃん。」
いつもと変わらない入学式だと思ったが、今年は違った。初めての女の子の友人の純に出会えたからだ。色々あったけど、この出会いで僕がいつも望んでいる日常になってくれるのだろうか?
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