EpisodeEX.2 アフター・ストーリー①
———マジーロ魔法学園都市 スイーツ専門店 「デビルス・プリン」
リームとノアは、ここの店の期間限定スイーツを食べに来た。
「はいどうぞ、期間限定の特大サイズ『デビルス・プリン』カレー味です」
この店の通常の看板メニュー、「デビルス・プリン」は、黒いプリンに血をイメージしたジャムがかかっているのだが、カレー味というだけあって、今回は茶色いカレールーの様な色をしていた。そして特大サイズというだけあって、大きさがリームの胸から頭頂部まであった。
一応普通サイズもあるのだが、「どうせなら二人で切り分けたい」とわざわざ特大サイズにしたのである。
何だかイ○スタ映えしそうなスイーツだとリームは思った。この世界にケータイがないので、手軽に写真を撮る文化がないのが残念だ。
「いや、作るか。ケータイ」
リームが誰に言うでもなく呟いた。ノアはその意味がわかっていない様だったが。
ただでさえ崩れやすいプリンで、その上デカいので、切り分ける事には苦労を要したが、ノアが、「私に切り分けられないものはない」と言いながら、うまく切り分けてくれた。
「いっただきまーす!」
ノアは手を合わせて元気に言った。そしてしばらく食べ進めた後で、ふと気になる事があったので、リームに単刀直入に聞いてみた。
「そういえばさ、何であいつにケンカ売ったの? 最終的に理事長が庇ってくれたからよかったけど、それがなかったら殺されてたのに」
ノアは、リームはそんな無謀な事をしない人物だと思っていた。例え心底腹が立ったとしても、ある程度の勝算がなきゃリームは、動かないと思っていたのだ。
リームは口を開く。
「それはな、おれにある程度の権力があったからだ」
「権力?」
意外な返答だった。地方貴族なノアにそんなのがあったっけ。
「『高額献金者』って知ってるか?」
「うん」
「高額献金者」とは、その名の通り学園に多額の換金をした人、もしくはグループである。多額の献金をすれば、当然学園内における影響力も多いものとなる。確か王家が5000万ウーラ(ちなみに1ウーラ=約1円)でトップだった筈だが、最近トップが入れ替わったという事をノアは風の噂で聞いていた。
「え……まさか……」
「そうだ。おれの開発した新しい魔法式を買いたいっていう人達がいて、入学する前からも毎月学園に献金してたんだ。ざっと1億ウーラを。だから、いざという時はその権力を使ってもみ消そうと考えてた」
「へー」
ノアにとってはわけのわからない事だった。恐ろしい世界である。
リームもプリンにスプーンを伸ばし、口に運ぶ。「うまいうまい」と言いながら笑顔で食べるリームを見て、「この平和がいつまでも続けばいいのに」とノアは思うのだった。
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