EP.5
あの後、貨幣や各国のルール、常識、死王のことなどを教えてくれた。
興味深い話も多かったけど、もっと詳しく聞くためには時間も足りなかった。
ミストさんからは野営セットや遠出に必要な装備一式、10回限りの連絡用魔道具、3回限りの防御用魔道具をもらった。全部で100万エナらしい。日本円にして1億くらいだ。ヤバい。
あとは「姿を変えられたり隠せたりするようになったらいつでもうちにきてくれ、歓迎する」とかも言ってた。
どうやら今のボクの姿では国に入ることができないらしい、それどころか「悪魔だ!」「堕天使だ!」などと言われ討伐される可能性すらあるとか。
じゃあどうするか……ってなった時にセバスさんが「国の影響を受けず、かなり過ごしやすい場所を探しておきましょうか。姿が変えられるまではそこに家を建てて過ごしてみてはどうでしょう」って言ってくれたので、とりあえずその言葉に甘えることにした。
ただそれまでは野宿……なのだが、野営セットのテントが魔道具だった。外観は普通のテントなのに中は大体6畳くらいの部屋。正直もう困らないが……?
ちなみに調味料を強請ったら「それほんとに高いんだからな……!大事に使えよ……!!!!!」と言って塩と胡椒くれた。やさしい。
……これからどうしようかなぁ。正直に言って全然やることがない。
う~ん……とりあえず私の方でもいい感じの場所を探してみようかな。
「よいしょ……っと……」
腰を掛けていた岩から立ち上がる。
本当に自然が豊かでいい場所だ。地球じゃ見られないような地形もある。これも魔法だろうか……。
正直ここに住みたいまであるけど……私にはちょっと暑いんだよね~。
仕方ない……もう少し涼しい気候の場所を探そう。
───────────────────
だいぶ歩いたな~。多分120kmくらい。もう少しで森を抜けるはず。
とりあえず北側を目指して歩いてるんだけど、まあ所詮120kmだしずっと同じ森だし体感温度的には何も変わらない。
……それとさ、あそこに何かいるんだよねぇ。
多分人なんだけど……フードを被っててよくわからない……ただ、「あと何人だ?」「3人、あと少しだ……」みたいなヤバそうな話してる。
もしかしたら行方不明者を探してるだけかもしれないけど……なにかいや~な予感がするんだ。ちょっと後をつけてみようかな。
…………
……
(……これは……)
酷い惨状だった。少なくとも迷子を保護しているとは思えない。
恐らく盗賊やその類の物。ただ、この場合はヌペト教団員なのかもしれない。
あと三人なんて、盗賊は言わないはずだ……。
とりあえずは救出すべきなんだろうけど……内側から先に崩した方がいい気がする。本拠地じゃないかもしれないからもう少し観察を……。
いや一度隠れて全員救出しよう。ここが本部じゃないならおそらくそれで本部に報告をしに向かう……はず……だけど…………どうやって?
どうやって救出する?少なくとも私はテレポートなんてできない。
……全員気絶させる……しかない……か……。
……いや、私の氷はどちらかというと暗"殺"向けだ。少しの魔力を使って粒子状の氷を吸わせ、肺や脳に入ったら魔力を強めて内側から凍結させる。この世界では司法解剖のようなことはされない。他殺か自殺かを調べるため、魔力を見るだけだ。
魔力は人によって違う。魔力が残っていればだれがやったのかわかるんだ。
しかし、私は魔導の極意の効果で魔力を自由に操れる。氷を溶かし、魔力を回収すれば完全犯罪が成立するのだ。
……だが気絶となるとどうだろう。武導の極意を持っているとはいえ、気付かれないように全員を気絶させるのは至難の業だ。
ここに来るまでに複数の団員を見たが、相互監視のようなことをしている者も多かった。大体6割ほどがしている。
つまり、誰かを気絶させるともう一人にバレる可能性があるのだ。
……はてさて、どうしたもんかなぁ。
気絶は厳しいし、だからといって助けないと私の心が痛んでしまう。
それに、ここで助けなければ魔王や悪魔が復活、召喚する気がする。
……
あ
いいこと思いついた。
「主要そうな人以外全員殺して上に報告させに行けばいいんだ」
──脳死だった。
「よし、なら早速やろうね!」
……
私、よく考えたら人なんて殺したことなかったっけ。
なにか……なにかがおかしいな……。
正直に言って、今人を殺すことに抵抗がない。前世の自分じゃあり得ないことだ。
それに人を殺したことがない割には能力での暗殺の仕方も分かっている。
……考えすぎるのも、だめかもしれない。
それによく考えたら捕まっている人達の中に子供も居たから……。
うん、ここで殺すのはやめた方がいいかも。
なら氷で濃い霧を……
それで大丈夫なのは私だけか、普通は氷でできた霧の中では生きていけないはず……。
なら今日一日は観察した方がいいかも。
巡回ルートやおそらく主要人物以外を殺すためにも……。
すまない捕まった人たち。
猶予は少ないけど、間に合うことを願ってくれ……。
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