EP.4

「ふぅむ…主は産まれたてなのだな」



「えぇ、なのでこの世界のことがよく分からなくて」


「では、移動しながら色々と教えてやろう。クレイ、地図を」


 うおぉ……ありが……た……


「こちらに」


 ……はっや!名前呼ばれる前に準備してなかった?


「まず国を説明……いや、その前に宗教を教えておこう。

 この世界には3つの宗教がある。人の女神・イエロや美の女神・メヌなど、複数の神を信仰している『ヴァスグマ教』 主神・ゼウスを唯一神として信仰する『ギウルド教』 そして魔王にして死王・イードルンを信仰する『ヌペト教』の3つだ」


 イエロさん……ここで名前が出てきたってことは、かなり高位の神様だったのかな。


「正直に言って、ヴァスグマ教とギウルド教については気にしなくていい。ヴァスグマ教もギウルド教も今は仲がいいのでな」


「ん?多神教と一神教なのに……仲がいいんですか?」


 違和感。宗教については全く詳しくなかったけど多神教と一神教って仲悪くなかったかな。


「あぁ。まぁそのあたりは追々話そう」


 むぅ。


「国を話す前に知ってほしいのが、ヌペト教の脅威だ」


「そんなにヤバいんです?」


 人殺したり誘拐したりかな?


「うむ。この世界には6つほど大国が存在していてな。その全ての国で誘拐や殺人などを高頻度でやっている」


 合ってた。


「それ、国が本気で動いてもどうにもならないんですか?」


「ダメだった。技術力や戦力が桁違いなんだ」


 なるほど……?国が動いても勝てないとか無理では……?


「そもそもヌペト教本体は少人数なんだ。だが、そのどれもが技術を持っていてな……」


「本体?分体みたいなのがあるんです?」


「分体というよりは組織に近い……ううむ、説明がしづらいぞ。本体は少人数を集めた組織でな、そこから派生していろんな組織ができていったんだ」


 元の世界でいうところの親会社と子会社みたいなもんなのかな。


「で、実際ヴァスグマ教もギウルド教も元は仲が悪かった。だが、ヌペト教がここまで力をつけてしまったんだ。喧嘩している場合ではないだろう?」


 まぁそれはそう…だけど……


「……正直腑に落ちない部分はいっぱいありますけど…ふむぅ……つまりはヴァスグマ教とギウルド教は手を組んでヌペト教を潰そうとしているってことですか?」


「そこに大国も絡んでいるが、大体そういうことだな」


 う~ん……なんか違和感あるけど……。


「で、6つの大国についてだな。」


 あ、忘れかけてた。


「これは前提なのだが……この大国はすべて腐っている。貴族がバカなんだ」


 んんん大直球。そんなこと言っていいの?


「まずは今現在向かっている『ロマリダビア王国』。私の領地があるのもここだ。住民や貴族は比較的穏やかで貿易の中心としても動いている。魔法王国としても有名だな。おそらく一番腐っていない。貴族が腐っているが、王族はまともだ。だが他の国に比べて消極的なのか、腐った貴族が一行に減らない。王はリビド・アレンディア様と謂う。最近はよく体調を崩されてるようだが……」


 腐った貴族……もはやテンプレだよね。


「で、ロマリダビアから北にいくと『メリーガ法国』に行き着く。ここは本当に秘密主義な国でな。何が有名というか、その秘密さが有名というか……他の国の商人は壁の外側で商売させられるし、そもそも国民以外は出入りができないんだ。これはうわさだが国民は全員会話を聞かれていたり、食事や外出はもちろん、トイレや着替えまですべて魔道具で見られているらしい。一番プライベートが無い国でもある」


 ……絶対に行きたくない……というか、元の世界のヤバい国より酷いまであるような……。


「次、ロマリダビアから北北東に行くと『ミア帝国』に行き着く。上層部が本当に腐っている……全員が軍事思想を持っており、常に食糧不足だ。理由は輸入ができないからだろうな。そもそもここはほぼすべての国から嫌われているんだ。隙を見せれば戦争を仕掛けられる。何とも厄介な国だ……」


 最悪すぎる。国民がかわいそうだなぁ。


「ロマリダビアから東に行き海を越えると『日の国』に行き着く。約1000年前にできた国なのだがすさまじい技術力を持っている。刀術で有名だ。だがここも実質的な鎖国状態であり、腐り具合がまったくわからんのだ。初代勇者が建国したそうだが、今はそこそこに黒いうわさが流れている。亜人が多いらしい。一応輸入や輸出はできて居るのだがな……」


 日の国!?日本のことじゃ……勇者ってことはもしかして、私以外にも転生者がいたのかな。

 っていうかそれ鎖国って言えるの?


「次、『ゼナフ天空邦』ここは文字通り天空にあり、毎回移動しているのでどこにいるかが全く分からん。それとどうやって天空に浮いているのかも判明していないな。まあ最古の国、技術だ。仕方がない。それと唯一の例外だ。腐っていない。天に住まう者は天使に近いのだ。」


 おおお、急にファンタジー!天空邦かぁ、行ってみたいな。


「最後、ひたすら南に進み、世界の果てに『シェハナ魔王国』がある。ここは国というか……人類の敵地に近いな……我々人類が勝手にそう呼んでいるだけだ。だが城はあるし街のようなものもある。魔人が住む国だ。遠いとはいえ、危険なので近づかない方がいい。」


 魔王国……ヤバそうだ……魔人が住む国の後に危険ってことは、魔人は危ない?

 それは早とちりかな……?私も実質魔人みたいなものだし……。


「……なるほど……国より宗教を先に説明したっていうことは、理由があるんですよね。もしかしてこのほとんどの国の上層部がヌペト教団員の可能性がある……とかですか?」


「うむ、多少間違いはあるが大体その通りだ。一度天空邦と魔王国以外のすべての国でヌペト教を潰そうとしたことがあるのだが、そこで使われた軍が明らかに少なかったのだ。ロマリダビアが10万、メリーガが3万、ミアが1万、日の国が7万。計約21万人の軍隊が集まったのだが…メリーガとミアが少なすぎるんだ。ロマリダビアと日の国はおそらく大丈夫…のはずだ……。」


 メリーガはまだしも、ミアが1万なのは少し違和感があるよね。というか最後、言葉が詰まっている……?もしかして…?


「……確実に大丈夫だ、とは言えないっていうことは……」


「……これは18年前の話だからな。今が大丈夫かはわからないし、なにより日の国もロマリダビアも、内情は完全にカオスなんだ。」


 ふむ……日の国の内情も分かってるんだ。


「何より日の国だな。そもそも日の国はこんな鎖国紛いなことをする場所ではなかった。それに15年前、上層部が入れ替えられた時があったんだ。その時から何かがおかしい……どこもかしこも改装工事ばかりでな……正直、これに対しては何とも言えないんだ。18年前の戦いで内部に誰かが入ったとしか思えん。」


 ……


「…話が逸れたな。貨幣について話そうか………………」

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