EP.3
あれからさらに5時間、遂に速さに慣れた。もはやお腹も減っていない。当たり前か。精神体だもの。
っていうかさ、雲ってあんなカオスだったっけ。
霰に水に雷ってさ、不味くないか。
これ不味くないか…?
って思ったんだけど、例の雲を凝視してみると中になんかいた。
多分ドラゴンとかその辺の生き物だろう。
運が悪かったんだ。
ってかなんで見えるんだこの身体。改めておかしすぎるだろ。
そう考えながら垂直跳びで力に慣れ、制御もできるようになってきた所で次は軽く走ってみた。
まあ初めは転んだけど、それでも初めて走った時よりは制御できてた。
それからは地獄だった。4時間ほど走ってたんだけど、木にぶつかったら明らかに毒持った生き物ばっか落ちてくんの。まだ石にぶつかった方がマシだったね。石を破壊したらワームがうじゃうじゃ出てきた時は気絶しかけたけど。
流れ弾とか味方の攻撃とかは無効化されるように作ってるとはいえ私は精神体だからさ、私に対しての「殺す!」とか「邪魔をするな!」みたいな明確な強い意志を持った攻撃で毒を注入されると普通に死ねるのよね。
まぁこのレベルの生き物に攻撃されても多分痛くも痒くも無いんだろうけど、当たらないに越したことはないからね。
まあそんなこんなで無事全速力で走れるようになったのだ。アヴァちゃんえらい。
あと道中で綺麗な湖があったので水分補給しながら顔を見た。めちゃくちゃ可愛いじゃん…美少女じゃんかよ……。
とか思ってたらヌシっぽいのに喰われかけた。
「こんなに綺麗なのに、他の動物が飲みに来た痕跡が無いなぁ…それに物音も無い……ま、大丈夫っしょ!」なんて楽観的なこと考えてたから死にかけたよね。
ちなみにヌシの攻撃は私にちゃんと当たりました。
蚊に刺された程度の痛みだったけどこの油断が命取りになるので今後は油断しないようにすると決めた。
ありがとう。今晩の夕食さん……美味しかったよ……。
その後は普通に木の上で結界張って寝て、無事に次の日。
んで今朝。寝起きに悲鳴と鍔迫り合いみたいな音が聞こえたのですぐさま救助に向かうことにした。
そしたら6名中1名負傷で馬車損傷。しかも負傷者は見た所ヒーラーだ。タンクとアタッカーは何をやっているのだか…。
馬は1頭は無事っぽいけどもう1頭が足が折れてる。元の世界ならもう助からないかな……。
敵はオーク3体と後衛にゴブリン2体、遊撃に1体いる感じかな。
オークが1体の傷が酷い。
多分タンク役だったんだろう。他と比べて図体が大きく、攻撃よりも守りに徹する動きをしているように見える。
正直人間側はもうキツいだろう。ここまで来たらもう死を待つのみって感じだった。
ので。
『
手元に魔法陣が発生し、氷で出来た桜色のオーラを纏った刃渡り50cm程の刀が出現する。
正しく名匠の打った刀のように煌びやかで美しく、刀身はもはや見えていない。それはもう物理的に。
「切れ味は良いみたいけど耐久性がバツっぽいんだよねぇこれ」
そう言いながらオークに向かって刀を振るう。
距離は10m。当たるはずがない。
が、オークの……いや、オーク"達"の身体はバラバラに弾け飛び、肉片は全て凍てついた。
「……よかった」
今の言葉は"初めてこの刀使ったけど切れ味ヤバすぎコエー!ヤベー!!!"という恐怖の言葉である。
人間に被害が出ていないことを確認すると、残りの後衛ゴブリン達も片付ける。
自分よりも格上な存在が同時に三体弾け飛んだ様子に固まっていたゴブリンはいとも容易く葬られた。
そして、私は颯爽と彼らに声をかける……。
「間に合ってよかった。大丈夫でしたか?」
……と、今までの状況はこんな感じだった。
で、現在。
「ヒイッ……く……くるな……!化け物が……ッ!」
アイエーッ!!??!?!?暴言!?暴言ナンデ!?!?
「えっ……なぜ……?」
「"片翼"の天使は堕天使の証……それに、無くなったであろう片方が黒いということは貴様……ッ!"死王"と契約をしたな……ッ!?」
……ふえぇ……にゃにぃ……?あたちわかんにゃいよぉ……。
「あ……あの、ミスト様、落ち着いて……」
「落ち着いてられるかァ!今!目の前には!我々の!神に仇なした!愚か者が居るのだぞォ!」
ふぇ……
「あ……ぅ…………ごめん……なさい…………」
うわぁダメ、泣いちゃう。
神に加護を貰ったのに神に仇なすって言われるなんて……。
「……た……助けていただいてありがとうございました。彼はちょっと落ち着かせますので…大丈夫ですから…」
「……ぅん……ひぐっ……」
泣いちゃった。おかしいな。精神体だからかな。暴言がザックリくるな。
「……すまない。取り乱してしまった……ああいう時、私の状況判断能力が著しく低下してしまうのだ……本当にすまない……」
「……ぐず……大丈夫でず……」
なみだ とまらん 検索
「……とりあえず自己紹介しましょう。私はミスト様の専属執事をやっております。クレイと申します。以後お見知り置きを……」
くれいさん……ハンカチ手渡しながら自己紹介なんて……いけめんさんだ……。
「私はクレイル領の領主をやっている。ミスト・クレイルだ。先程は命の恩人になんと無礼なことをしてしまったのか……心の底から詫びよう……」
じつはいいひとだけどふだんのすとれすでああなっちゃうひとだ……やすんでね……。
「……アヴァルティル……っていい……ます……。天使と悪魔のハーフ……です……よろしく……」
こわい……こわいよぉ……。
「む……まさか天使と悪魔のハーフだったとは!邪悪な気は感じていたが、そこだったのだろうな」
「失礼ですよ」
「あっ……すまん……!」
「……ぐ……す……ふ…………んふ……んふふふ……ん……んふふ……なんか面白い……フフフフフ……!!」
むり、わらっちゃう。
「……笑い方は悪魔みたいなんだな……」
は??????ボソッとなんか聞こえたが????????
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