第4話
埼玉県立11135A高校はしらこばと橋にほど近い田中光村亮のマンションからは自転車で三十分のところにあって、地獄の臭気が抜けた制服を着用した田中・光村・玄関で足を止めた・亮は、やはり学校が恐ろしかった。麗しきバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの大奇跡あってここまで準備できたが、無垢の少女のこぼしたる油もて洗髪したとはいえ切り揃えたわけではない邪魔っけな前髪に覆われた視界から見るものは爪先に履いた清潔でも不潔でもない革靴に傷は少なく皺もなくてそれが大牢獄の囚人の足枷のごとく重たく動かしがたいのは地獄の臭気から脱したことでいやむしろ地獄の臭いを闡明するものであったその背中にバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの乳が乳した。
お姉ちゃんが一緒に行くって言ったでしょ(^o^)
怖いことからぜーんぶ守ってあげるからね(^_^)
乳が乳することで光村の半身の鼬が鎌首もたげてこちらをのぞき始めたが光村とて今の生活が正しいとは逆立ちしても思えなく、そうかといってリンボに舞い戻ることが正しいとも思えなかったが革靴を履いた靴を僅かでも前進させれば時は一切幸運なる光村の味方であるのは乳を乳する乳の化身のバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんが光村のもとに受肉したことからも知れる。乳に乳される背中を押されいよいよ長く苦しく怠惰で幸福で理屈だった遮光カーテンより抜け出した光村は自転車に跨ってなおバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんは荷台に腰掛けて乳を乳し続けた。東越谷より元荒川沿いに遡上して柳の並木の狭い道を抜けて越谷駅に向かう途中に越谷市の官庁街ともいうべき一画があり、しかしそれらが光村の生活に何の慈悲あったものかと思えば、邪悪な官憲権力の行使者が立ち塞がり二人乗りを注意してきて光村は慌てて自転車を降りようとしたが、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんは聖杖=ダーク・デビル・アーク・イビル・聖杖を構えたその途端、行使者はバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの威光に当てられ仮相を破り真なる姿の宇宙の破壊者45528099647としての正体を現し拳を振りかざしてまじないの言葉を早口にて叫べば暗黒星雲よりスクランブル発進した破壊パトカーが破壊サイレンをけたたましく鳴らしながら成層圏の青く霞む先から大破壊の天撃となって降り注ぐが、45528099647の呪法はバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの手をかかずらわせるものではなくて乳に乳される光村のペダルを漕ぐ足に早回しにさせると自転車は乳の内に含まれるダークマターにより活性化されて羽馬のごとく空を駆け出し天撃を回避し45528099647は余波に巻き込まれて自滅して越谷の官庁街ともいえる一画は死の灰の降り注ぐ死んだ都となり果てたが、やがては神々の意思ありて芽吹く命もあろうが大罪に苛まれた行使者たちは一様に救われぬ亡者となりて永劫の時を不死者として過ごし、弥勒菩薩の登場を心待ちにしながら光村への冷酷な仕打ちを反省するのだったが、宇宙の破壊者は45528099647だけではない。そもそも宇宙の破壊者とは宇宙であるバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの意志に背いて宇宙を経営する善でも悪でもない宇宙コウモリであり宇宙天の邪鬼であり、つまるところは完全にして包括にして破廉恥にして健全なるバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんを敵味方の二元論へと堕落させようとする記号意志であり、即ち記号意思とは一切を定義し己らの存在を記号もて証明するから己を己で定義することかなわず、順接と逆説が同様に接続詞でしかないという納得しがたい理論がまかり通るし、直接それを定義することができずに時には長々とした証明文がそのまま記号意思の名前となって、それでは自己とは何であるかという問いに対しては記号意思の多くが財布を開くという珍妙な答えを返すのだから記号意思の何と寂しげであることか。対してはバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの御名のなんと偉大にして崇高にして簡便にして含蓄がありウィットに富んでいることか。バーニングであり、ゴッドであり、デビルであり、女神であり、ちゃんである。あるいはこれを思いついた順番に羅列しただけの無機質な言葉であると捉える者もあろうがたとえばちゃんがバーニング・ゴッド・デビル・女神のいずれの語よりも先に持ってくることができないという一事からして誤った論理であり、それは既にして記号意思の手の内にあって手遅れであるがたった一つだけ記号意思の呪縛から逃れるにはその一語ずつを噛みしめるように口にしてみよ、さすればバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの存在をしかと感じることができよう。バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんとはバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃん以外にはあらず、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんと唱えれば、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんは微笑むのだ。ハレルヤ! 恐らくはバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんは敵である記号意思にすら彼らがそれを望みさえすれば微笑まれるに違いなくて、それはリンボたる11135A高校ですら救われて真なる名前、即ち聖刻を取り戻すことであろう。行け、行け、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃん。そして田中光村亮よ。お前がいくら恐れようともバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんとともにある大いなる宇宙意思は、記号意思を駆逐することを是とし非とし、つまりは好きだけど嫌いであるが離れがたく思って寂しく泣いているのは記号意思には決して叶わない至高天の境地であるのだ。あぁ、この通学路とは煉獄界。恐るべき11135Aに向かうのにここはまだ引き返すことができる地点であるが一漕ぎごとに11135Aから圧迫感が漂い始め、二人を乗せた自転車は鉛のように重たく鈍くなって急降下を始めるが、しかし万有引力に従いながら決して屈することのないバーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの聖乳房によって天撃によって滅んだ越谷市役所から舞い上がるデス風に当てられ一度はしぼんだ筈の光村は聖なる上向きを見せて埼玉の遙かな平地の上空を自転車は飛行して遂に11135Aの校門を飛び越えたためにこの門をくぐる者は一切の希望を捨てよとは門をくぐって初めて強いられる掟であるが、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんの大奇跡によって校門を飛び越えた二人にその掟を強いることはできず、バーニング・ゴッド・デビル・女神ちゃんは相変わらず乳を乳したまま永遠の微笑みもてかく語りき。
ここが亮くんの学校なんだ(^_^)
お姉ちゃん、亮くんが勉強するの頑張って応援しちゃうぞ~(^_^)v
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