第9話【おはよう】

「あ、おはよう悠太」


 目を開けると目の前には彩花が居た。


「……そうだ、俺彩花と寝たんだったな」

「寝た……うん、昨日の夜はお楽しみだったね」

「何もお楽しみじゃなかった」

「またまた~、あんなに積極的だったじゃん」

「お前がな」


 そう言って俺は布団から出ようとしたが、彩花が腕を掴んで止めてきた。


「まだ出ちゃダメ」

「何でだよ」

「まだ近くに居たいもん」

「…………はぁ」


 俺はもう一度布団の中へと入った。


「あれ? 素直……」

「まだ眠たいからな」

「素直じゃなかった! もう、素直に私と近くに居たいって言えば良いのに」

「いや、本当に眠いから」


 結局、俺は彩花が寝た後も中々眠りにつくことはできず、記憶では眠れたのは彩花の眠った三時間後だ。

 それまでは明かりを最小限にしてスマホを少し触ったりして普段通りにしてみたりして眠れるかどうかを試してみたが、結果は目を瞑り続けるのが良かったらしい。


「む、素直になればいいのに」

「じゃ、おやすみ」

「え、ちょ、ちょっと! 本当に寝るの!?」


 目を瞑ると、彩花は「寝ちゃダメ」と言いながら身体を揺すってきた。


「ねぇ、一人だと寂しいから」

「まだ起きちゃダメって言ったのは彩花だろ」

「けど寝ても良いなんて言ってないもん」

「でも眠いんだって」

「じゃあなんでさっきは布団から出ようとしたの?」

「目覚ますために顔洗いに行こうと思ったんだよ」

「……じゃあ行ってきて、早く行ってきて」

「……分かったよ」


 俺は彩花からの許可を貰い、布団から出て顔を洗いに行った。

 

 やっぱり顔を洗うと少し目が覚める。


「あ、早く早く」


 顔を洗い終え、リビングに戻ると、彩花はそう言って隣をポンポンと優しく掌で叩いた。


「あ、ちょっと! なんでキッチンの方に行くのよ」

「お腹空いたから」

「じゃあ私が作ってあげる」


 そう言って彩花は勢いよく布団から飛び出し、俺の方へと駆け寄って来た。


「別に良いよ、俺朝あまり食べれないから食パンで十分だし」

「もう、朝ごはんはちゃんと食べないとダメだよ。玉子焼きとか目玉焼きくらい食べなよ」

 

 そう言って彩花は冷蔵庫から卵を取り出した。


「でも俺朝はパン派だし」

「分かったわよ、じゃあちょっと待ってて」


 そう言われ、俺は机の前で座って待った。


「はい、できたよ」


 少し待つと、彩花はそう言って俺の前に作ってくれた朝食を置いた。


「目玉焼きサンドだよ、ハムも入ってるから。一緒に食べよ?」


 そう言って彩花は自身の前にも俺と同じ物を置いた。


「いただきます」


 俺はそう言って一口食べてみた。

 初めて食べる料理だが、想像以上に美味しい。

 

「どう? 美味しい?」

「…………」

「もう。頷くだけじゃなくてなんか言ってよ」

「…………口の中にまだあったんだからしょうがないだろ」

「じゃあちゃんと美味しいって言って」

「美味しい」

「な、なんか今日はちょっとだけ素直だね。いつも素直なら良いのに」

「いつも素直なんだけど」

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