変身と殲滅
ホワイトが門についたとき、門の外で業火が光った。
静まり返り、全員が動きを止めた中、ホワイトは人が通るように門に付けられた扉を開ける。
ゴブリンとコボルドの軍勢は出てきた少女に注意を取られた。
戦場に出るには余りにもか弱く見えるソイツからは大した魔力も感じず、目の前に広がる軍勢にまるで気がついていないかのように進む。
少し不快だった。
ゴブリンキングが玉座の横に備えておいた投石を投げかける。
と同時にコボルメトロンが炎属性低級単体攻撃魔法のクイックフレアをうつ。
空中で合わさったそれらは燃える投石となり、少女に到達した。
死んだ。
誰もが思った。
しかし、ペシン、と気の抜けたような音とともに伸びたリボンがそれを払い除けた。
地面に落ちた石は半径15センチ程を陥没させ、20センチほど埋まった。
「リボン、変身するよ。」
「もちろん。」
幼い声は戦場に響いた。
リボンがその姿を覆い尽くす。
黒い繭のようになったそれはしばらく蠢くとリボンの隙間から光を放つ。
パッとリボンが弾けるように広がると出てきたのは全裸の幼女だった。
5歳ほどだろうか?幼女の体に弾けたリボンが這っていき、ハイレグの上にネグリジェを着たような姿に変わる。
閉じられていた瞳が開き、赤い目が煌めいたと思うとそれがすぐさまジト目に変わる。
「予定外だ。君の力が強すぎて私の魔力が足りずに完全に変身できなかった。パワー的には十分だろうから今回はこのままやってくれ。」
「…ファ…了、解…」
眠そうにあくびをした幼女は、左手人差し指を右手で包み込むように持つ。
グッとそれを引っ張ると漆黒のナニカが手の間に伸びる。
ソレは糸剣だった。
黒い柄には長い髪を揺蕩らせ、宙に浮いている幼女の前で跪く天使とも悪魔ともつかない翼をはやした存在が掘られている。
変身したホワイトを見た二匹の王は自分の持つ最大の攻撃を加えようと動いた。
ゴブリンキングは玉座に刺してあった大剣を玉座を壊しながら抜き、決死の覚悟と表情でホワイトに振り下ろす。
コボルメトロンは早口で詠唱を完了し、漆黒の炎を放った。
しかし、黒い線が戦場をはしる方が早かった。
大剣は中空で切られ、黒い炎はより黒い漆黒に飲まれた。
ホワイトが剣を振るった軌跡を境に全てが消え去ったかのように別れる。
あまりにも一方的な殲滅はその一瞬で終わった。
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