第21話 ゴールデンウィーク前の大スキャンダル
「おい見ろ、あいつだろ?」
「本当にあいつか?写真ではメガネかけてるし別人だと思う」
「いや、あいつだろ。つかよくすました顔で学校に来たな」
月曜の朝、登校するには一番憂鬱な日……なのに、校内に入ってからなぜか周りから視線を浴びた。うん、胃が痛くなるわ。こいう視線は
で、今回の原因はなんだろうと考えながら俺は頑張って視線を気にせず自分のクラスに向かうのだが、クラスに入ったらやっぱ視線がまだこっちに飛んでくる。それから俺は自分の席に向かって、鞄を置いてから丁度いつも3人セット揃えてる
「なぁ、誰か説明してくれ。マジでどうしてこんなに注目されたか分からん」
「……どうしてだろうね」
「おい、このやりとり前もやってなかった?」
「デジャヴ……」
「そうか?あ、確かにやってた気がする……じゃなくて、俺この状況の説明が欲しい。今回はなぜこんなに注目されたんだ?俺何かしちゃったのか?」
「しちゃったというか、まぁー」
『えー…2年B組、
「…………え?」
校内放送で呼び出されて、俺は流石に数秒間でフリーズしてしまった。高校生になってから本当に初めてあれで呼び出されたわ。しかも校長室だぞ!?
注目されている今、俺はなぜか
あ、ちなみに知り合ってから結構経つから、俺とほかの3人の四天王グループメンバーが流石に呼び方を変えた。
「まぁ、校長室行ったら理由なんてすぐわかると思うぞ」
「そうだな。頑張れ、
「ますます何があったか分からんが、ちょっと行ってくる」
いくつかの質問を思い浮かべようとしながら俺はクラスを出て1階の校長室に向かってくる。今回の件は何回記憶を漁っても全然心当たりなかった。でも、今回はヤバい状況になってるのは確かだと俺はそう気がする。
そして校長室のドアをノックして、「入れ」と声が聞こえて中に入ったら、そこには俺の担任、
「よく来てくれたな、春川君。取り合えず肩の力を抜いて、こっちに来て欲しい」
「は、はい。失礼します」
「…………」
肩の力抜いてと言われて頷いたけど、俺が入ってから既に視線を下ろしている相羽先生を見ると抜きたくても抜けない。そして相羽先生の隣に立って、彼女の様子を窺ったら落ち込んでる彼女の表情が俺の目に映る。一体なぜ彼女がそのような表情をしてるんだと思いながら、俺はその答えをたぶんこれから理解するのだろう。
「さて、役者が揃えたから、そろそろ始めようか……尋問を」
「え、役者?そして尋問とは……」
この段階でも俺は全然ピンと来ない。校長先生は一体何のことを示してるのか全然分からん。そしたら彼は自分の高級そうなスマホの画面を俺たちに見せたその瞬間、俺はとんでもなく驚いた。その理由はほかでもないそのスマホに写っている悪いタイミングと良い角度で盗撮された昨日の俺と相羽先生の画像。
俺が相羽先生の口周りからクリームを拭き取った時が悪いタイミングで、二人の顔がはっきりと見えてるのは本当に良い角度から撮られたせいだ。角度を見ると盗撮者は間違いなく俺たちの隣にいたんだろう。学校からあのショッピングモールの距離が結構遠いから、あそこに同じ学校の生徒がいたとは思わなかった。完全に油断したな。
「この写真に写っている者なんだが……間違いなく君たちだね?」
「は、はい……」
そう返事した相羽先生が本当に何かに怯えるかのように全身を震わせている。絶対校長先生の圧に襲われているのだろう。ほかは罪悪感か、それとも教師としての責任を果たせなかったから彼女をそうさせた。
これじゃ相羽先生が責められてしまうから、俺が事実を語らなければ。
「はい、そちらの写真に写っているのは確かに俺たちなんです。否定はしません。ですが、そこに写っている行動は自分が許可なしで一方的にやったことなんです。なので、どうか責めたいなら俺だけにして、相羽先生のことは責めないでください。お願いします」
「春川くん……」
深くお辞儀して、俺は校長先生にそうお願いを申し上げた。俺が言ってたことは事実だ。そんな行動を起こしたのは一方的に俺がやったことで、先生が責められる必要はない。ここで相羽先生が責められたら間違いなく彼女の教師としての印象や評価が下がって、最悪この学校にいられなくなってしまう。
幸い説明している時俺は動揺を一つも見せず、ちゃんとスムーズにやってた。これより大きいプレッシャーを抱えた経験が豊富だからな。まぁ、ここで校長先生が納得できたらいいけど。
「ふむ……君が言いたいことちゃんと理解しているつもりだが、俺が聞きたいのはこの画像に写っている行動じゃなかったから、どう答えたほうがいいか俺も困ってるな正直……いや、それも関係あるけど」
「え?」
じゃ、一体メインは何のことですかと聞きたいところで、校長先生が「そうだね……」と付け足した。
「実はこの写真、今朝から学校中に既に広まってて、職員や生徒の間では大変噂になっているんだろう。それで確認したいことがあったから正直に答えて欲しい。君たちが恋人関係をしているのは本当かい?」
「え?そっち、ですか?……まぁ、その写真を見たら確かに信じがたいと思われますが、俺たちはそいう間柄じゃないです。断じて。そうですよね、相羽先生?」
「はい、私たちは全然そういう関係じゃありません、校長先生」
「そうは言っても、休日に男女二人で外出ということは大体そういう間柄じゃないとできないものだと思うけどね」
「あ、いいえ、二人だけじゃなかったんですよ。妹と相羽先生のご友人と4人で一緒にあの場にいました。そもそも会うのも本当に偶然でした。あの写真が撮られた時妹と相羽先生のご友人が丁度お手洗いに行っていましたので、俺と相羽先生がしばらく二人きりになっていました。疑うならこの学校の1年生である自分の妹をここに呼び出せますが……」
「……そうか。君の言葉を信じてみようと思うから呼ばなくていい。この件についての尋問はこれで終了だ」
え、それでいいんですか?と聞きたいところだったが、長引いてしまうから余計なことは言わないほうが良さそうだろう。まぁ、俺が話したことは全て事実で噓偽りなんてなかったけどな。
「しかし、君たちの噂は既に学校中に広まっている。この後俺は噂を抑えるつもりだけど、それで噂が一気に消える保証は絶対ないから、完全に抑えるまで我慢してください」
「は、はい、校長先生。この度は大変ご迷惑をおかけいたしました。こちらの件のご対応していただき、誠にありがとうございました」
「固いなぁ君は。君の生徒のほうが落ち着いたんだね。でもまぁ、次はこんな事がないようにしてください。人はよく写真ひとつで好き勝手言う時代になったから、そこも注意してほしい。いいか、二人共?」
「はい、分かりました。ですが少々訊きたいことがありますが、いいですか?」
「許す。何を訊きたいかい、春川君?」
「ありがとうございます。校長先生はこの写真を撮った本人知っていますか?」
「知ったらどうする?」
「その人に挨拶してみようかなと思います。盗撮した挙句、笑えない噂まで流しているなんて、是非その人に会ってみたいです」
「おいおい、暴力はダメだぞ」
「いいえ、俺が暴力を振るうなんて絶対にないんですよ」
「まぁ、取り合えず信じておこう……でも残念ながら俺も知らない。この写真は他の教師から送られたものだからね」
「そうなんですか。残念です」
会って挨拶したいというのは本当だ。いや、挨拶より尋問と呼べばいいかな。うーん…ニュアンスを柔らかくすれば質問、か。なにはともあれ、盗撮者を見つけて意図は何だときちんと吐いてもらおう。
あんな行動を起こしたのは俺だったし、すごく反省してる。でも盗撮して好き勝手嘘の噂を流すとか、俺はともかく相羽先生の教師としての印象が悪くなってしまうのだろう。まぁ、あとで自力で手がかりを探してみるか。
「それじゃ、ここで解散だ。二人は直ちに教室に戻りなさい」
「は、はい、分かりました。それでは失礼いたします」
「失礼いたします」
一礼してから俺と相羽先生は校長室を出てすぐクラスに向かうのだが、俺と肩を並べて歩いてる相羽先生の顔はさっきから変わらなかった。
なら、ここはひとつ……
「あの、相羽先生」
「…………」
まさかのスルー!……いや、無理もないか。盗撮されたとはいえ、もし俺があの場であんな行動を起こさなかったら相羽先生は今でも平然に教師やってるんだろ……
でもやっぱりここは謝らないと!
「あの、相羽先生!」
「は、はい!あ……ごめんなさいぼっとしちゃって。どうしたの、春川くん?」
驚かせた結果になったけど、やっとこっちに気づいた先生に、俺は深くお辞儀し始めた。
「今回の件について本当に申し訳ありませんでした。自分の好き勝手な行動でこんな大事になってしまってすごく反省しましたので、こんなことが起こらないようにこれから先生とは―」
「ま、待って!取り合えず顔上げて、春川くん!確かにあなたがやってしまったことだけど、それは別にあなたのせいじゃないと思うからね?そもそも校長先生による問題点は私たちがあの場に二人きりで写真に写っているからで、あなたの行動じゃなかったわよ」
「いや、まぁ、校長先生はそこに注目してましたけど、この噂を知っている学校中の生徒や教師たちは別のことを思ってるんでしょう」
「あ……ど、どうしよう……今から教室に向かうけど、生徒たちにどんな顔をすればいいか分からなくなるわね……」
あれ、今気づいた?とツッコみたかったけど、やめておこう。この人動揺しすぎて考えが麻痺してるのか?まぁ、無理もないか。教師になってから一か月も経たない挙句、こんな悪い噂をされたら流石にプレッシャーが大きい。とりあえず混乱してる相羽先生を落ち着かせよう。
「落ち着いて、先生。ここで混乱したら何も解決できないと思うよ。クラスの皆はきっと説明を求めるから、それは俺に任せてください。お詫びにはならないと思うけど、ここだけは俺にやらせて欲しい」
「春川くん……」
「だから先生は普段通りにやり過ごしていてください……って確かに難しいとは思うけど、俺は先生を楽にしたいからそう願う」
そんな言葉をかけて、先生が「ふふっ」と小さな笑い声をもらした。うーん、結構恥ずかしいこと言ったな俺は……
「分かったわ、春川くん……はぁ、あなたは本当に落ち着いてて緊張感を抱かなかったのね。普通の高2の生徒はそこまで校長先生と向き合えないと思うよ?」
「いやいや、俺結構緊張してたよ?」
「そーう?そうは見えないけどね……あ、もしかして中身は大人の男性で、今は男子高校生として二度目の人生を過ごしているとかだったりするのかな…なんてね」
「そんな最近よく出てたラノベの設定なんで知っているんだと聞きたいところだったが、やめとく。まぁ、いろいろあったからなんかこういうの結構慣れてるかな?知らないけど」
「いろいろか……今は時間が制限されているから、今度暇な時に先生に聞かせてね?もちろん二人で」
「いや、今噂されている中でよくそんな提案をしているんだな」
「いいんじゃない?担任教師は自分の生徒たちについてもっと知りたいのは当たり前なことでしょう?現在何人かの生徒からの話も伺い済みだったしね」
いやぁ、言い分は分かっているつもりだけど、この人って本当に怖いもの知らずなのか?別の生徒ならいいとして、こんな噂されたばかりの時期にそんなことしたら噂がどんどんコントロールしにくくなるだろう。でも、
「わ、分かりしました。先生がそう言うなら拒否する選択なんてあるはずがない」
彼女の好奇心に溢れる眼差しが、見事に俺を負かした。
「よかったー。じゃ、いつするかと決まったら連絡するね」
「うん、分かった。って立ち話している場合じゃなかった。急いで教室に行こう、先生!」
「あ、そうだったね」
俺が一方踏み出したところで相羽先生が急に「春川くん」と呼び止めた。そう呼び止められた俺はもちろんすぐ後ろに振り向いて、そしたら相羽先生が、
「大変だとは思うけど、この後皆にこの噂を説明するのをあなたに任せるから、頑張ってくださいね。本当にいろいろありがとう」
今日良い笑顔を作れるようになった相羽先生にそんな言葉をかけられて、俺は苦笑いしながら「おう、任せて」と返事をした。実際、感謝されるようなことはしてないし、そもそも俺がやったことで先生に迷惑をかけた。
そして、俺たちは肩を並べて、緊張感を抱きながら教室に向かった。
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