第11話 動き始めた者
時は遡って、政也たちが生徒会室にいる間、サッカー部の部活説明会が終わってグラウンドに向かってる
玲央は高一から才華高等学校のサッカー部のエースとして大活躍している男子生徒で、容姿も優れている彼は学校では女子生徒の間での人気が高いとは言える。そんな玲央は文香が他の男子と楽しそうに話しているところを見て不愉快と思ってる理由は当然文香に好意を抱いたから。
文香も実は容姿端麗で学年一位を取るくらいの成績優秀な生徒だから、同じ学年の生徒の間では知名度が本当に高い。そんな彼女の一面が知らない者は政也ぐらいだろうから、彼は遠慮がちの男子生徒たちと違って普通に文香と接することができた。
そのせいで、高一の時から文香に片思いをしている同じクラスの男子生徒の一人である玲央は驚きや苛立ちを隠せなかった。他の男子生徒たちが何度も文香に告白をしたという噂がよく玲央の耳に届いたが、一年間観察していた限りでは彼女の周りには男の気配が確かになかった、のはずなのに、高二に上がって早々文香と親しい男子生徒の姿が現れた。
「つーかあいつ誰だよ……」
「ん?どうしたん玲央?」
「さっきから機嫌が悪いに見えるぞお前は」
「オレもそう思う。一体何があったんだ?」
玲央の調子を伺った三人、彼と同じ2年B組で同じサッカー部のメンバーの坊主頭で高身長の男子は
「……お前らクラスで窓際の一番後ろの席に座ってるヤツ誰なのか知っているか?」
「んん、誰だっけ?オレあまり見てないから知らね」
「俺もだ」
「あぁ、春川か?一年の時からクラスが同じだけど。それがどうしたんだ、玲央?」
この4人の中で、政也のことを知っている者は一人だけ、一年の時から政也と同じクラスの和泉だ。それを聞いた玲央は足を止めて後ろ振り向けてから和泉に近づいている。
「春川?」
「あぁ、確か下の名前は政也かな。一年から同じクラスとはいえ、俺も正直あまりあいつを知らないけどね。目立たないやつだし近づきがたい感じもした。ていうか、昨日クラスでの自己紹介は聞かなかったのかお前たち」
「いやわざわざ聞くもんじゃないだろ。女子の自己紹介時なら耳を立てたけど」
「キモイけど、朔らしいね」
「なんだと」
「で、どうして春川のことを聞くんだ、玲央?」
無視すんなって朔が和泉にツッコんだけど、和泉は朔を無視して玲央の方に見ていた。数秒後、玲央は口を開いてこう言った。
「和泉、お前はアイツが女子と一緒にいたところ見たことあるか?」
「えっと……ないな。あいつは確か昼休みの時すぐどっかに行っちゃったし、午後の授業が終わってからもすぐいなくなったし。それがどうした?……あ、そいえばさっき昼休み朝倉さんと一緒にいたな春川は。もしかしてそれと関係あるのか、玲央?」
「あぁ、そうだ」
「そいえば昼休みが終わる前にクラスの奴らがざわついてた原因はあれだったか?」
「そうだ、健斗。あの時廊下の方に目を向けたら朝倉が男子生徒と二人きりで楽しそうに喋ってたところ見てたぞ」
「俺はあれを見て少し驚いたよ正直。そんな人気が高い朝倉さんが嬉しそうに男子と喋ってるとか前からは噂ですら聞いたことないのに。しかもその男子は一年の時俺と同じクラスの目立たない男子だった」
主人公でもやってるのかあいつと茶化すような声色で和泉が付け足した。
一年の時文香はよくいろんな男子生徒に告られたが、それを全部断って彼女の周りには女同士の友達だけだから、彼女を一人の男子と嬉しそうに喋ってるところ目撃したら周りでは流石に噂になるだろう。
「そんなことを気にしてるお前はやっぱ今でも朝倉さんを狙ってるのか?」
「あぁ、悪いか」
「いんや全然。でもね、いつまでも彼女を近づけないお前を見たらなんとなく諦めさせたいよ俺は」
「本当な。女子人気高いのに、なんでそんなヘタレなんだ」
「もう喋れないように口を一発殴っていい?」
「ほらそこもだ。暴力で解決するという考え方もやめろ」
「チっ、分かってんだよ。流石に冗談だ」
「冗談なら舌打ちすんなよ」
「それで、お前はどうするつもりだ、玲央?どんな接点か分からないが、さっきの朝倉さんを見ただけで俺は確信した。彼女は春川と本当に親しいってことを」
「あぁ、んなこと分かってんだよ。まぁ、久々にアレをしようかな」
「おい玲央、お前まさか……」
歯を見せて笑っている玲央は三人を見渡してから「あぁ、そうだ」と言った。そしてそう見られた三人は何か嫌な予感がしていた。
「朝倉との関係を直接あいつに聞いた方が効率がいいと思ってな。朝倉がいない時にやるつもりだからお前らも付き合えよ」
「えっと、暴力とかじゃないよね、玲央……」
「いや何馬鹿なことを言っているんだ、健斗。そんなことはもうしないさ」
「お前がアレアレって言ったから少しヒヤヒヤしたわ。結局あれは何のことだよ」
「はは、言ってみただけだ。気にすんな」
そんな玲央の冗談を聞いた三人は吐息を吐き出してどこか安堵して、和泉はそれならよかったと付け足した。
「まぁ、俺は見守り役としてついていくよ」
「オレと健斗もだ」
「ん、サンキュ」
「んじゃあ、さっさとグラウンドに行って今年の新入生の実力を試していこう。さっきから足が止まってるからな俺たち」
いい気分になった彼らは四人揃って早くサッカーをやりたいから早足で夕焼けに染まり始めたグラウンドに向かった。
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