第4話 兄離れできない妹
「はぁ、ただいまぁ……」
息を切らしながら俺は返事のない挨拶をして家に足を踏み込んだ。それから真っすぐ二階にある自分の部屋を目指して、鞄やスマホなどを置いてから脱衣所に向かった。服を脱いでタオルを下半身に巻いて脱衣所にある鏡の前で立ち止まってから、俺は自分の顎をそっとなでる。うむ、一目ではすぐ見えないけど、薄く生えた髭の感触が確かにあったな。剃るのめんどくせぇ。早くも三日間で生えたから、これって父さんからの遺伝かもしれん。父さんの髭濃かったからな。まぁ、それを置いといて、早速カミソリで髭をそるでもするか。親戚の子に会う時におじさん呼ばわりされたら流石にショックだからな。
カミソリを手に取ってから俺はゆっくりと髭を剃り始めた。髭を剃るといえば、『ひげひろ』という最近人気上昇のラノベ作品だな。あれを読んでめっち感動したわー。そいえばもし俺が高校卒業して進学を選んだら、通ってる大学の近くのアパートで一人暮らしをしようかなぁ。そして髭を剃ったら家出JKを拾う……いや待って何最低なこと考えてんだ。んなことしたら捕まえる未来しか見えんだろが。あ、ちなみに俺ひげひろでは
髭剃りを終えて一度自分の顎をなでてから、俺はすぐシャワーを浴びに行く。正直湯舟に浸かりたい気分だけど、湯を沸かすのもう面倒だからシャワーを浴びることだけにした。そしてシャワー浴びて10分経過し、俺は一度台所へ水で喉を慣らしてから、冷蔵庫の中にあるドーナツを三つ取って小皿に置いた。
「疲れた時は甘いものを食うのが一番だもんな……」
そう呟いてから俺はゆっくりとドーナツを口に運んだ。ん、丁度いい甘さで美味い。高いやつじゃないかこれ?知らんけど。しばらく完食してから、シンクで小皿とプラスチックカップを洗い流して、俺は台所を後にし自分の部屋に向かった。
部屋に入った途端、俺は一つのことに気づいた。鞄やスマホを置いた時何故かベッドの上にある俺の毛布が大きく膨らんでいる。さっきは疲れでスルーしたけど、今はベッドにダイヴしたい気分だから流石にスルー出来ない。なぜなら毛布の下の方から二本の綺麗な足が覗いた。まぁ、誰の足なのか知ってるけどな。これはよく俺のベッドに潜り込む実の妹、
「またかぁ。もう高校生になったから、そろそろ兄のベッドに潜り込むから卒業しろ、我が妹よ。はぁぁ」と妹の行動に呆れすぎて大きく溜め息を吐いた。
そう、こいつは一つ年下実妹で俺が通ってる
「おい起き――」と奈々子の体を包んだ毛布を引っ張ったら、目の前にいた妹の姿に呆れすぎて言葉をなくした。だってこいつが今、パジャマの上だけ着て下は下着-枚だけ。てか俺から反対横向きに寝てるからお尻が丸出しだが?てか尻でっけぇなこいつ。まぁ、こいつの肩を揺らして起こすか。
「おーい、おーきろー」
「……んん、むにゃぁ……」
「むにゃ言っている場合か?起きろよこのー」
「あっ、ダメ、兄ちゃん、そこは…エロい服…着てる魔王の、部屋……むにゃ……」
「異世界で魔王討伐してる夢でも見てるのかお前は?めっちゃ参加したいけど、ベッドがお前に独占されちゃ参加できねよ。ってエロい服着てる魔王て何?めっちゃ見たいんだが」
「ん――このパフェ、おいしい……むにゃむにゃ」
「おい魔王討伐はどうした?てかさっきからむにゃむにゃ喧しいな。ほらささっと起きろ!」
「んん―――うるさい……」
そう唸り声漏らしてから奈々子はまた反対方向に向いた。当然ながらも丸出し尻がまた目に入った。
そいえばさっきからのむにゃむにゃがわざとっぽかったけど、もしかして寝たふりでもしてるのか?そう考えてから、俺は一つ最低なことを思いついた。それは……
「ほーい、奈々子起きろー…起きないとお前の尻を叩くぞー?」
奈々子の耳元の近くまでそう小さく囁いたら、奈々子がピクット露骨に身体を少し動かした。寝たふり確定だな。
「まだ起きないか。よし、本当に叩くぞ。さーん…にーい……いち!」
パンっと力加減で妹の尻を叩いてから予想通り返ってくるのが「いっっったぁぁい!」と大きな声を発した奈々子。そして奈々子は自分の尻をさすりながら俺を睨んでいる。いや、そんな強く叩いたのか俺?まぁ、とりあえず、ざまー。
そして奈々子はベッドから身体を起して、俺の方に真っ赤な顔で睨みながらこう言った。
「もおう!兄ちゃん!妹のお尻叩きすぎ!!」
「いやこれが初めてお前の尻を叩くんだろ。何が叩きすぎんだ何が?」
「そうじゃなくて…あぁ、もういいや。でも本当にいたかったよ。兄ちゃんお尻さすって?」とまだ自分の尻をさすりながら、奈々子がとんでもない発言をした。
「すまん、力加減で叩くつもりだったんだ。でも兄ちゃんは最愛妹のお尻をさするとかはしたくないよ?」
「あたしの尻を強く叩いたのに?」
「叩くとさするのは別だろ?」
「結局はお尻を触ったんじゃん。別にいいけどね。兄ちゃんが妹の尻に欲情したことを知っただけで十分だし」
「実の妹に欲情してたまるか!」
「義理の妹になら欲情する、と」
「そうじゃない。いや、この話はここでおしまいな?俺が悪かったけど、俺のベッドに潜り込んだ挙句寝たふりをしてたお前にも悪いぞ。ほら、自分の部屋に戻れ。俺もうそろそろ眠たいんだ」
「え――やだだるい」とだろそうな声で言った奈々子がまたベッドに身を沈める。
はぁぁと俺が大きな溜め息を吐いてから、奈々子が「こうなったら一緒に寝てた方がよくない?」と俺の方に言った。
「はぁ、お前はもうJKだから、そろそろ兄離れしろよ」
「JKって……なんか響きがエロくない?でもやだ、兄離れなんて無理」
奈々子が左頬をプクット膨らんでる。そんな妹の可愛い仕草を見てなんか許す気になったなぁ。
「……仕方ない、一緒に寝るか。今後こういうのは程々しような?」
そう言って、俺は早速ベッドで横になる。それから「はーい」と俺の注意を無視するかのような嬉しい声色で返事した奈々子。まぁ、結局妹を昔から溺愛してる俺にも悪いかな……
それから、俺はスマホを手に取って漫画アプリを起動した。最近読んでる漫画は異世界ファンタジーのパーティー追放系だ。最近そういうテーマが多いしな。トップになったパーティーがそのパーティーのクソリーダーに理不尽に追放された主人公、その直後あるきっかけで強くなって、自分のパーティーを作る。パーティーメンバーが女子ばかりのハーレム無双系。そして主人公の元いたパーティーが主人公の追放以来全然うまく戦えなくなってボロパーティーになった。一方、主人公が新しいパーティー仲間と充実して冒険をした。そういうテンプレだけど、何故か飽きることができない。あ、今日最新話が更新されたか、と早速漫画を読み始めた。
「寝るんじゃなかったの?」後ろからいきなり奈々子が俺に話かけた。
「あぁ、好きな漫画の最新話が更新されたからもうちょい。てかお前も寝ろ。あ」
漫画読みに集中してるところで、いきなり画面が変わったからつい間抜けな声を漏らした。
「ん?どうしたの?」
「いやぁ……」
俺はしっかりとスマホの画面に目をやる。画面にはカメラアプリ付きの通話がかかった。それに、朝倉文香という名前が示されている。え、文香からのビデオ通話?こんな時間にいきなり?てか……
「……これ、出ればいいのか?」
少し混乱してる俺はそう自分に訊いた。
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