第2話 再会の喜び
下校してバイト先に向かった
その理由は勿論、久々に政也くんと喋ってたから。そして彼のLINEIDをもらって、一緒に下校する約束までされてた。どう頬の緩みを抑えても抑えきれないんだ。
でも本当に驚いた。だって……
「政也くん本当に変わらないなぁ……」
そう、彼は本当に変わらなかったと私は思う。私たちはほぼ一年間あのように面と向かって会話をしてなかった疎遠関係だ。それなのに、彼は中学の時みたいに私に普通に接していた。
普通なかなかできないことだと思う。久々に自分がよく知ってる人と接していなかったら、誰でもさっきみたいにスムーズな会話が成立できなかったと思う。それにしても……
「苗字で呼ばれた覚悟はしてたけど、まさかまた『
こんな些細なことで喜んでる私って、どれだけ政也くんのことが好きなんだろう、もう……
「でも、なんで……」
なんで政也くんがここ一年間私と会わなかったんだろう。いや、正確は避けられてたかな。あれは確か高校生になったばっかりの時、廊下で彼を見かけて声をかけようとしたけど、なんか早足で逃げられたし。本当に避けられたかそれとも何か急ぎ用事があったかは結局知らないままだけど、あの一件からほとんど彼の姿を見れなくなった……
クラスが別だから、政也くんのクラスに遊びに行こうかなと最初は思ってたけど、なんか行きづらくなった。もし避けられたら、きっと迷惑だと思われてるとあの時は思った。そしてそのまま疎遠になって、彼と全く接していなくて、まるで彼のいない学校の生活を一年間過ごしていた。
そして高校2年生としての学校生活が始まる初日、『政也くんと同じクラスになりますように』と震える手を合わせながら内心で祈った私は、玄関の近くで黒板に貼ってあったクラスと姓名が書かれた白紙に真剣に見ていた。2年B組のリストまでようやく自分の名前を見つけた私は、またその白紙の方に見て、数秒である一名に注目した。そこで書かれた名前は『
まあ、結果は今政也くんと喋れるし、LINEIDまでもらった。きっと前みたいに仲良くできて、あわよくば彼に近づいて友達以上の関係になりたい……
なんてそんな都合よく進められるわけないかぁ。あはは。笑ってるどころじゃないけどね。
「それは置いといて、そろそろ帰ろうっか。今夜政也くんとたくさんチャットしようかな~」と言いつつ私はクラスを後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
学校から駅まで歩いて約10分、電車に揺られて約15分、駅から約10分かけてやっと家に辿り着いて、中に入った。
「ただいまー!」
「「おかえりー」」
いつもより元気なただいま挨拶をしてから、居間で昼ドラを観ながら私の母、
「ん?なんか今日はいつもより元気ね。何かあった?」
「っ!?」
え?そう見えるの?ん、まあ確かにさっきのただいま挨拶は失敗したなぁ。でもどうしよう。本当のこと言ったらからかわれる未来しか見えない。特にお母さんに。
でも誤魔化すとかえって面倒くさいし、本当のこと言うしかないか。もじもじしながら、私はこう言った、
「んっとね、また政也くんと同じクラスになった」
「わああ、本当?よかったね文香ちゃん!!」
私がそう言って、お母さんが何故か嬉しそうに見えるけど。何故に?
そしてダダダッと文乃の足音が私のところまでやってきてこう聞いた、
「
「いやあなたも『
「だって政兄さんと久しぶりに話しがしたいですもん」
「
「無理です」
「即答ですね」
とふざけるの欠片もない姉妹コントの幕が閉じた。
「まぁまぁ、二人共そこまでにしなさいね〜。それで、政也くんは今どうだった?いいおと――」
「おいこらシングルマザー」
「あらあら、何か言った?」
「いえ、続けて続けて」
「そう?で、今政也くんはどうだった?元気にしていた?」
「なんかさっき言いかけたことと全然違うんだけど。うん、政也くん元気だよ。中学の時のアクティブな子と違って大人しく見えたけど、私と喋った時は全然変わらなかったよ。あと身長も結構伸びたし、もっとか、格好良くなったし……」
「あら〜、顔真っ赤にして可愛いな文香ちゃん」
「もう、からかわないで!」
と
「で、いつ政也くんをうちに連れてくるの?」
「いやお母さんといい文乃といいなんでそんなに会いたがるなの?……」
「どんな立派な男に育ったか見てみたいから?」
「冗談で言ってる?」
「割と冗談抜きわよ~」
「じゃ連れてやんないから」
「そんなぁ。連れてってよお姉ちゃん」
「そうだそうだ!」
「お母さんもうアラフォーだよ?」
「今度は冗談わよ~」
「ねえ、姉さん、政兄さんを――」
「ああもう分かった分かった。気が向いたら誘ってみるわよ」
はぁっと大きなため息を吐いた。妹がそうしつこくねだるから、諦めて政也くんを誘ってみようと決意した。無口で恥ずかしがり屋の文乃がそこまでしつこく会いたがるなんて、どれだけ政也くんのことが好きなんだか。まあ、私も人のこと言えないかな。
「じゃあ、私疲れたから眠りたいけど、夕飯前に起こしてくれると助かる。じゃあ」
「はぁい」
そう言ってから私は二階にある自分の寝室に向かった。寝室のドアを開けた後、私は冷房を付けて、一度部屋着に着替えてからベッドにダイヴした。あまり色々なことで疲れたと冷房つけた部屋の涼しさに、ベッドでゴロゴロしてから数分後、私は深く眠りについた。
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