親友の元カノに好かれるのは嫌ですか?
黒沢マサ
第1話 一年ぶりの再会(かな?)
「お疲れ様、
「いえ、これくらいは大丈夫です…」
新学年初日は授業が行われず、だいたい新しいクラスメイトと担任の先生の自己紹介やクラス委員を決めた日だから、午後の1時には帰れる。
クラスを出たところで、俺こと
いや、クラスに入った時は全然気づかなかったけど、なんでそんな大量の資料を持っていくんだ。新学年初日だよね今日は?
そう思ったけど、相羽先生は俺が高1の時まだこの
居た堪れなくなった俺は相羽先生を助けようと決めて、そして現在職員室に無事に大量の資料を相羽先生のデスクまで運んだ。
「よいしょっと……」と口にしながら相羽先生が自分の椅子に腰を下ろした。
こうして見ると、相羽先生の容姿は本当に半端ねえな。ストレートロングの触りたくなるサラサラな黒髪、その整った顔立ちで大人のお姉さんの雰囲気を醸し出している。そしてブレザーで隠れてるけど、スタイル抜群てこと俺には分かる。初日から人気になったことも頷けるわ。なんかこの人が担任の先生でラッキー!って俺も思ってる。
「ん?どうしたの?」
「……」
俺の熱い視線に気づいたからか相羽先生は首を傾げながらそう聞いた。その仕草、本当に可愛く見えるけど……
俺ってもしかして女教師好きかもしれん。ちょっと口説こうかな……
「あ、いや、相羽先生に少し見惚れちゃっただけです」
「そおう?」
俺の口説きに先生は首を傾げながら不思議そうに俺を見ている……って口説きセリフを首傾げながら流すんかい!
「でも本当にありがとうね手伝ってくれて。さっきは正直大変だったよ」と相羽先生が続く。
「ていうか先生はなんでそんな大量の資料を持っていったんですか」
「あぁ、なんか仕事の初日だから緊張しすぎてついそんなのを持っていっちゃったね。クラスにいた生徒に半分運んでほしかったけど、なんかまだ遠慮するから一人で運ぶのを決めたよ」
「ああ、そうだと思ってましたよ。まぁ、次は誰かに頼ってくださいね。もし頼れる人がいなかったら、俺を頼ってもいいですよ」
「ふふっ、ありがとう。そういう気遣いできる人が先生は好きだよ」
「っ!……」
あまりに突然で全く予想していなかった先生の発言にビクッと肩を震わせる。ふぅ、美人女教師(好きな属性になる予定)に好きだと言われたらそうなるに決まってるんだろうが。はあん?文句あんの?
「ん?どうして顔真っ赤になったの?」と先生は首を傾げながら俺を見上げた。
ん、その仕草はやめてマジで。てか俺今顔真っ赤?なんか負けた気分だけど、反撃するしかないな。先生にこういうことするのはどうかと思うが、今俺が感じたことを分からせてやりたい。
「いえ、大丈夫です。凄く綺麗な先生に好きだと言われましたから、ビックリしただけです。実を言うとあれが人生で初めて女子に好きだと言われましたよ。でもどうしようかな。俺も好きですって言いたいけど、教師と生徒はともかく俺たち今日が初対面ですよ?」
「え?」
俺がそう爆弾発言を落としたら、相羽先生は首を傾げながら間抜けな声を漏らした。てかまた首を傾げるし。やめろって内心で言ったろ!
あ、なんかこの先生人差指を唇に当て、考えるポーズをしている。勢いで言ったから、たぶん考える時間が必要なのようだ。
「……っ!」
はい、赤面ご馳走さまでした。なんか初々しいな。なんだこの大人の人のギャップ?もしかして俺ギャップ萌えにも弱いか?
「ち、違う!そういうつもりで言ったんじゃない!」
「へぇ、じゃあどういうつもりですか~」
「も、もう!先生をからかわないで!ほらさっさと帰ってこのおバカ!」
「あははっ。はーい……じゃあ俺はこれで失礼します」
流石に職員室で騒ぐと他の先生に叱られるかもしれないから、そろそろ帰ろう。
そして相羽先生にお辞儀して、俺はすぐ職員室の出口に向かった。だが、ドアの近くまで行った俺は、また相羽先生の方に振り向いてこう言った。
「改めて、今後ともよろしくお願いします、相羽先生」
そんな俺の発言に驚いたからか相羽先生は目を見開いて、そして、
「こちらこそよろしくね!」
眩しく、美しいその笑顔を見れた俺は、今日のバイトで倍以上頑張れそうだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「え?」
スマホ専用のズボンの左ポケットを漁ると、何もなかった。
え?まさか落ちたのか?いつどこで?そう混乱している俺でござる。
今鏡があったらそこで俺の真っ青な顔がきっと映ってるよな。あれ、バイト代で買った高額な最新型スマホだから…
えっと、落ち着け。最後どこでスマホをいじったのか思い出せえ!
「…………あっ!」
机の中!と思い出した俺は早足で校舎の二階にある自分の教室に向かった。その時。
ガラ―っと勢いで教室の引き戸を開けた俺は、丁度引き戸を開けようとした女子生徒が目に入った。驚いたのか彼女は目の前にあった俺の姿を見て大きく目を見開いた。
俺も当然彼女のような目を見開いた。何故なら俺と彼女、
そんな彼女とは高一の時クラスが別々で疎遠になったが、現在2年B組でまた同じクラスになった。同じクラスになっているけど、今回は中学の時みたいに席が隣ではなかった。
こうして会うのは本当に久しぶりだ。1年ぶりかな?まあそれはさておき、こうして彼女と見つめ合ったままのが本当に居た堪れないから、俺は口を開いてこう言った。
「ああ、えっと、すまん文香驚かせてしまって。スマホを忘れて慌てるから勢いで引き戸を滑らせた。人がもういないと思ってな」
「えっ?ああ大丈夫だよ謝らなくても。慌てるから当然のことだと思うよ。ちなみに、ま、政也くんの携帯はこれかな?」
一瞬驚くような顔をしている文香だけど、そのスマホを俺の前に見せてそう尋ねた。
「おー、確かに俺のだ。でもどうして文香が持ってるんだ?」
「さっき帰宅準備してるところでどこかから携帯の音が聞こえてたから、音を探ってたら政也くんの机の中に携帯があったよ。丁度職員室に向かって相羽先生に渡そうと思ってたら政也くんが現れた。はいこれ」
そう説明してから文香は苦笑しながら俺のスマホを渡した。
「ああそうか…本当にありがとうな。さっきめっちゃパニックしてたわ。本当あって良かった。今度何かお礼するよ」
「えっ、お礼は別にしなくてもいいよ?私は当然のことをしただけだしね」
と文香は苦笑して遠慮した。でも俺、ここだけは譲らないつもりだ。
「いや、そうはいかないだろう。お礼はきちんとするから。欲しい食べ物や飲み物があったら俺が奢るよ」
「……」
唐突な沈黙が流れる。いやなんでだ?
と内心で訊いたところで、文香はもじもじしながら俺の顔を真っすぐ見ている。ん?どしたん?
「じゃ、じゃぁLINEID交換してもいい?」
「おう、いいけど。それでいいのか?てか俺あまりLINE使ってないけど」
「え、じゃあチャットアプリは何使ってるの?」
「オンライン仲間が多いから、最近Discordやってるよ」
「リアルの方は?」
「…………」
「リアルの方は?」
そこで答えなかった俺を睨みながら2回同じ質問する文香だった。睨まれる意味分からん。
「い、いないよ。てか俺高1から他人と距離を置くと決めたからな。まあ、いわゆる陰キャというカテゴリにされるやつなんだよなぁ。決してコミュ障というわけじゃないよ。こうしてお前とぺらぺら喋ってるし。あはは……」と苦笑いしながら俺はそう言った。
「……」
何も言えなくなった文香は、俺の顔を伺って心配そうな顔をし始める。そうする理由はなんとなく察せる。
「はぁぁ…」
まさかの呆れた文香。って呆れとるんかい?!と思わず内心でツッコんだ。
「じゃあ、ID交換しようか?」
「了解」
LINEアプリを開いて俺は自分のQRコードを見せた。
「ほほう、政也くんのプロフィル画像、まさかの美少女アニメキャラクターとはね。へえ、こういう清楚系女子が好みかな」
「ん、まあ、それだけは認める」
「ふぅん、へぇ、そうですか……」と言いつつ文香がチラチラ俺を見てくる。何故そんなことをするのか俺も分からん。
あ、そいえば、さっき文香がスマホの音が聞こえたって言ったから、俺は早速着信履歴をチェックする。
店長の着信が3件か。あ、店長からのメールもあった。えっと、なになに……
「……あっ」と思わず声が出てしまった。
「どうしたの?」
首を傾げなら文香が俺に尋ねる。うん、こっちのくびかし(面倒だからそう略した)という首を傾げる仕草も可愛いなちくしょー!俺その仕草にも弱いかもしれん。
「いや、今人手が足りないから、バイト先の店長が早くシフトに入れるかと俺に連絡しただけだ」
「あぁそうなんだ……久しぶり一緒に下校したいけど、今日政也くんが忙しそうから残念だね」
残念そうな表情を浮かべながら文香がそう言った。うーん……一緒に下校か……
「……まあ、明日も明後日もその次もあるから大丈夫だ。下校なんかいくらでも付き合ってやるよ。改めて今日スマホの件ありがとうな」
俺がそう言ってから、文香は何故か驚いた顔をしてる。
「そうか……よかった……こっちもLINEID交換ありがとうね。嬉しい……」
「…………」
文香が自分のスマホを大事そうに抱きしめながら満面の笑みでお礼を言った。
言葉にできないほど素敵な笑顔で見惚れてしまった俺だったが、なんとか動揺せずに耐えた。
「じゃ俺はこれで。また明日な」
「ええ、またね!」
文香の嬉しそうな声色を聴いたあと、俺は文香に背を向けて教室を後にした。
今日まさか女子二人の素敵な笑顔が見れたとは。なんか浮かれたくなるくらい誰もいないこの廊下で思わずスキップしている。て、もう浮かれてるけどね。我ながら単純な男子だな。よし、今日のバイトも頑張るぞ!
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