11話

加護からスキルに変更しました。ご了承下さい。

ーーーーーーーーーー


「こんにちはシュン様。これから座学、魔法の担当をします、王国第二王女です。これからよろしくお願いします。」


目の前にいるのは第二王女らしい。あの生意気お姫様の第一王女じゃない。ちなみに勇者三人は別室で第一王女の授業を受けている。別れた理由は簡単。

かの生意気お姫様が、「勇者ではない方に教えるなど、言語道断ですわ!」と、俺と勇者の授業を離したせいだ。


「よろしくお願いします…えっと第二ってことは第一王女の妹ってことでいいっすか?」


目の前の第二王女は、見た目十代後半で、あの生意気お姫様より年下には思えない。もしかしてあの生意気お姫様は見た目に反して結構年上なのだろうか?あるいはこの第二王女がやたらと発育いいのか?


「いえ、様々な事情が御座いまして、私の方が年上ですが、女王継承権第一位は第一王女なのです。」


あ、なんか本当に複雑な事情がありそう。第二王女は淡い茶髪で青目、美人なんだろうけど、こう、特徴がない。美人を合わせて平均してみたらこうなりました、みたいな感じだ。身長は160cmに届くか届かないくらい。肩にかかるくらいの髪の長さだ。

胸は普通よりも少し大きいくらいか?貧乳派にも巨乳派にも受けが無さそうだ。常に微笑みを浮かべている。ただし、そこに感情は感じない。


「では、授業を始めたいと思います。まずは、リュミオール王国について」




リュミオール王国

かつて、異世界転生した勇者パーティーが、旧魔王を倒し、手に入れた土地を興した国。歴史は300年ほどと新しい。創国者が女性であったため、女性に重きを置かれることが多い。王位継承権は常に女性にあり、女王の婿となった国王が摂政として治世を行うのが習わしである。婿は王子、公爵嫡子がなることが多い。このとき、離婚をして国王から王権を略奪することができる。国名は、創設者の名から、国旗は国名から作られている。また……





「シュン!起きてください!」

は!また寝てた!


「聞いてましたか?」

「聞いてましたある程度。」


なるほど、団長さんは女性だからこそ騎士団長になったのか。団長専属があるのも納得がいく。


「何か質問は御座いますか?」

「あ、じゃあ、まず魔動具ってなんですか?」

「魔動具とは、使用者の魔力によって動く道具です。」


この世界では科学の代わりに魔法が発達しているのか。いつか、魔道具も作ってみたいな。


「他に質問は?」

「女性至上主義は、末端の村でも適用されるのですか?」

「いえ。そんなことはありません。女性至上主義は上位の貴族のみです。軍隊や村落では力仕事の出来る男性の方が優位に立っています。」


微妙なところなんだなその辺は。現代社会でこそ女性が働ける環境になりつつあるが、文明レベルが低いと女性の職場はより少ないだろう。


「他に質問はありますか?」

「じゃあ、あなたの名前はなんですか?」

「ありません。」


はっ?


「強いて言うなら、『第二王女』が名前です。王太子などはともかく、王族の娘は女王継承権を持った時点でそれまでの名前は剥奪されます。」


そういうものなのか?王族ってのは…


「他に質問はありますか…?」

「…」

「ないなら授業に移ります。次は魔法です。身体の中に魔力というものが巡っていて…」


「魔法陣や詠唱を媒介として…6つの属性魔法があり………」


「……………」



「起きてください。シュン」


わっ?!また寝てた?!


「聞いてましたか?」

「最初の一文だけ。」

「聞いてなかったのですね。」


第二王女はため息をついて、また同じような説明を始めた。不真面目な生徒を前にして、一切の怒りは見せない。変わりなく、微笑みを浮かべている。生意気お姫様とちがう、本当の王女の佇まいだ。ただ、そこになんというか不自然さを感じてしまう。




「起きてください。シュン」


 はっ!またやってしまった……


ーーーーーーーーーー

魔法の授業を終えて、俺は勇者3人と合流し、食事を終えて、昨日のように自室へ戻る。ちなみに魔法の実践練習は明後日かららしい。明日は魔法の理念か何かを教わるのだとか。


昨日は調子乗って色々してしまった。

今夜はやることを決めることにした。今日は魔法をやってみようと思う。今日第二王女さんに、魔法使うには魔導書を読む必要があると聞いたので、魔導書貸してくれと言ったら普通に貸してくれた。魔法の授業は寝てるくせに、魔導書は借りていくとか嫌ったらしいにもほどがあると思うが、第二王女様は嫌な顔一つしない。いつもの通り、微笑を浮かべるだけだ。だんだんそれが怖くなってきたが。


まぁ王女のことはまたにして…先程言った魔法に挑戦しよう。普通は魔導書を読み取り、完璧に把握しなければ魔法は使えないって言うが俺には印の魔眼があるので1度だけだが使える。なので、印の魔眼を挑戦してみようと思う。適応属性が魔眼に反映されるのかはわからないから、贅沢を言えば全て試したいのだが……火属性は火事になりそう。水はカーペット濡らすし、やっぱ風になりそうかな。


初級風魔法……

あれ、何も起こんない。

なんでだ。印の魔眼が発動してないのか?

まずどうやって使うんだ…



印の魔眼!

言ってみたがやはり発動しない…





あれ…俺魔法使えないの…

《視の魔眼》、お前の鑑定が嘘付いているんじゃ無いだろうな?そういえば、俺は魔力測定で魔法の操作能力がゼロだという結果が出ていたな。確かに、《印の魔眼》無しで魔法を使おうとしても発動しなかった。もしかして俺には魔法を使う才能が全くないのだろうか。《陣の魔眼》を使えば、その弱点も克服できると思っていたが、この散々な結果を見ると、そんなことはないようだ。というかそもそも、魔法陣を魔眼にストックしている実感もない。やり方が間違っているのか…?える様教えてください。


「マスターはまず魔力を感じ取らなきゃいけません。そして、魔力操作を完璧にしなければ魔法など夢のまた夢です。」


えぇ、ならまず最優先に魔力を感じ取らないといけないのね。


「あと、自分のあった属性を見つけてください。《視の魔眼》を使えば見れるはずです。」


了解。みてみるよ。

《視の魔眼》



基本属性


火属性 ×

水属性 ×

風属性 ×

光属性 ×

闇属性 ⚪︎


特殊属性


空間属性 ⚪︎

無属性 ⚪︎

土属性 ×

金属属性 ⚪︎


へぇ、なるほどね。俺ほとんど、基本属性使えないじゃん。

闇属性はシオンのおかげかな?空間は視の魔眼、無属性は身体強化とかかな、金属は武器洗練か。なるほど、固有スキルで、属性が決まった感じかな。


まず魔力を感じ取らなきゃな。

まずよくあるなろう系の真似で、瞑想してみるか…


……

………

…………


何も感じねぇじゃねぇか。

何が瞑想したら閃くだよ。全然閃かないよ。


「マスター。イメージが大事です。魔力は体の心臓部分を中心としており、血液の様に流れています。その心臓部分の渦を感じ取ってみてください。」


サンキュー。やってみるよ。

心臓部分に集中して……

微かだが、渦を感じる気がする…言われてみたら…程度だ。


「それを少しずつ手のほうに意識していき、魔法を出す感じです」


俺は手を伸ばし、闇魔法の初級魔法を使ってみようと思う。

蝋燭でできた影を伸ばそと思う。

しっくりきた感覚の後、人差し指の影が少しずつだが伸びた。


成功だ。

それからグニグニと蔓のように動かしてみる。

二次元から三次元に飛び出したりはしないが、かなり自由に動くようだ。

しかし遅いな。これで最速なのだろうか。使えるか使えないかで言えば使えないかもしれない。まあいい。闇魔法は使えるのが分かった。


部屋に設置されているベルを鳴らし、外に控えているメイド、エミリーさんを呼ぶ。


「はい。用件はなんで御座いましょうか?」

「紙とペンを持ってきてください。」

「かしこまりました。」


エミリーさんは部屋から出ていき、数分後に戻ってきた。


「こちらで宜しいでしょうか。」


そういってエミリーさんは一枚の白紙と少し太めのペンを持ってきた。

紙は羊皮紙ではなく、木皮製のもののようだ。ペンはインク入れが無いと言うことは、そのまま使えるのだろうか。


紙とペンを用意したのは、もちろん日記とは別件で、魔法陣を書くためである。

闇魔法を使い始めて分かったことがある。シオンの知識が俺にもあることがわかった。そのおかげでなんとなく闇魔法がわかる様になったんだが…そしてそのシオンの知識には、大量の闇魔法の魔法陣の知識があるのだ。これを書き起こし、《印の魔眼》の実験をするのである。


ぶっちゃけ、失敗すると思っているが。




結果、やはり全滅だった。

思いつくあらゆる魔法陣を書いたが、どれも《印の魔眼》は反応しなかった。


行き着く俺の予測は、『魔法は世界によって全く別物なのではないか。』というものだ。武器錬成も闇魔法も同じMPを消費していることから、魔力自体は同一の物なのかも知れない。しかし、思い返してみると、召喚魔法陣は世界によって形状も方式も光の色もてんでバラバラだったのだ。


もう結論を言おう。

印の魔眼に関して言えば、この眼でストックできる魔法陣は、魔眼の世界の魔法陣のみだということだ。この世界からそれを知る術はない。


誰かが使っていれば…

あの世界の…あっ、あの博士使ってたな…


そういえば、俺に精神干渉系の魔法を使おうとして、失敗してた。そもそも魔法が効いていなかったし、キモ男がキモかったから完全に忘れていた。あのとき、キモ男が魔法を発動するタイミングで、キモ男のかざした手から魔法陣が現れていた。


【視の魔眼】映像記憶


思い出せる。鮮明に。記号の一つもこぼさずに、まるっきりそのまま覚えている。さすがだぜ《視の魔眼》頼りにしてる。思い出した魔法陣を紙に書き、左目で見てみる。すると、すーっと入ってくる感覚がした。今までにない感覚だ。多分成功したと思う。


あとは実際に使ってみるか。

正直な所、人を使って実験するのは色々に気を使って面倒なんだが。

エミリーさんを呼ぶ。


エミリーさんは2度目の呼び出しでも快く来てくれる。


《印の魔眼》発動。


視点、すなわちエミリーさんの目前で魔法陣が展開され、精神干渉魔法が実行される。少し体から魔力が抜かれる感覚があるが、武器錬成よりも少量のようだ。


次の瞬間、エミリーさんの目がトロンと座った。

いわゆる、催眠状態だな。


とりあえずエミリーさんに質問してみよう。ちなみに部屋の音を盗み聞いていた奴は今日はいない。勇者三人の部屋にはついているようだから、俺よりも勇者を優先するようにしたのだろう。


「今日の下着の色は何色ですか?」

「…黒です。」


ふむ。しっかり催眠状態のようだな。ただのセクハラ発言では無いぞ?普段言わないような回答を確認して、正常状態か否かを確かめているのだ。

うん。魔法が発動したのはわかった。

でもどうしよう。やってから気づいたけど、この魔法の解き方が分からない。


とりあえず良い機会だから他に質問してみよう。気になっていること……質問したいこと……そうだ。


「第二王女様の事情を教えてほしい。」


 複雑な事情を本人に聞くのは気が引けるが、第三者に聞くのは俺的にオーケーだ。エミリーは力のない表情で、淡々と話し始めた。












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