10話
「シンザキ ユウキ」「はい!」「ニノミヤ カナ」「はい!」「シンマチ アオイ」「はい」「ミズノ シュン」「は〜い」
今の状況を説明すると、今練習場で、団長に集合をかけられたからだ。
俺らは実力をつけなきゃいけないらしく、今から特訓である。
「よし、全員いるな?私が君たちの体術訓練を指導する、王国騎士団長、ウィリアム・アシュトンだ。ウィリアムでもアシュトンでも団長でも、好きに呼ぶと良い」
翌日、俺達の体術訓練が始まる。
ゆうきと葵は眠そうだ。寝付けなかったか。こんな事態になって、ぐっすりと眠るなんて無理だろうな。反対に珠希はすっきりとした表情だ。図太いなお前。
ちなみに俺も寝不足である。いや、緊張してとかではなく、昨日色々してたら遅くなったせい。でも、さすが夜行性。夜は全く眠くなくて眠れなかった。
目の前にいるのは王国騎士団長らしい。ドレスアーマーっぽくなっている。
長く美しい金髪を後ろで一つに束ねている。眼光は鋭いが、笑みはとても美しい。胸は鎧の上からだから分からないが、普通くらいのサイズだ。身長は171cmで女性にしてはかなりでかい。肉体労働の騎士であるはずなのに、綺麗な白い肌と柔らかそうな手はどう言うことだろう。魔法の力だろうか。
そして、この国の団長が女性とはどういうことだ?
経済的に反感を買いそうだが…それとも経済的危機の影響か?
「では訓練をはじめる。女子二人は魔法に才能があるようだが、体術も最低限身につけてもらうぞ?」
「「はい」」
「本来ならば筋力トレーニングから入るのだが、その三人はその必要は無さそうだ」
まぁそりゃそうだよな。勇者と呼ばれてるんだし、人外ステータスだしな。
「そのため、ユウキ、カナ、アオイは一通りの初級体術を学んでもらい、その後自分に合った物を選択する形をとる。私の専属の騎士団から実力者を連れてきたから、マンツーマンで指導を受けてくれ。そして、シュン。お前はまず、平均並の筋力をつけてもらう。なので筋力トレーニングからだな。」
「…うっす」
筋トレか………
眠い。逃げよう。
「私が直々に監視してやる。しっかり励め!」
はっ?もう最悪なんだが…逃げれねぇじゃん…
ーーーーーーーーーー
「コラ!シュン!寝ているんじゃない!!」
……はっ!いかんいかん。また寝てしまったようだ。
「また0からやり直しだ。しっかり顎を地面につけるんだぞ?腕立てたったの100回だ!さっさと終わらせろ!」
いやぁ、この団長すっごい鬼畜なんですよ。
これを今10回は繰り返しているよ。僕は寝不足、頭痛でもう無理ですよ。
「たったの30回しか出来ないとは、お前はアオイやカナ以下だな」
いや、あの人外どもと比べないでいただきたいんですが?
ちなみに勇者三人は両手剣術を習っている。もう素振りをマスターし、実践的な指導に入っているようだ。加護はなくとも成長補正があったのか、もともと才能がよかったのか。
三人を鑑定してみると、ステータスが表示された。
新崎 優希
HP 800/850
MP 1056/1056
一般スキル
限界突破
二ノ宮 加奈
HP 500/520
MP 6084/6084
一般スキル
魔力親和
新町 葵
HP 500/700
MP 4032/4032
一般スキル
結界術
ぶっちゃけ、俺負けてるやん。なんで異世界転生何度もした奴が負けてるの?
もういいもん。俺はレベル上がるからいいもん。別に悔しくないし?
「よそ見をするな!」
団長さんに尻を叩かれた。なんか変な癖ができそうなんだけど、大丈夫かな。
ウィリアム・アシュトン
HP 2500/2500
MP 5453/5453
一般スキル
なし
称号
英雄 混血者 裏切者 武を極めし者
ねぇ、あなた人外じゃん。女性で慣れた理由がわかった気がするよ。
てか、称号って何?なんか能力に変化するの?える
「はい。能力に変化する称号もあります。英雄などが例ですね。」
なるほどな。ていうか、なにかの血が混ざっているのか。
レベルが無い世界だと、器用さや魔法の使い方が伸びるのかもしれない。
魔力は増やす方法があるのだろうか。それともエルフの混血だからだろうか。
ていうか称号……突っ込まないでおくよ。めんどくさいし。
「ぼさっとするな!」
痛っ。
「リュウト、カナ、アオイ!」
「「「はい!」」」
突然団長さんが勇者三人を呼びかける。
お、俺の筋トレは終わりですか?やめようとすると…
「シュンは続けていろ」
「………うっす」
「さて、剣術に関しては初級者、いや、中級者程度の力をつけたはずだ。そこで、今日の訓練の締めとして、私と1対1で戦ってもらう」
「団長と、ですか」
「ああ。言っておくが、筋力では私の方が下だぞ?強化魔法も使わない。女の私程度に負けたら恥と思え」
え、それは無理でしょ。だってあなた強いじゃん。
負けるに決まってますよ。ゆうきなんて顔青くしてるぞ?
「では、まずはユウキからだ。好きにかかってくるが良い」
「は、はい」
団長さんは訓練場の中心で、両手剣を構える。
素人目に見て素晴らしい。これが武の極地か。
対してゆうきはガタガタである。緊張しすぎだろ。
「しっかりしろ!これは訓練用の剣だから刃を潰してある。斬られても痛い程度だ。全力でかかってくるがいい。」
「はい…」
ゆうきはまだ固いが、目を団長さんに向けた。
真剣な表情をすると、イケメンである。
龍斗は上段から剣を振り下ろした。力任せにも見えるが、上段振り下ろしの型どおりである。ステータスで勝っているなら、小技ではなく力勝負で。良い判断だと思う。
「ふん。」
それを団長はなんなくそれを受け流す。寸分の狂いもない動きだ。ゆうきも分かっていたように、姿勢を崩さない。そのまま習った通りの型で、高ステータスの力をもって攻撃を続けるが、団長さんは最小限の動きでかわし、受け流し続ける。涼しい顔だ。
対して、ゆうきは…うわ…こいつ笑ってるよ。
戦闘狂だよ。
「やあっ!!」
なんかゆうきの速さが少し速くなった気がする。
こいつやっぱり戦闘狂の素質があるんじゃないか?
「はあっ!!」
ゆうきが渾身の力で上段から剣を……
あ、フェイントだこれ。振り下ろした剣は途中で軌道が変わり、二本目の攻撃が振るわれる。
「むっ?」
団長さんが初めて大きくよけた。力が入っていない剣だったが、高ステータスならそれでも一般人の攻撃にはなる。団長さんがニヤリと口元に笑いを浮かべた。あーあ。団長さん火が着いちゃったよ。
「では今度は私から行くぞ!」
先程まで常に受けていた団長が攻勢に入る。
「くっ!」
団長さんの連続攻撃をゆうきはなんとか受け続けるが、団長さんみたいに受け流せてはいない。闇雲に防御しているだけだ。次の瞬間、団長さんの剣がゆうきの首筋に当てられた。
「終わりだ」
「うわっ」
龍斗は今になって首に刃が当てられていたことに気づいたらしい。
「うわ、最後のぜんぜん見えなかった。どうなったの?」
「わからない」
かなもあおいも見えなかったようだ。
最後の団長さんの攻撃は、ゆうきと同じフェイントだ。団長さんの力が入っているように見えた剣が、流れるように軌道が変わり、ゆうきの首筋に当てられたのだ。しかもゆうきの力任せなものとちがい、団長さんの二撃目は体重がのった、有効な攻撃だった。あのまま団長さんが剣をとめていなかったら、ゆうきの頭は胴と離れていただろう。団長さんは素人目に見てもかなり強い。というか上手い。気の逸らし方とか。先程も思ったが、これなら騎士団長の職に就いているのも妥当だな。
ていうか団長さんもすごいが、《視の魔眼》半端ねえな。全ての攻撃がはっきり見えた。団長さんの動きも事細かく。これは戦闘において非常に有利ではないだろうか
「…参りました…」
「うむ。なかなか筋がいい。最後の攻撃は意表を突かれた。てっきり力任せにがむしゃらな攻撃をすると思っていたからな。良い意味で期待を裏切られた。」
その後、かなもあおいも団長さんにコテンパンにやられ、途中から寝ていた俺は団長さんに叱られ、今日の体術訓練は終了となった。昼飯を食べた後は、魔法と座学の時間である。先生はあの生意気お姫様らしい。魔法はともかく座学は大丈夫か?ぱっと見中学生か小学生にしか見えなかったんだが。
まぁ寝るしいいか…
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