8話

さて、俺たち四人は今、ゆうきの部屋に集まっている。八畳くらいの部屋に、ベッドが一つ、少々の家具って感じだ。


「これからの事を、皆と話し合いたい」


ゆうきが切り出した。


「てゆーか、何でこいつまでいるわけ?」


女子の一人……かなだったか、そいつが俺を指差して言った。なんだよ。「人を指差してはいけません」って

習わなかったのか?


「こいつは勇者じゃないんでしょ?戦力にならない奴まで巻き込むのは良くないわ」



 一見、傲慢で自分勝手な発言に思えるが、脳内で『この子は勇者じゃなくて、無関係なのよ?戦えない彼の命を、危険にさらす必要なんてないわ。戦うのは、勇者になってしまった私達だけで十分なのよ。』と変換するといい。そう変換すると見えてくるものがある。そう、ツンデレだ。こいつツンデレだったんだな。


かなは少し茶色がかった髪を後ろで一つに束ねている。胸は……壁だ。制服のワイシャツに膨らみが見えない。だが、俺は胸の大きさで善し悪しを決めるような浅はかな人間ではない。細身だが、華奢というよりは、引き締まっているという感じだ。健康的な血が巡り、薄く焼けた肌を一層彩っている。

首筋はきれいで、キリリとした、気の強そうな目をしている。けど女神様に比べたらなぁ…


「何よ。」


考えてると睨まれてしまったのですぐ目を逸らした。


「しかし、彼は僕らと同じで、この土地の何も知らない言わば、同志じゃないか。僕はそんな彼を見捨てるようなことはしたくないかな。」


えっ、ゆうきかっこよ。惚れちゃうよ?言う言葉まで主人公かよ。


「でも、コイツが足引っ張って、私達がかばって全滅なんて、嫌よ私」


かばう前提なのが、良い奴感染み出てるよな。さすがあの姫様とは違う、真のツンデレ。



「ああ。これから加護がでるかもしれないらしいんだ。それまで、結界師である葵が守ってくれ」

「ゆうき君がそういうなら、頑張る」


活発な珠希と対照的に、葵は無口だ。

まあ無口なだけで、表情は豊かだったりと可愛らしい。そして胸デカい。

ワイシャツが張り裂けんばかりである。ベストを着ているが、それでは隠せないほどの迫力がある。白い肌は、その下に通る血液が薄く桃色づかせ、不健康に感じさせない。ワイシャツの襟からチラチラと見えるうなじが白く輝いている。改めて見るとこの三人、美男美女の塊である。なんだこいつら、リア充か、勝ち組か。主人公か。


「はあ、あんたは甘いわね」

「いつものこと」

「なんだよ、お前ら」


あー、なんか三人の世界作ってるー。

除け者にされてないはずなのに除け者にされてる感ー。





「で、このままこの国にいて良いと思う?」


かなが質問してくる。

俺はそっと遠回しにゆうきに見張りがいることを教える。

するとゆうきが葵に念話でもしゃべっているのだろうか…

葵が頷いて手を上にかざした。すると膜を張った様な感じになった。


「成功した。でも、慣れてないから、余り長い時間は保てない」

「いや、十分だよ葵。ありがとう」

「えへへ」


ゆうきに誉められ、だらしなく笑みを浮かべる葵。

いちゃつくのは結界の外にしてくれませんかねぇ。


「君は何かスキルで隠したのかい?」

ゆうきは聞いてくる。

当たり前の質問だな。なんも出来ない奴が急に気付いたんだから。


「あぁ、探知ってスキルがあるんだ。けどさっき目覚めたばかりだよ。」

と、無理やりな返答をした。ゆうきは納得してない様だけど、無理にでも納得してもらうしかない。


ーーーーーーーーーーーー


「で、なんでこんな面倒な事したのよ」


 かなが不機嫌そうな顔をして聞いてくる。


「なんで盗み聞きされると思う?ちなみに恐らく国側の人間だ」


 別に、あっちに思考させることで云々とか、そういう目的はない。

 ぶっちゃけ、全部説明すんのが面倒なのだ。


「…国家に反する存在か否かを確かめるため、かな」

「私もそう思う」

「は? 何でよ?」


もしかしてツンデレだけじゃなくて、アホの子属性ももっているのか?


「かな、君は実感が湧いていないかも知れないけど、僕達の勇者としての力は、この世界にとって脅威なんだよ。もしかしたら国家を揺るがし得るかもしれない。そんな存在が、国家に反逆的な思想を持っていたのがわかったら?」

「まだ強くならないうちに、その芽を潰す……なによそれ!召喚したのはあっちじゃない!」


ありがとうゆうき。俺の説明を肩替わりしてくれて。

まあ国家の行動としては納得できるが、人徳的には納得できんよな。


「ま、多分、この国も切羽詰まってるんだろうよ」


俺の台詞に三人は疑問符を浮かべた。

これは俺が説明せねばならんか。


「この世界の常識がわからないから確証は持てないが、この国は主に財政的に緊迫していると思う」

「根拠は?」

「まず、王が動きすぎ。家臣に忠誠心がないのか、王に仕えさせる手も無いのかわからないが、どちらにせよ問題だ。あとは、家臣が少なすぎる。料理がまずい。この部屋も、勇者に与えられる王城の一室としては狭すぎる」


こんな所か。

まあ平々凡々な日本人として生活してたら気づかないかも知れない。

けど俺は何度も召喚されてるから状況がわかるのだ。



「なるほど」

「でも、料理は美味しかったわよ?」

「うん。素朴だったけど、スパイスやニンニクが効いてて、味が薄いと言うこともなかったけど。派手すぎないイタリアン? みたいな?」

「完食」


あれ?もしかして俺の味覚がおかしいのか?


「ま、まあ、この世界の常識がわからないが、高級食材っぽいのは出なかっただろ?シェフの腕はいいかもしれないが」

「まあ、言われてみれば……」


うん。そういうことにしておこう…

まずかったけどなぁ……











 

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