第5話約束

手術前夜、純也は細川に電話した。

「もしもし、おれだ。今、いいか?」

「あぁ、いいよ」

「明日のおれのオペの事なんだが、もし播種なり、何なりあってもありのままを伝えてくれないか?」

「どうしたんだ?山崎。お前はまだ、ステージ1じゃないか」

「CTに写らない場合がある」

「分かった。どんな結果であれ、お前に正直に話すよ」

「ありがとう。明日は頼むぞ」

手術前から入院している病室には、ただ1人。


朝の8時にまひるが付き添いに来た。

「純也君、今日は頑張ってね」

「うん」

「手術、10時からだよね。あのね、話しがあるんだけど」

「何の話しだい?」

「私、赤ちゃん出来た」

「……な、何ですって!やったな、まひる」

「だから、赤ちゃんの為にも頑張って!」

「大丈夫。ステージ1だから。安心していいよ。退院したら、直ぐに日にち決めて結婚式を挙げよう」


コンコン


誰か扉をノックする。まひるが、扉を開いた。細川だった。

「おはよう。9時には手術の準備をするから、ストレッチャーに移動してくれ。山崎、頑張れよ!かわいい奥さんも応援してくれるから。じゃ、僕はオペ室に向かう。もう少ししたら、スタッフが迎えにくるから」


9時。

ストレッチャーでオペ室へ移動を開始した。

まひるは、不安そうに後を付いてくる。

「まひる。心配すんな。ちょっと、切ってくるわ」

純也はまひるに手を振った。

純也は色んな管を繋がれ、それ以降、麻酔により気を失った。

第一助手の細川がオペ室に入るとスタッフが一礼した。この病院の外科部長なのだから当たり前だ。

それからまもなく、小林がオペ室に現れた。細川一同、小林に一礼した。呼吸器外科の権威だ。


「先生は?」

「気持ち良く寝ていらっしゃいます」

「では、肺葉切除術を行います」

「宜しくお願い致します」


「はい。細川君ゆっくり開いて。ちょっとライト。そんな感じでいいよ」

ライトを当てられた、開胸部を小林は見た。

「……」

細川は小林の視線を追いかけた。

「!!」

「……播種だ」

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