第4話手術

山崎純也は見守りの、まひるに、

「ちょっくら切ってくるわ」

と、言いながらストレッチャーに横になり、手を振った。

執刀医は呼吸器外科の大物、小林先生だ。

純也の親友の細川は助手だ。

手術開始30分後に、開胸した。

「はいっ、ゆっくり開い……」

執刀医の小林の手が止まった。細川はそれに気付き、開胸部を覗き込んだ。

「播種だ」

「どうしましょう、小林先生」

「ガンが胸膜全体に広がっている」

「CT画像では、ステージ1だったんです」

「播種はCTに写らん事が多い。よし、閉じよう」

「こ、小林先生。せめて、原発巣の切除だけでもできませんか?」

「ここまで広がっていては、全身転移と同じことだ。早く閉じて、体力の回復に努めよう」


うぁぁぁっ!

「どうしたの?純也君」

「なんちゃらの巨塔の夢を見たんだ」

「スゴい汗。着替え持ってくる。はい、タオル」

「ありがとう」

その声は小さかった。

まさか、ホントに播種だったらどうしよう?

結婚前なのに!

内科部長の件もあるし。30代の若きリーダーとして歩み出す前に、何なんださっきの夢は!

純也は一抹の不安を感じた。

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