結魂、真魂、離魂、未魂
「そんなこと、急に……」
全く想像もしていなかったことを言われた。というか、想像なんてできるはずもない。本当なのか嘘なのか、それさえもわからなくなってしまう。これはすべてではない、大まかなことを話したまでだ。そんなこと言われても、俺にどうしろって言うんだよ。
俺とこの男、
離魂することにより、本来の龍人に戻ったとき、より強い力が身につくものされている。龍人誰もが結魂、離魂できるが、離魂は成人するまでの2、3年の間だけで、それ以降は結魂し、龍人として過ごしていくのが常だという。
成人は21歳、19歳の俺と炎はあと2年間で結魂しなければならない。
なぜ、普通の人間として生まれてきた俺が炎弩のもう1つの魂なのか。それは、龍人の国で悪しき魂に侵されたものにより、反乱が起こってしまったことによる。
離魂したどちらともに言えることだけれど、なんらかの原因で肉体が亡きものとなった場合、1度だけ他の肉体に魂を宿すことができる。そして、どちらともが成人になったとき結魂できる。
19歳と10歳の2人ならば、10歳の者が21歳になるまでは結魂はできない。龍人は21歳の成人となるまでは、ほとんど普通の人間と変わらない早さで成長していくが、そのあと人生は何百年とも言われる。子供の未魂は力が弱すぎる。もし結魂してしまえば片方の魂に吸収され、2度と真魂になることができなくなるのだ。
吸収されたら結魂と変わらないと思うかもしれないが、決して同じではない。吸収されてしまったらどちらかの未魂は消えてなくなる。つまりは、どちらかの死を意味する。
あの日、姫は殺された。わたしたちの妻となるはずだった、大切な人だ。お腹の中には子を宿していた。姫の死ですべてが終わるかと思われていたが、そうではなかった。
龍人は龍神とも言われる存在だ。死んでしまっても子が生まれるまでは魂の燈は消えない。
離魂していたわたしたちは、もちろん、姫の元に駆けつけていた。わたしとそなた、他にも仲間で応戦した。
お腹の子までやられるわけにはいかない。そこで、そなたの取った行動が肉体を捨てるということだった。
わたしたちは圧されていた。姫のお腹の子を狙って毒が放たれたとき、それを庇いそなたは自身で毒を受けた。わたしは龍型となり、そなたたちを連れ命からがらなんとか逃げてきた。
天にある龍人の国を出て、下界に姿を隠し、なんとか姫の体は子を生んだ。生まれた子は身寄りのない子を育てている神社へと預けた。
そして、わたしはそなたを探しに出たのだ。
と、いうことだ。
俺はほとんど理解できていなかった。いきなりそんな映画の世界のような話をされても実感は湧かないし、現実にも思えない。まして、俺が応戦して、戦って、毒を受けてって、威勢だけはいいって言われてても、これは全く別次元だ。
「これを聞いてもまだ、思い出せぬか?」
「本当に、その未魂っていうのは俺なのかよ? なんで分かるんだよ?」
「そなたも見えたであろう? わたしの目を通してそなた自身を」
「ふっ、ぼやけててよく見えなかったけど」
思わず苦笑した。
「ぼやけていても、これができるのはわたしたちが真魂の龍人だからだ」
「でもさ、おかしくない? 俺が魂を宿して……ってことはお前と同じ年なはずないだろ? 同じスピードって言ってたよな?」
「そなたは、この地に降りてきた。龍人の国でもなく下界でもなく。この地だ」
「この地って日本?」
「まぁ、そうだ。この世界にだ。そなたの魂はちゃんと分かっておるのではないか? 時間の流れが違うことを。いかに早く、わたしと同じ歳になるようにと」
そう言われたときだった。まだ、母親のお腹の中にいる胎児の俺が、頭の中に浮かんだ。心臓の鼓動が弱くてそのままだと死んでしまいそうな……
「炎夏、どうかしたか?」
「今、俺、お腹の中の……」
「何か、思い出したのだな?」
知らぬ間に頬に涙がこぼれていた。よく分からなくて、何も分からなくて、でも、涙が溢れてきた。
「わかんねーよ。何で泣いてるのかわかんねーよ」
何も言わず優しく肩を抱かれた。
数分たち、気持ちも落ち着いた。まだ、完全に理解したわけじゃない。でも、自分が炎弩の未魂だというのは事実なんだろうと思う。なんとなくだけれど、心でそう感じるから。
それに、最初にこいつに会ったときも恐怖というものはほとんどなくて、なぜだか、あの状況で冷静でいられたような気もする。
「なぁ、俺は何をしたらいい? この世界に別れを告げるとか?」
「本当ならそうなればいいとは思う、だが、今のそなたにも人としての人生がある。わたしは龍人の国に未練はない」
「じゃあ、何だよ?」
「未練はないが、あのままにしてはおけぬ。協力してほしいのだ」
「俺にできるかな?」
「できるとも、わたしたちは真魂だ」
「そか、俺はここに戻ってきたときはきっと浦島太郎か」
「浦島太郎とは?」
「はっ? そんなこと聞いても何の特にもならねーから」
立ち上がり、両手を思いっきり伸ばし背伸びをした。
「なぁ、炎夏、こちらのほうがわたしは好きだ」
炎弩の見ると、今度はホワイトチョコレートをパクパク食べていた。真剣な話をしていたのが嘘のようで、でも、もともと知っていたかのようにも思える。こいつとの会話や行動に違和感が全くなくなっていた。
そういえば、赤ちゃん……成人じゃなくてもセックスはするけれど、孕ませるって、しかも姫を。真魂の俺たちはどんだけやりチンなんだよ!
ちゃんとパパになれるんだろうか?
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