第三話 底辺
俺が目が覚めしたのは、昼休みを終わりを告げたチャイムが鳴ったときだった。
午後の授業をするために教室に入ってきた先生に足蹴にされた事で目を覚ましたのだ。
俺の赤く腫れた顔面を見ても教師は顔色ひとつかえやしない。
それどころか面倒臭いものを見せた俺に対する嫌味かのように、見せつけるような大きなため息を吐いた。
「はぁ~……君、そんなところに寝てないで自席に戻りなさい。」
心配を口にするでもなく、注意を促される。最底辺のEランクの扱いなんてこんな物だ。
顔を見れば、どう見てもただ寝ていただけな訳ことはわかるだろうに……
教師は俺の怪我については一切触れない。
そもそも、この程度の怪我で保健室なんて大層な学校の施設を使う権利は俺達にはない。
ただ、暴行を受けず注意で済んだだけましかもしれないと気を取り直す。
俺は腕に黒い腕章をつけなおして、
「はい……」
と、元気なく返事をして自席にこそこそと戻ろうとした。その時、クラスメイトの様子が見えた。
授業がこれから始まるにも関わらず教科書を開いているものもいない。
そしてクラスの雰囲気は暗い。
皆が自分の席で俯き小さくなっている。
そう、たった一人を除いて。
クラスメイト達が俯き自席に座るその教室の後方の席をでは、大きな声でクラスの女を侍らせながら駄弁っている奴の姿が見えた。
本当に忌々しい奴だ。
もしも自分が怪力のギフトを持っていたら握ったこぶしが潰れていただろう。
豪鬼のつけている緑色の腕章はBランクの証。
このクラスにいる奴らがEランクの黒い腕章をつけていることを見ても、社会ランクBは最底辺のクラスの中ではダントツで高い。
つまり、豪鬼は【怪力】のギフトによって俺よりも社会に必要な人間ということだ。
逆に考えると社会ランクがBもあるのに、学校の最底辺のクラスに送られてくるくらいの素行の悪いクズということでもある。
つまるところ、このクラスの中には、力でも社会ランクでも豪鬼に逆う奴はいない。
まさにこいつはたった十人しかいない最底辺クラスの独裁者なのだ。
そんなやつをこんな最底辺のクラスに送り込んでいるのを見るに、この学校もそうとう腐っていると言えるだろう。
俺が起き上がったことに気が付いた豪鬼が笑いながら煽ってくる。
「ポチ、ハウスw 早く戻れよw」
「マヂ受けるwww」
そんなヤジにすら反論することもできずに、俺はへらへらとしながら、「すみません……」と小さく呟いて、嫌がらせのラクガキがびっしり書かれた自席に座った。
俺も他のクラスメイト同様、俺も俯いた。
俺たちに教科書は開くことすら許されない。というよりも教科書は既に豪鬼によって捨てられているのだ。
授業が始まっても後ろから聞こえてくる豪鬼の馬鹿でかい笑い声の所為で、教師の話す内容すら一切聞こえてこなかった。ただただ、机に描かれた自分を蔑む落書きを見ている事しかやることは無かった。
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