ミルクロード

ゆきのこ

天の河

机の奥にしまってあった画用紙を切り取って作った短冊。

なんとなく切って、なんとなく穴を開けて、なんとなく針金を通してみた。

願い事は、まだ書いていない。

去年は…… そうだ、「ずっと一緒にいられますように」って書いたんだ。

あの日は少し曇ってて、空がよく見られなかったんだっけ。懐かしい。


 今日は去年と違って、きれいに晴れて、過ごしやすい気温の七夕になった。

そんなところまで違いを見せられ、気を抜くと泣いてしまいそうになる。

天気も、気温も、部屋にいる人数まで違う七夕。

これがとっても寂しいんだ。

きっと、「――ように」って書いたのがいけなかったんだ。

”できない”を前提に、そうしたいって書いたことが。

”できる”を前提にして書いていれば、ってあれから何回思ったことか。

もう、後の祭りだけれど。


 何度も思い出を蘇らせて、それでも何を書くか決まらない。

早く決めなよ、と言うあなたの声が聞きたくて待っていたのかもしれなかった。

けれど、聞こえないのは分かっているから。

「……決めた」

今年のお願い事。

『あなたとまた一緒にいられますように』

そう書いた。いいの、これはできないことだから。

いいの、いいんだ、と呟きながら窓を開けた。

ここはマンションの十階、風が強いのは日常茶飯事だ。

取り付ける笹がないので、とりあえず物干し竿に括ってみる。思ったより不格好だった。

あーあ、と手すりに体重を預ければ、向かいの部屋で楽しげにしているのが見える。

やんなっちゃうな。僕はこんな気分なのに。

空には無数の星があった。その一つが瞬いて、僕に何か言っているような気がして、

「……あ、なぁんだ、簡単じゃん」

いいことを思いついた。

ずっと、これからもずっと、あなたと一緒にいられる方法が分かった。

一度部屋に戻って、ペンを持ってくる。

さっき書いた文字に二重線を引いて、書き加えて、訂正した。

「これでもうずっと一緒だね……」

風で暴れる短冊をしばらく見つめたあと、ペンを部屋の中に投げ入れて、一瞬だけ空を見た。さっきの星がまた揺らいだ。

「ふふ」

それから僕は、天の川とは逆の方向へと飛んだ。

 ――『あなたとまた一緒にいられます』



〈あとがき(?)〉

皆さんはじめまして、ゆっきーです。

とりあえず、最初はTwitterに載せたものをこちらに持ってきました。

ページ数の関係で少し無理やりなところがありますが、そこは大目に見てくださるとありがたいです……

だいたい、いつもこんな感じの小説を書きます。そしてだいたいBL要素ありです……。

これから仲良くしていただけるととっても嬉しいです!!

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ミルクロード ゆきのこ @huusenn-taiyou

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