花火と跳ねる心
「綺麗な花火⋯⋯」
思わず口に出していたことに気づいて慌てて口を塞いだ。時刻は一七時三〇分を過ぎた頃。
今開催しているこの花火大会は昼花火と夜花火の二部構成に分けられ、今は昼花火の時間帯になる。空は暗くなり始めているもののまだ青さを保っている。それでも花火はカラフルにその姿を空に映し出していた。
「すみませんー! ひとつ下さいー!」
その言葉に慌てて、作業に戻る。金属製の缶を開けコーンの上にバナナ味とイチゴ味のアイスを交互に盛り付けていく。いわゆるババヘラというヤツだ。
高校生の私はバイトで参加していた。花火大会の日はかなりの動員が見込まれるため、多少のボーナスも出るので、張り切っていた。
出来たババヘラを渡そうとしたら、「頑張ってるね」と声をかけられた。
お客さんは同級生で、黒髪のロングヘアが似合う清楚な子だったはず。でも今の服装はかなりパンクと言っても良かった。
そのギャップに心臓が大きく跳ねた。ババヘラが溶けて、コーンから手にかかる。
いつもは不快感があったけれど、なぜか今日に限ってはそこまで不快ではない。
ああ、もしかしてこれが恋というものなのか。
だとすれば、私はこの時初めて恋を知った。
END
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