第23話

「あはははは」

少女は大声で笑う。

「笑いすぎだかおり。」

少女は俺たちが夏休みに出会ったかおりだった。

「だって兄ちゃんが本気でビビってんだもん。そりゃあわらうわ。」

今はおどけた顔をしているが、銃口を向けていた時の目は本気だった。

「お前なにしてるんだ。で、ここはどこなんだ。」

俺は笑っているかおりをよそに、現状について尋ねる。

「ああ。兄ちゃんもうすうす気づいてんだろ。」

かおりは少々神妙な面持ちで話を続ける。

「閉鎖空間さ。」

やっぱりか。俺の予想は大方あたりだったらしい。

「どうやったら抜け出せる?」

俺が矢継ぎ早にこたえると、

「なんだよ、つれないなー。」

兄ちゃんあたしといたくないのかよ。

とぼそぼそつぶやきだした。

俺は早く現実世界に戻りたい。

それに何だか胸騒ぎがしていた。

「正しいよ。」

「?」

「兄ちゃんの直感は当たってる。もうすぐ敵が攻めてくるんだ。」

なんだって、そりゃ一大事じゃないか。

俺は急いで小屋から抜け出そうとする。

「やめときな!」

ぴしゃりとかおりが言い放つ。

「ここはもう包囲されている。うかつに飛び出すと危ないぜ。」

なんということだ。最悪だ。俺はもう帰れないのか。

泣きそうになっていると、かおりあたしに任せろという。

「決着をつけてくる。兄ちゃんはここで待ってて。」

まっててていわれて女の子を危険にさらすわけにはいかない。

「だれと決着をつける気なんだ?」

それだけ言うのが精いっぱいだった。

「決まってんだろ。涼宮ハルヒさ。」


かおりがハルヒの名前を言い終わる前に玄関の扉が勢いよく破られた。

馬に乗った武士らしき人影が飛び込んできた。

かおりは身をひるがえしながら武士に狙いをつける。

武士も香りめがけて槍を突き立てようとする。

どーん。

銃声がこだました。

銃弾は武士の兜に命中した。その衝撃で槍はかおりの数歩前の床につきたてられた。

兜が落ちる。

長い髪が広がるのが確認できた。

涼宮ハルヒの姿が騎上にあった。

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