第22話

日差しが熱い。

蝉の鳴き声がする。

僅かな風が木々を揺らしている。

ジメジメとした腐葉土の匂いがする。

「ここは何処だ?」

俺は朦朧とする意識の中から目覚めようと足掻いていた。

少しずつ意識が覚醒していく。

あたりを見回してみる。

小学校の頃、カブトムシを取りに行った山に似ている。

人のいる気配がしない。

俺は恐る恐る足を踏み出した。


1時間ほど山中をあてもなく歩いていると少しずつ視界が開けて景色が変わってきた。

高い木々の代わりにススキの群れが広がっている。

黄金色が眩しく、道は右に大きくうねっていた。

しばらく行くと右手に古民家が見えた。

助かった。

何しろここが何処かわからないばかりではなく、人の気配が全くしなかったので正直かなりの不安に襲われていた。

この古民家は砂漠に迷える憐れな旅人のオアシスのように思えた。

俺はすかさず古民家の引き戸を開けようとした。

「動くな!」

背後から女の声がした。いつのまにか背後にいたらしい。背中に冷たいものが当たっている。同時に冷や汗が出た。

「手を上げろ!そのままゆっくりこちらを向け!」

女は背中にビリビリと響くくらいはっきりとした口調で俺に指示を下した。

俺は指示に従いゆっくりと後ろを振り返った。

吊り目の少女が目に鋭い光を灯して火縄銃を構えていた。




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