第21話

残暑が厳しいアスファルトの坂道を俺は登っていた。とにかく暑い。

暦は9月中旬とはいえ、ゆうに30度を超える。

俺は憂鬱だった。

2学期からハルヒの様子がおかしかった。

いや、実をいうとSOS団のメンバー全ての様子がおかしかった。

話すと長くなるのでここでは多くは語らない。

ただ、みんな俺に隠し事をしているような様子だったと伝えておこう。

俺の思考は単純だった。

不快な感情があるのなら、その原因を除けばいい。

今は学校に行きたくなかった。

俺は坂道を下り始めた。

そうだ、本屋にでも行こう。

俺は歩調を早めて坂道を下っていった。


学校へと続く坂道の入り口の交差点に、全国チェーンの古本屋がある。

最初は漫画を読もうと思ったが、ふと長門を思い出し、小説コーナーへと足を運んだ。

長門は基本、難解な本や奇抜な本を好んで読む傾向があるが、俺は違う。

意外に思われるかもしれないが、俺は歴史小説が好きなのだ。特に王道の戦国時代や幕末期の作品はたまらない。

夏の暑さとは無縁なクーラーの効いた店内で俺は歴史の旅をしていたのだ。

ページをめくっていくうちに時間が経つのを忘れた。


おそらく数時間は経っていただろうと思われる。ただ、時間の感覚が鈍感になっていた。

俺は周りがやけに静かなことに気付いた。

本を閉じて辺りを見まわしてみたが誰もいない。

違和感を感じた。

平日とはいえ、人がいないのはおかしい。

レジに行くと店員さえいない。


俺は店の外に出た。

交差点には人も車もいなかった。

これは何だ?


俺はこの感覚が初めてではない気がしていた。

しかし、いつのことだったかは思い出せない。


後方から強い衝撃を受ける。

まどろみの中で少女が微笑んでいるのが見えた気がした。

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