第16話
俺とかおりは近所のスーパーに来ていた。
なぜか知らないが食材を買って俺の家で手料理を振る舞ってくれるらしい。
「なぁ、にいちゃん、さっきからなんで上の空なのさー」
かおりは学校指定のジャージに身を包み、トマトを片手に俺にそんな言葉を投げかけてくる。ちなみに俺のジャージなのでサイズはぶかぶかだが、普段からジャージ姿しか見ていないので、結構似合っている。
「お前さ、ジャージ以外私服ないわけ?」
かおりが俺の部屋で脱ぎ散らかした黄色いジャージは家で洗濯中なのだが、そういえばこいつのジャージ以外の姿見たことがない。
「なんだにいちゃん、あたしの私服に興味あるのか?あーわかった制服とか着せて淫らな行為を嗜みたいんだな!もーエッチだなぁ」
「ちょっとした疑問を木星サイズまで膨らませるんじゃねぇー!」ただでさえ俺の名前が刺繍されたジャージを着ているのにこんな状況身内に見られたらアウトだ。
「何やってんのアンタ?」
聞き慣れすぎた声が背後から聞こえてきた。
俺は振り向かずとも終わったと悟ってしまった。
「金星か火星か知らないけど、私との約束すっぽかして女の子とイチャイチャするなんていい度胸してるじゃない。」
「違う!ハルヒ!これには理由があって!話せばわかる!俺の話を聞いてくれ!」
ハルヒの眼には怒りの業火が灯っており、俺はもう手遅れだと観念しその場で膝から崩れ落ちた。
「うっさい!いい訳すんな!」
ハルヒは今にも飛びかかりそうな勢いだ。
ダメだ。殴られる。
そう思った瞬間、かおりが俺とハルヒの間に入った。
「まあまあまあ、ハルヒちゃん落ち着いて。」
かおりはのんびりとした口調で言った。
ハルヒは少し逡巡したように見えたがすぐに反転攻勢に出た。
「かおりは黙ってて!ていうかアンタもそこのアホキョンと同罪なんだからね!」
ハルヒの怒りはボルテージがMAXに達しかけている。
ところがかおりは平然としている。
「ふーん、あたしのことはどうでもいいけどさ、にいちゃんのこと悪くいうなら黙って無いぜ。」
かおりの目に鋭い光が入ったように見えた。
ハルヒは半ば涙目にながらも生まれつきの性格からか、引き下がろうとしない。
俺はこの時、何かが崩れそうになっていると思った。
もちろん、2人がケンカするところは見たくないと思っていたが、それ以上にこの衝突はなんとしても避けなくてはならないと直感だが、やけに確信じみたものを感じていた。
その確信は俺を大胆な行動に走らせた。
俺はかおりの背後から胸元のファスナーに手を伸ばし勢いよく引き下ろした。
はだけた胸元からは豊かな乳房とそれを包む赤い花柄のブラが露わになった。
「っつ!?」
かおりは赤面し、胸元を隠しながらその場にしゃがみ込む。
ハルヒはその光景を真正面から見たせいか数秒フリーズしていたが、顔を真っ赤にしたあと、
「こっの、変態がぁああー」
俺の頬を右ストレートで捉えたのだった。
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