第17話

「イテテ」

「ごめんよにいちゃん、ちょっと我慢してくれ。」

俺はハルヒに鉄拳を食らった頬をかおりに手当てしてもらっていた。

ハルヒは俺の家のリビングで妹が撮り溜めたアニメを観ながらふてくされている。

あの後、俺たちはスーパーで買い物を済ませ、かおりは予定通り得意のカレーライスを作ってくれることになった。

それはよかったのだが、ハルヒはまだ怒りが収まらないらしく、俺たちの了承を得る前についてきた。無理矢理とんずらを決め込もうとも思ったのだが、夏休み明けの学校での報復が怖くてやめた。というか、かおりならハルヒから逃げ仰ることも可能だろうが、俺は自身がない。ハルヒは女子の中でも運動神経が良く、ましてや怒りに燃えている状態なら確実に俺を捕まえるだろう。そんな負けが確定している賭けには出たくなかった。

とはいえ、家に入れたのもこれはこれで問題だった。ハルヒは家に入るやいなや、俺の家を物色し始めた。

洗濯機をおもむろに開けるとかおりのジャージをみて

「証拠を隠蔽しようとしたんでしょうけど、あたしは誤魔化せないわよ!」

とさながら夫の不倫の証拠を見つけたような勝ち誇りながらも怒りに満ちた声で言い放った。

その後もあちこち物色していたが、次第に飽きてきたのか、先ほど述べたアニメ視聴に落ち着いたわけだった。

「前から気になってたんだけどさ、あんたらデキてるわけ?」

ハルヒが俺とかおりを交互に見ながらぶっきらぼうに聞いてくる。

前からと言うほど俺たちはかおりとあってから月日は経っていないと思うが、

「違うよ、たまたま居合わせただけだよ。」

とたしなめにかかる。

「たまたま!?たまたまって言ったアンタ!たまたま出会った女の子が、たまたま自分の部屋でたまたま服を脱いでたまたま寝てたってわけ?ふーん、たまたまにしては随分アンタに都合の良い偶然ね!」

しまった!またハルヒの怒りスイッチ押してしまった。

こうなるとなだめるのは至難の業である。

俺が言い訳を考えていると、

「あのさぁ、さっきから思ってたんだけどさあ、なんでハルヒはそこまで突っかかってくるわけ?」

かおりがのんびりとした口調でハルヒに語りかける。

「それは!私との約束を破ったから、、、」

「ははーん、わかったぞ、ハルヒちゃん、さてはあたしとにいちゃんの仲の良さに嫉妬してるなぁー」

「ちが、」

「つまりハルヒちゃんはにいちゃんのことが好きなんだ!」

「!?」

「それは、」

ハルヒの顔が赤面して行くのを見て、俺は既視感と危機感を感じたのであった。

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