第15話

俺は今何をしているのだろう?

虚空の中を漂っている感覚があった。

これは現実だろうか、それとも夢だろうか?

もやもやとした空間から一筋の光が見えた。なぜだか俺はその光に向かって走り始めた。その先にあるものを俺は知っている気がする。

光の先に人の輪郭が見えてきた。もうすぐだ。手を伸ばせば届く。


「・・・」

俺が目を覚ましたのは8時15分であった。

今見た夢のせいか、昨夜の記憶が少しあいまいになっている。

俺は起き上がって机の方に目を向けた。昨日というか何度も繰り返された夏休みの日々の記録がそこにはあった。

「!」

俺はある事実に気づいてカレンダーに目を向けた。

「進んでいる・・」

デジタル時計に表示された日付は花火大会の翌日になっていた。

「抜け出した。」

俺は独り言をつぶやいていた。思わず口に出していた。

「やっと抜け出した!」

俺は喜びをかみしめながら何度もカレンダーを確認した。

進んでいる。時間が。やった。やったぞ。

俺は喜びのあまり部屋で小躍りをしていた。

腰に手を当ててスキップしながら部屋の中を回っていると、何かに躓いた。

俺は転びながらギョッとした。慌てて電気をつけて確認しようとする。

電気がついた瞬間、俺は衝撃のあまり言葉を失った。

「なんだ兄ちゃん、もう朝か?」

素っ裸のかおりが毛布に包まりながら目をこすっていた。

なんでかおりがここにいるのかわからなかったが、目のやり場に非常に困るので

「服を着ろ」

と言ってクローゼットから学校指定のジャージをかおりの顔にめがけて放り投げると自分の部屋を抜け出し、扉を閉めた。

(何をどきどきしているんだ俺は!)

俺は自分の感情を抑えようと深呼吸をしながら、昨夜何があったのか記憶の回路を辿っていった。

「なぁ兄ちゃん、ブルマとかないのか?」

男の部屋にそんなもんあったら真正の変態じゃねーか!というか女子でも今時持ってねーよ!

俺は心の中で激しく突っ込んでドアを背にその場にしゃがみ込んだ。

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