第9話

俺とハルヒは夜の商店街を抜けて、住宅街へと続く坂道へと歩いていた。

「それにしても、驚きだわ。」

ハルヒは少し勝ち誇ったようないたずらな笑みを俺に向けながら言う。

「アンタにも、好きな人がいるのね。」

少し感心したような、それでいて小ばかにしているようなハルヒの声を聞いて、俺はハルヒに好きな人がいることを告白したことを後悔していた。

次に来る会話も大体予想できるが、これだけは口が裂けてもいうもんかと思っていた。

「ねえねえ、キョンは誰が好きなの?教えてよ。」

そら来たぞ、絶対に言うもんか、こいつに言えば俺だけではなく朝比奈さんにも被害が及ぶのは必然だ。

「教えねえ。」

俺は顔が少し赤くなっているのを感じたが、できるだけ平生を装って答えた。

「なにもったいぶってるのよ。白状するまで帰らないわよ。」

ハルヒは腰に手を当てながら、強気な口調で言う。

こいつのことだから、ほんとに家までついてきそうだ。

「黙秘権を行使する。つーか、さっきいってた準備ってなんだよ?」

俺は自分の意志を貫き通すと同時に話題を逸らすというダブルプレイを狙いに行こうとする。

「決まってるじゃない。キョンの好きな人を呼び出して花火大会で告白するのよ。」

ゲッツーを狙いに行ったのに、大きなエラーをしてしまった。

「お前、平然と言ってるけど自分が何言ってるのか本当にわかってるのか?」

「なに?さてはビビってるな。フラれるのが怖いんでしょ?」

ハルヒは調子に乗ってどんどんマウントを取ってくる。

このままではまずい。完全にハルヒのペースだ。

「ハルヒ、冷静にきいてくれ。」

俺はハルヒの両肩をもって真剣な眼差しでハルヒを見つめた。

「なによ、改まっちゃって、ついに白状する気になったってわけ?」

「ああそうだ。だから冷静に聞いてほしい。」

俺はただ、この状況を打開したいだけだった。

だけど、この後の俺の発言がのちに俺たちの運命を大きく変えることを俺はまだ気づいていなかった。

「で、だれが好きなわけ?」

俺は決心をした。

「俺は、涼宮ハルヒ、お前が好きだ。」

「ッツ!?」

ハルヒは驚きの表情を隠しきれない。

「アンタ、自分が何言ってるのかわかってるわけ?」

ハルヒがひどく動揺し、目を泳がせながら顔を赤くしていた。

ここまできたらもう引けない。

「ああ、そうだ、俺はお前のことが好きだ。」


「今夜が山場です。くれぐれも選択は慎重に。」

夕方、帰り際に古泉に言われた一言を思い出しながら、俺は家路についた。

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