涼宮ハルヒの妄想

第7話

俺は今、夢を見ているのではなかろうか？そんな錯覚に陥るほどの衝撃を俺は朝比奈さんの言葉から受けていた。

「キョン君と二人っきりになりたかったの。」

俺が興奮のあまりしどろもどろしていると

「ごめんなさい。困らせちゃいましたね。」

「いえ、むしろうれしいです。その、朝比奈さんからそんなことを言われるなんて。」

「あの、お話したいことがあります。」

いつにもなく真剣な目つきだな。俺はそう思った。

これってもしかして、

「涼宮さんのことなんですけど、」

「あの、私なんか変なこと言いました？」

「いえ、朝比奈さん、あなたは何も悪くはありませんよ。」

俺は今日暗黒界に落ちる日なのだろうか。

「キョン君、さっきビラ配りしながら涼宮さんのこと考えてましたよね？」

未来人ていうのは人の心まで見通せるのだろうか。

「なんとなく、わかりました。でもそのことは涼宮さんに話してはダメなんです。」

「そのこととは？」

「キョン君が気づいてしまったことです！」「涼宮さんに言ってはいけません！」

「それを言ってしまうと、未来が変わってしまうとかですか？」

「それどころではありません！禁則事項なのでこれ以上は言えません！」

「すみません、興奮してしまって。」

朝比奈さんが困った顔をしていたので、俺もすっかり困ってしまったのだが、

「わかりました。さっき気づいたことはハルヒには黙っておきます。」

ありがとう。消え入りそうな声で言った彼女の表情は少し晴れやかだった。

ハルヒのもとへ戻ってきたた俺たちは、ハルヒがカウンター席に寄りかかりながらこの店のマスターと話をしているのを目にした。

「遅い、あほキョン！いつまでイチャイチャしてたわけ？あーやだやだ。これだから男は」

「そういうお前はどうなんだ？いい男でも捕まえたのか？」

「そんなことはどうでもいいの！もう交渉はすんだんだから！」

「なんの？」

「バイトよ！バイト！キョン、明日からここでバイトするわよ！」

翌日、俺たちは部室に集合していた。いや、集合させられていたというほうが正しいか。俺や朝比奈さんは事情を知っていたが、長門は初めてバイトのことを聞いたのにわかった。と平坦な声で返事をするだけで、何の抵抗もなかった。

そして、もうひとり、

「それは、面白そうですね。いいでしょう。やりましょう。」

そう言い放ったのはSOS団の団員である古泉

いつきであった。

こいつは基本ハルヒの言動に反対しない、長門のように干渉しないのではなく、積極的にハルヒの意見に賛同していた。

俺たちSOS団の夏がここに始まろうとしていた。