第4話
人生というものは、なかなかうまくいかないものだ。有名進学校に進学しても落ちぶれて、浪人したり、コンビニで飲みたい缶コーヒーの銘柄だけが売り切れだったりする。この世に神様がいるなら、俺は猛烈に抗議がしたい。普通の人生を送りたい俺が、なぜ今駅前でビラ配りをしているのか。答えは神様に聞かなくてもわかる。俺はハルヒに連れられて、ここでビラを配っていた。
高校生が制服姿でビラを配っている姿は、一見すれば青春のさわやかさみたいなものを連想するやつがいるかもしれない。しかし、俺にはどう頑張ってもそんな甘酸っぱさが連想できないでいたのはビラに書いてある赤文字だった。
寄付金求む。友達のいない友達に友達を!
いったい何が悲しくて、こんな自虐的なビラを配らなくてはいけないのか。
それを説明するにはいささか時間がかかりすぎるのでかいつまんで話すことにする。
俺はハルヒに引きずられながら今度はどこに行くつもりかを尋ねた。
「決まってるじゃない!会社設立のための資金を銀行から融資してもらうのよ!」
長門が言う通り、こいつの精神状態は普通じゃないみたいだ。
いったいどこの銀行が、高校生に会社設立のための融資をしてくれるというのだろうか。そもそも、未成年は銀行からお金を借りることはできないことを俺は少ないながらも常識の範囲から知識を絞り出し、ハルヒの説得に当たった。
するとハルヒはそれなら寄付金を募ると言い出して聞かないので、仕方なくSOS団の部室のパソコンでビラを作成し、近所のコンビニで印刷した。
結構な枚数をカラーコピーしたので、俺の懐は初夏だというのに、氷河期に突入しそうな勢いであった。
はぁ、こんなことに貴重な時間とお金を使っていていいのだろうかと、ため息をついていると、ハルヒが大股で近づいてきた。
「アンタ、やる気あるわけー?あんたみたいに友達がいない子たちのために寄付金をあつめてるのよ。もっとシャキッとしなさいよ!」
「あのなあ、図書室でも言いそびれたが、別におれは友達がいないわけじゃねーんだよ。」
「でもあんた、SOS団のみんな以外といるとこ見たことないわよ!」
「お前は、俺の監視係か何かか?っていうかお前ほとんど休み時間教室にいないくせに、なんでそんなことがわかるんだよ?」
「あーもーうるさい!うるさい!そんなことはどうでもいいの。さっさっとビラ配りなさいよ!」
俺は負けじとハルヒと言葉のラリーの応酬をしようと試みたが、美少女に話しかけられて、サーブを打つ前にラケットをしまった。
「あれ、キョン君と涼宮さんじゃないですか。こんなところで何をしているんですか?」
メイド服を着た朝比奈みくるがそこにはいた。
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