GOOODNY!!!

エリー.ファー

GOOODNY!!!

 このまま、生きていくのが怖いから、私は自分のことを無視するようにしている。

 考え方、思考。それらが編みあがって自分が出来上がっていることを自覚できるのに、できる限り遠くに置きたいと思っている。

 人の形をしているだけだと思われてしまっては、損だ。

 だけれども。

 私は、その人の形をした言い訳として現在を歩んでいる。

 見限ってくれる社会の方が圧倒的に私という存在を理解していて、私の近くに立っている人間ほど、大きな勘違いをしている。私は、何かになれるほど強い人間ではないのだ。でも、ずっと、遠くを見据えて歩くことができるくらいに、心の強い人間ではある。

 才能はあるのだ。

 悲しいくらいにある。

 誰にも信じてもらえないくらいにある。

 このまま、おやすみ、という言葉を吐き出して、何もかも有耶無耶にしてしまいたい気分に苛まれている。きっと、私だけではないのだ。仲間は溢れるほどにいるはずだ。関係をもたず、どこか遠くで水たまりの中に肩まで浸かって嘔吐を繰り返しているところが容易に想像できる。

 私から始まる物語などない。

 私は最初ではないのだ。

 何かの途中でしかない。

 歩んでいく道のりの険しさを少しでも他人に分かってもらおうとする矮小な存在である。

 私から始まって、私で終わるのは私の人生だけである。

 しかし、私の人生は、何かの途中としてしか存在することができない。

 言われても帰ることができない。

 けなされても還ることができない。

 分け隔てなく接してもらえても変えることができない。

 私の手の中には何もない。

 ただ、持っているすべては。

 この血肉に溶けている。

 あぁ、気が付けば夜明けである。

 吐き出して思う、自分の言葉のみずみずしさよ。

 誰かに語りたくなってしまう、自分の心の弱さよ。

 言葉だけではなく、態度と姿勢で示す、自分の思う未来の形が音で表現できるという悲しさよ。

 いずれ、私は。

 私は、どこかで。

 その、いずれが。

 今この瞬間で。

 見えた朝日とともに。

 自分の影が伸びていくのが分かる。

 影の先が、私が最初に立ったところにたどり着く。

 最初から最後まで築き上げた物語は、こうして完結する。

 そして、すぐに新しい物語が始まる。

 覆っていた雲が消えるというよりも、雨という日差の中に身を置きたくなってしまう、南半球の情熱を体に受けて立ち尽くす自分の信じる表現に称賛を。

 もしも、私だけではなく、不幸の連鎖によって築き上げられた何か大きな建物のようなものがあるのなら、そこで表されるものだけがすべてではないか。

 音が二つ。

 音が、一つ。

 音が、ない。

 踊れ。

 踊って帰れ。

 置いて行け。

 お前のリズムを置いて行け。

 並べろ。

 そこに、凡人の魂とプライドを置いて行け。

 踊れやおんどれ。

 踊れや、踊れ。

 踊れや、よいしょ。

 踊れや、踊れや。おんどれや踊れ。



「もしも。もしも、ですよ」

「なんだよ」

「ここに、また犯人が戻ってきたらどうするんですか」

「捕まえて袋叩きにしてやるよ」

「やめましょうよ」

「なんでだよ」

「だって、親分も殺されたんですよ。僕たちじゃ無理ですって」

「そんなことないだろ。やってみなきゃ分からないだろうが」

「分かる分からないの問題じゃないですよ。この時点で、もう僕は自分が太刀打ちできないような魔物に戦いを挑もうとしてるって肌で感じてるんです。お願いします。ここでやめましょう。何か動こうとした。親分の仇をとろうとした。それだけで十分じゃないですか。音が聞こえてこないうちにやめましょう」

「音って、何の音だよ。足音か」

「違いますよ」

「なんだよ」

「鈴の音ですよ」

「鈴って、体に付けて歩いてるのか」

「どうやらそういうことみたいですよ」

「なんだそりゃ」



「間違えてるような気分になってきました」

「最初から、間違えてるだろ」

「ですよね。じゃあ、帰りましょうよ」

「この街で、組織の一員になろうなんて考えも、実際になったという事実も、全部、間違えてるだろ。そりゃそうだ。でも、もうやめられねぇだろ」

「そんな」

「ほら、鈴の音が聞こえたら覚悟を決めろ。逃げられるわけねぇんだ。そりゃ、その犯人からじゃねぇ。俺たちは、この場所で自分の生き方を測定しないといけねぇ」

「いいです。自分のランクとか、そんなもの知りたくもありません」

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