ゲーム5:キュンです動画対決①
かず『こんちは!
いや待て、誰だよ。まだ入ってくんのかよ。ちょっとこれはさ、無くない? な? これは無いと思うけどさ。
健吾はイライラして、メッセージを送った。
健吾『お前だれ』
かず『だから、五十嵐一樹って言ってるじゃないっすか』
健吾『それは分かってる。お前の存在もよーく知ってる』
勝太『おい、五十嵐一樹ってあの五十嵐一馬先輩の弟じゃないの。なんで君が』
かず『そりゃ、鈴川早織キュンが好きだからでしょう』
『うっせ、黙れボケ。今すぐ抜けろ、吐き気がする』と書いて、送信ボタンを押しかけたところでやめた。
今度こんなものを送ったら、伊織先輩に除名されるに決まってる。
そんなことが起こったら新人どころじゃなくなる。
健吾『キュンって、やめてくれ、おい』
かず『なんでっすか? 僕が射止める小鳥ちゃんはキュンでしょ。普通』
健吾『いやでもさ、他のメンバーはそうじゃないから……』
勝太『ま、いいじゃん。人それぞれってことで』
健吾『勝太は心が広くていいよな』
弘人『おはよー。ちょっと昼寝してたわ』
弘人『ところで、かずって増えてるんだけど、君誰?』
かず『ちょ、会話履歴見てないんすか。五十嵐一樹っすよ』
弘人『一樹?! お前なんでこんなとこにいんの? どうやってここが分かったんだよ?』
健吾『その前に何でお前は奴のことを呼び捨ててるんだ』
弘人『だってさ、こいつクラスメイトだし』
勝太『マジ。そゆことね』
健吾『ところで、なんでこいつが入ってきてるんだ。伊織先輩は良いってったのか?』
かず『そうっすけど』
勝太『ホントに』
かず『ガチっす』
健吾『嘘つくな、今すぐ出てけ。お前はこれに入る資格はないだろが』
弘人『なんかどういうことか分かんなくなってきてるんだけど……』
伊織は自室でニヤニヤしながら『誰が早織を自分のものにできるか競うグループ』を見ていた。
さすがは気の短い、愛人を射止めるために必死の男子たち。
案の定パニック状態になっている。
一樹を入れたのは、当然私だ。
一樹の兄、一馬にこの話を持ち掛けたのだ。
***
「ねえ、一馬君。妹のクラスメイトからさ、一樹君がうちの早織を好きだって情報を聞いたけど』
「ふーん、そうですか」
あんまり興味なさげだった。
「またまた。弟のことなんだからもうちょい興味持とうよ」
「んなこと言ってもな……もうじきバスケ部はじまるし」
さらっと話題を転換。
「もうちょっとだけ、良いじゃん?」
生徒会室はしんと静まり返っている。
伊織は少し照れて赤い顔をしているのを必死に悟られないように話していた。
「だからさ、ちょっと一樹君と会わせてくんない? いいでしょ? お願い!」
「……まあ、良いけど」
やっぱり女子のお願いには頭を縦に振るしかできないのだ、男という生き物は。全く、一馬君もまだまだかわいいもんだ。
「ちょっとさ、一樹君の電話番号教えてくれない?」
「いいけど……そうか、一樹が。まあ、早織ちゃんだもんな」
一馬は伊織に電話番号を教えた。伊織はその番号を紙の切れ端にメモを取る。
「オッケー、ありがと。じゃね。バスケ、頑張れ!」
最後は最大限のエールだ。恋愛の基本だ。
「ああ、ありがとう。鈴川は、自分の恋愛をとりあえず頑張ることだな」
一馬は皮肉な一言残して生徒会室を出て行った。
***
その日下校してから、電話でこのグループのことを話した。
すると、ぜひとも入りたいと言い出したのだ。
私と一馬、早織と一樹なら五十嵐と鈴川がいい感じに結びつく。母と一馬の母も喜ぶのではないだろうか。彼らはいわゆる“ママ友”なのだ。
なにより、早織と一樹が結び付いてくれたら私たちの関係もより進展するハズだ。
そのため、一樹を入れたのだ。
さて、私もそろそろメッセージを打とう。
伊織『というわけで、私が許可したんで、仲良くしてやってー。かず、ファイト』
弘人『あ、伊織先輩。一樹にひいきするんですか』
伊織『そんなことないよ。一樹はゼロポイントから始めてもらうんでね、よろしく』
伊織『どこから知ったのか、一樹が私の愛しの早織が好きだというからじゃあ入ればって入れてやったの』
健吾『はぁ……仕方ない』
勝太『ま、ボコすんで。よろしく』
かず『よろっす』
伊織『じゃ、次のゲーム発表するよ』
伊織『ずばり、キュンです動画対決!!』
健吾『んだそれ。なんか聞いたことねぇな』
勝太『うわ、なんとなく分かってきた』
かず『僕、ちょっと自信ないっス』
弘人『うわ、僕こういうの無理かもしれない』
伊織『ほらほら! ルールを聞きなさいっ』
伊織『ルールは簡単、私との個人トークの画面に、撮った動画を送ってきてください!』
健吾『どんな動画』
伊織『それぐらい分かるでしょ……まあいいよ。ズバリ、早織がキュンキュンするような動画を撮ってきて。服装とかあるもので整えて、カッコいい仕草とかして、なんか喋って。それで画面に早織がいると思ってほっぺツーンとか、いや、もうチューとか? キャー!』
勝太『……で?』
伊織『まあ、早織がキュンとしそうな動画を撮って、私に送ること! 以上!』
伊織『じゃ、スタート!!』
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