ゲーム4:鈴川早織クイズ②
弘人は闘志をグラグラと燃やしていた。
(これ、頭脳派は勝てるんじゃない……?)
自分が頭脳派なのかはさておき、クイズに取り掛かる。
『qm.Excellent/myquiz/suzukawa-saoriq』
というURLからサイトへ入る。
(あれ、ちょっと“クイズメーカー・エクセレント”って聞いたことあるな……)
学校内で一度このクイズを使ってクイズを出し合うのが流行ったことがあった。
「確か、これ五十嵐先輩が作った……」
バスケ部のエースの五十嵐一馬だが、実はITに通じていて、こういうのもたまに作るそうだ。
一馬が作ったこのサイトは結構ウケて、クイズ作成サイトの定番になっている。
(いや、そんなことは別にどうでもいい)
弘人は心臓にもやっと来るものを振り払うように、『クイズにチャレンジする!』ボタンをクリックした。
『第一問:鈴川早織のかわいいカワイイお姉さんは誰?』
(いきなりこんな問題かよ……)
タイピング検定一九六位の実力で鈴川伊織、と素早く打ち込む。
『正解!』
ピンポンピンポーンという効果音と共に、『かわいい姉ちゃん、鈴川伊織です!』というあざとい女の声が聞こえてきた。
『第二問:鈴川早織の憧れる先輩は?』
①に五十嵐一馬、②に鈴川伊織、③に
「は? え、兄ちゃん……?」
と、テレビでゲームをしていた要吾がふと振り向いた。
「どうした、健吾」
「いや、別に」
「は? んだ、嫌な気分だな。言いたいことをはっきり言うのが男だろ?」
「あ、ああ……」
ここは、一番無難な①を選んでおいた。
『正解!』
ピンポーンの音を最後まで聞かず、健吾は次の問題へジャンプした。
『第三問:鈴川早織の好きな男子のタイプは?』
①に優しい系男子、②にヤンキー系男子、③にお笑い系男子、④にスポーツマン系男子、⑤にミステリアス男子だった。
これは……早織は俺のことを見ているのだろうか。見ているのだとしたら当然④だが……もし勝太なら③、弘人なら……①か⑤。
(クソッ、伊織先輩め)
心の中で悪態をついた。これは完全に三人を遊んでやろうという意思が透けて見える。
歯をギリギリと鳴らしながら、俺はボタンを選んだ。
(⑤のミステリアス男子ってのはさすがに分かんねぇよな。これは伊織先輩がズルい)
勝太ははぁ、と溜息をついていた。
どう考えても勝太はお笑い系男子だ。早織はデートを申し込んでくる。それならお笑い系男子で決まりだろ、と思ったのだが、それは違うのだろうか。
伊織先輩の見当違いなのか、早織が本当に俺を見ていないのか……。
答えがどちらにしろ、今は問題を解くしかない。
『第四問:鈴川早織は結婚をしたい派? したくない派?』
またまた。そんなこと分かるはずない。
勝太は直感を信じ、『したい派』をクリックした。
『正解!』
『第五問:鈴川早織は今まで何度告白されてきた?』
……これは難しい質問だ。かなり。
解答は記入式になってる。
一桁なのか、二桁なのか。正直、あのかわいさを見たらめちゃめちゃありそうな気がするが、縁起がいい数にしておいた。それは、つまり無限のインフィニティ―を逆にした八だ。
『残念……』
『第六問:鈴川早織の今までの彼氏の数は何人?』
手をバキバキ言わせながら、健吾は目を吊り上げる。
(今までの彼氏の数……)
さっきの問題の答えは十四だった。
(告白されたのがこの数ってことは、付き合ったのは結構少ないんじゃ……)
だが、そうだとすると、俺が告ったところでフラれる確率が高いという子となんじゃないのか?
それを認められない自分がいるのが腹立たしかった。
それでも、今はこれを正解しないとダメだ。
少し体を震わせながら、健吾は入力した。
『第七問:今、鈴川早織は彼氏持ち?』
さっきの問題の答えは四。
伊織先輩らしい、嫌らしい問題が続く。
「これ、彼氏持ちだったらヤバいじゃん。伊織先輩なら彼氏持ちって書くかもしれないけど……」
弘人は『NO』を選択する。
『正解!』
(良かった……)
しかし、その下にはある一言が添えられていた。
『けど、もうすぐ彼氏持ちになるかも?』
(嘘だろ……?)
思わず弘人は眉間にしわを寄せていた。
『第八問:鈴川早織の理想のデートは?』
そんなの分かるか、とツッコんでやりたいのを必死にこらえる弘人。
『①ショッピング、②スポーツ、③遊園地、④映画、⑤食事』
ということだが……早織ならスポーツが好きだから②だろうか。
だが、確か早織は控えめな感じが良いと言っていた。例えばカフェ――。
と、女子の輪の中で話しているのを聞いたことがある。
答えは⑤だ。
『正解!』
勝太は思わず吹き出していた。
『第九問:鈴川早織にとって恋愛とは?』
(そんなの、伊織先輩だって分からないだろ)
早織にとって恋愛とは……分かるわけがない。
これ、選択問題じゃなくって、記入問題になってるし。
こういう時は、聞くしかない。つまり、早織に助けを求めるしかない。
勝太はスマホで早織とのトーク画面を開いた。
しばらく手を動かして、勝太は文字を打ち込んだ。
『自分が一番好きだと思う人と手をつなぐこと』
と。
健吾はイライラしていた。
さっきの問題は分かるわけがない。選択式にしろよ。
『自分が一番好きだと思う人と手をつなぐこと』
(あとで、伊織先輩に抗議してやろう)
そんな思いを頭の片隅に追いやって、最終問題のページを開いた。そして、目を見開いた。
『第十問:最終問題ダヨ! 下の三人の中で、早織が一番好きなのは誰?』
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