第3話

 頭上に降りかかる光りに、目を覚ます。


とっくに正午は過ぎているようだった。


何かをフライパンで焼く臭いがする。


「おー。チビ、目が覚めたか」


 ディータだ。


ハムと卵を焼いている。


ゴミというか衣類というかガラクタというか、そういうもので埋め尽くされたベッドの脇に、そういうもので半分埋もれたテーブルがあった。


ディータは、そのテーブルに乗っていたものを、腕のひとかきで下に落とすと、フライパンを置く。


「まぁ食え」


 そう言って、やはりモノに半分埋まったソファに、腰を下ろす。


すぐ横にあった紙袋から、パンを取り出した。


それをちぎると、半分を俺に寄こす。


「名前は?」


「ナバロ」


「そっか。俺はディータだ。よろしくな」


 マズくはないが、特に美味くもないものを、腹に押し込んだ。


目の前の食い物がなくなった時には、すっかり午後の日差しに変わっていた。


「で、お前はこれから、どうするつもりだ?」


「……。適当に過ごす」


「はは。なんだそれ」


 ディータは立ち上がる。


「ガキのくせに、生意気な口利いてんじゃねーよ。別に行く当ても、ないんだろ? ちょっと俺の仕事を手伝わないか」


「いやだ」


 彼はニヤリと口角を上げる。


「おいおい。一宿一飯の恩義を忘れるなって、言葉を知らねぇのか」


「関係ないね。お前が勝手にやったことだ」


 俺もソファから立ち上がる。


とにかく散らかりまくった、汚い部屋だ。


出口までの床に、足の踏み場がない。


ディータの腕が、ドカリと俺の肩に回った。


「そんな、つれないこと言うなって。いいからついて来いよ」


「離せ!」


「はは。まぁそう言うな」


 子猫のように持ち上げられ、運ばれる。


俺は顔を真っ赤にしているが、恥ずかしくて逆に動けない。


ディータはドアを蹴破ると、外に出た。


「占いの仕事だ。お前もちょっとは、出来るだろ。出て行くにしても、小銭くらい稼いでからにしたらどうだ」


 やっと下ろして貰える。


ディータはこちらを振り返ることもなく、歩き始めた。


なんだよ。クソ、仕方ないな。


ちょっとだけなら、どんなもんだか、様子くらい見てやってやってもいいか。


楽に金が稼げるなら、当分のものは必要だ。


ディータは俺に背を向けたまま、しゃべっている。


「アレだ。どうせグレティウスに行きたいとか、思ってんだろ?」


「行きたいんじゃない、行くんだ」


 昼下がりの雑踏を、のんびり歩いてゆく。


表通りの店は、どこも大勢の客が出入りしていた。


「やっぱガキの考えることは、たいてい一緒だよな。お前、どうやってグレティウスに行くのか、知ってんのか?」


 場所なら知っている。だが……。


「フン。さすがに分かってるか。大魔道士になりたいって?」


「なる」


「フフ」


 ディータは小さく笑った。


石畳の道を、噴水のある広場に出る。


そこを通り過ぎても、なお歩いてゆく。


「グレティウスは、大魔王エルグリムの、かつての居城跡だ。今は封鎖されて、簡単に入れるところじゃない。しかもそのどこかに、『悪夢』が眠ってるって話しだ。そりゃライノルトだって、放ってはおかない」


 ライノルト、かつての田舎町。


今は新政府の中央議会が置かれる、事実上の首都だ。


「そのライノルトも、今や大予言師ユファさまの言いなりだ」


 ディータはくるりと振り返る。


「だから、今からなるとしたら、何でも屋の魔道士より、予言師。つまり、占い師が狙い目ってことだ。魔道士なんてやめて、俺と一緒に占い師やろうぜ」


「やだね」


 ユファか。あの忌々しい、クソガキめが。


アレは、勇者スアレスに祝福を与えたことで、突然有名になっただけの、ただの詐欺師だ。


当時五歳だったガキの予言なんぞに、なにがある。


周りに乗せられて祀り上げられた、ただの飾りものだ。


それが今や、大賢者さまとして政府の中央にいるとは、片腹痛い。


「『悪夢』を探すにしたって、どれだけライノルトの連中が血眼になってても、見つけられないんだ。それを探り当てるためにも、予言師は必要なんだよ」


「ならばなぜ、ユファ自身が見つけない。『悪夢』を見つけられない時点で、アイツはクソだ」


 そう。俺の足元にも及ばない。ディータは笑った。


「あはは! やっぱお前、面白いな。じゃあお前は、見つけられるってのか?」


「見つけるさ。簡単だよ」


 俺が隠したんだ。ディータはそんな俺を、ニヤリと見下ろす。


「そうか。ならグレティウスを守ってる連中も、きっとお前を受け入れるだろうな。大歓迎だよ。待ってましただ」


 通りを曲がる。


目の前に開けたのは、立派な市場だった。


「だがそこまでの、道のりは長いぞ。ほら、ここが俺の仕事場だ。お前はここで、歌でも歌うか?」


 数十メートルの通り両脇にテントが張られ、様々な屋台が並んでいる。


野菜に肉、アクセサリーや帽子、スープやパンの店もあれば、様々な効能の魔法石を売っている店もある。


「ここと、もう一本隣に市が立つんだ。どこか人目につきそうな場所で、空いているところを探すんだよ」


 賑やかな通りを、一通り見て回る。


ディータは休業日の工場裏にある、小さな階段前で立ち止まった。


「この辺りがいいかな」


 ポケットから煙草を取り出すと、火をつけた。


魔法石と薬草の混じった、独特な紫煙が立ちこめる。


「これは……」


「まぁ黙って、見てろって」


 ディータは、カードを取り出した。


魔法石と薬草を混ぜた絵の具でイラストを書き付けた、一種のマジックアイテムだ。


魔法を帯びたそれを、宙にばらまく。


カードは美しい弧を描いて、キラキラと輝いた。


「さぁさぁ。何でも占う占い師だよ。魔法のカードが、あなたの未来をピタリと当てる。捜し物も結婚相手も、何でもお任せあれ!」


 ふわりと風を巻き起こす。


煙草の煙はわずかな魔力を含み、通りかかった人々に、幻覚を見せる。


虹色に輝く無数の蝶が、ひらひらと羽ばたいた。


「まぁ、素敵な魔法ね。私もひとつお願いしようかしら」


「さぁどうぞ、こちらへお座りなさい」


 くだらない。


これだから、魔道士がバカにされるんだ。


「俺はもう行くぞ」


「おいおい、ちょっと待てよ。お前も占いを手伝え。そういう約束だろ?」


「そんな契約を交わした覚えはない」


 立ち上がる。


俺は一刻も早く、グレティウスへ行かねばならない。


「待てって!」


 ディータの手が肩に触れた。


俺はそれを魔法で弾き返す。


ついでに幻覚を見せる煙草の煙も、かき消した。


「痛って! チッ、クソガキが。下手に出れば、つけあがりやがって」


「お前のような場末のエセ魔道士に、世話になるつもりはない」


 ディータが呪文を唱える。


途端に周囲は暗くなった。


幻覚魔法だ。


俺も煙草の煙を吸っている。


閉ざされた暗闇の中で、ディータは銃口を向けた。


「さぁ、大人しくするんだ。悪いようにはしないさ。お前がグレティウスに行きたいってんなら、連れてってやる。だがそれは今じゃない。分かるな」


「今じゃない?」


「あぁ、そうだ。今じゃない」


 ふん。笑わせる。


「悪いが、お前に頼るつもりは一切ない」


 呪文を唱える。


この煙草の煙が幻覚を見せるなら、俺の体内に入り込んだ、その成分ごと全て消し去ってしまえばいい。


『囚われし魔法石の粉よ。さぁ、空高く飛び上がれ、お前達は自由だ!』


 視界が歪む。


真っ暗な異空間に、現実の市場の風景が、割けたように入り込む。


この呪文では無理ってことか? 


ならばもう一度、強く命じればいい。


『飛び上がれ!』


 そのとたん、視界の闇は溶けだし、一気に空へ駆け上がった。


正しい世界を取り戻す。


「なっ、そんな呪文、聞いたことねぇぞ。何でそんなんで有効なんだ!」


 いつの間にか、周囲に野次馬の人垣が出来ていた。


同じ幻覚を見ていたのか、魔法が解けた瞬間、歓声と拍手が巻き起こる。


「ちっ、見世物じゃねぇぞ」


 ディータは、次の呪文を仕掛けている。


魔法石の粉を塗りつけたカードが宙を舞う。


コイツが占い師? 


ただ未来を嘆いているだけの、クズな魔道士には見えない。


随分手慣れているようだ。腕もいい。


「はは。コイツは面白くなってきたな。ガキだと思ってナメてちゃ、やられるかもな」


 ニヤリと笑みを浮かべた。


「そうこなくっちゃ。この俺を、ガッカリさせないでくれ」


 カードが魔方陣を描く。


見たことのない陣形だ。なんだこれ? 


舞い上がる砂埃が、足元の自由を奪う。


あぁ、違う。


ケンカ慣れしてんだ、コイツ。


ディータは胸の前で印を結んだ。


黒味がかった緑の目が、鮮やかに燃え上がる。


「本気で『悪夢』を狙うなら、これくらいはやってもらわねぇとなぁ!」


 魔力解放。


ディータの体は、一瞬にして深緑の炎をまとう。


その全てを吸収したと思った瞬間、増殖したカードが襲う。


俺は飛び交うその一つ一つを、丁寧に避けた。


飛んでくる軌道を、魔法でわずかに変えてやるだけでいい。


呪文を唱える。


『風よ、この身に纏う守りとなれ』


 らせん状の風を、足元から自分の体に巻き付けた。


ディータはすぐに、次の呪文を唱えている。


そのカードの一つが、姿を変えた。


これは煙草による幻覚なんかじゃない。


「はは。なるほどね」


 このカードたちは、ディータの使い魔だ。


主の唱える呪文によって、自在にその姿を変化させる。


「ならば、遠慮なく行こう」


 相手が本気でかかってくるなら、こちらも本気で返さないと失礼だろう? 


こういう本物の魔道士を相手にするのは、この体に生まれ変わってからは、初めてだ。


ディータの呪文で、カードは三つの頭を持つ大蛇に変化した。


俺は右手をかざす。


破壊魔法? 


それとも、全部のカードを一気に吹き飛ばす? 


いやいや、それじゃ面白くないだろう。


『石は石の元へ。木は木の元へ帰れ』


 その呪文に、膨張し、そのまま弾け飛ぶかに見えた蛇は、再び形を取り戻した。


ディータの魔力をそのまま形にした蛇は、赤黒く光り輝く。


「ふん。そんな単純高等魔法で言うこと聞かそうなんて、エルグリムでも無理だろうよ」


 ディータの呪文。


『踊れ。お前の望むままに!』


 大蛇の体は三つに裂け、俺に飛びかかった。


「見た目通りのガキじゃないことを、ここで証明してくれ」


 鋭い牙が肌を切り裂く。


まとうつむじ風で振り落としたものの、これでは動けない。


「案外退屈だったな。子供は家に帰りな」


 ディータは腰の拳銃を抜いた。


その銃口を、真っ直ぐに俺に向ける。


引き金を引いた。


「その判断はまだ早い」


 飛び上がる。


背面に飛び、弾丸と蛇を避けた。


着地したついでに尾を掴み、奴に向かってぶん投げる。


ディータはそれを肘で受け止めると、そのまま体に吸収した。


自分の魔力を外に取りだし、操る術だ。


そういえばそんなことが出来る連中も、腐るほどいたな。


「目の色を分散させているのか。それなら魔力の深さは、簡単には測れない」


「器用だろ? こんなもんじゃないぜ」


 ディータが呪文を唱える。


二匹の蛇は、狼へと姿を変えた。


赤黒く魔法で光るその二頭は、同時に大地を蹴った。


とりあえず先に、その一匹を弾き飛ばす。


群衆の中に向かったそれは、すぐにディータが回収した。


残るは一匹。


「反撃してこいよ。どうして何もしない。まさかそこで立ってるだけが、精一杯ってわけでもないんだろ?」


 どうしよう。


何の呪文で対抗しようか。


昔の使い魔を出す? 


魔力を擬態化した、コイツの使っているようなものではない、本物のモンスターだ。


どこにいったっけ。


召喚したところで、今さら言うこと聞いてくれるかな。


「そういえば、俺にもちゃんとした使い魔がいたなーって」


 俺は静かに目を閉じ、印を結ぶ。


「お前に使い魔? マジかよ。モンスターと契約を結ぶには、それなりの宣誓か能力が……」


「そうだよ。お前のその、なんちゃって使い魔じゃない、本物の魔物たちだ」


 呪文を唱える。


『この声に覚えのある者どもよ、我の元へ集え。いにしえの約束を果たすときが来た』


 魔力を帯びた呪文は言霊となり、世界へ広がってゆく。


大地が揺れ始めた。


「なっ、お前。そんなセリフ吐いたところで、どんなヤツが来るってんだよ」


 街全体が揺れている。


それを覆う、空気までもがふるえた。


予兆だ。


これはエルグリム復活の予兆として、再び世界に轟き、恐怖として響き渡るだろう。


静かな風が、目の前を横切る。


「……。ダメか」


 だがそれは、一瞬にして平常を取り戻してしまった。


返事はない。


あぁ、俺が死んだ時に、一緒に全部、狩り尽くされてしまったんだな……。


「お、驚かすなよ。テメー!」


 周囲を取り囲む野次馬までもが、怯えから解放された、安堵のため息をもらす。


魔力によって形作られただけの使い魔は姿を消し、それを呼び出すカードだけが地面に落ちていた。


「おいおいどうした? 俺のまでビビって、消えちまってんじゃねぇか」


 ディータはそれを拾うと、もう一度印を結ぶ。


「お前まさか、本気で魔物たちを呼び出せるとか、思ってたワケじゃないよな」


「呼び出せる……。と、思った」


「ふん。その魔力の強さは認めるが、本当の使い魔ってのは、呼び出す前に契約が必要なんだ」


「知ってるよ。一度は従えないといけない」


「懐かせないとな」


「うん」


 ディータは印を結ぶために組んだ手の奥から、視線をチラリとのぞかせた。


「は? マジで呼び出せるとか、思ったのか?」


 魔法使いの目が、じっと俺を見つめる。


「あぁ、そうだよ」


 実に残念だ。


「本気で?」


「本気で」


「マジか」


「マジだ」


 俺たちをぎっしりと取り囲む群衆の奥から、不意に騒ぎ声が聞こえてきた。


それらを蹴散らし、銀の甲冑が飛び込んでくる。


聖剣士たちだ。


「なんだこの騒ぎは! って、またお前かディータ。いい加減にしろ」


「あぁ? 今回のは、見世物じゃねえよ。どっか行ってろ」


「あれだけの魔力を放出しておいて、知らんぷりが出来るか」


「やかましい。手出しすると、タダじゃ済まねぇぞ」


 その言葉にたじろぐ聖剣士たちの中で、ただ一人が剣を抜いた。


はめ込まれた石に、呪いがかかっている。


魔剣だ。


「いつでもどこでも、この街じゃお前が騒ぎの原因だ。いい加減、大人しくしろ」


 その男はチラリと俺を見たあとで、すぐに視線をディータに戻す。


「あの地震はなんだ。お前がやったのか」


「あぁ? ……。あぁ、まぁちょっと新しい呪文を試してみたけど、あんま上手くいかなかったなぁって話しだ」


「なぜ街中で騒ぐ。あれほど迷惑はかけるなと……」


「所詮しがない占い師だ。日銭を稼いでなにが悪い」


 この聖剣士の目は、黒っぽい茶色をしている。


魔道士ではない。


「今度騒ぎを起こせば、次はないと警告してあったはずだ。覚悟は出来ているだろうな」


 聖剣士は呪文を唱えた。


魔力を吸収するよう石に指示を出している。


剣にはめ込まれた魔石が黒く光った。


こんな剣を扱えるのは、ただの聖剣士ではない。


そしてその剣も、ただの剣ではない! 


構えた剣が宙を斬る。


ただそれだけで、ディータの張った結界が崩れてゆく。


「もう魔道士の時代は終わったんだ。大魔王エルグリムを倒せると予言した、ユファさまから祝福を受けた、吸魔の剣だ。お前らごとき占い師風情が、俺に勝てると思うな」


「そういえばお前とは、一度ちゃんと勝負しないといけなかったな」


 ディータが呪文を唱える。


攻撃魔法だ。


小さな火の玉が、聖剣士に襲いかかる。


その剣が火に触れた瞬間、炎は刃を伝い魔石に吸い込まれてゆく。


「さぁ、今度こそ牢に繋がれ、正当な処罰を受けるがいい」


 剣士の呪文。


魔石の色が黒から赤に変わった。


とたんに剣は、炎に包まれる。


相手の魔力を奪い、それを自らの力に変える……魔剣だ。


「この剣の前では、どんな魔法も意味を成さない。お前もいつまでも、手品に夢見る大魔王ではいられないぞ」


「魔法は手品じゃねぇ」


「もちろん手品じゃないさ。だがその使い方を、間違えるなと言っている」


 ディータは呪文を口ずさむ。


相手の動きを封じる魔法か? 


俺は足元に落ちていた小石を拾った。


「所詮、実体である肉体の動きには、勝てないと言ってるんだ」


 聖剣士は、炎の剣を構える。


『蜘蛛の巣よ、魔剣士の動きを止めろ』


 ディータの手から、緑の網が放たれる。


剣士は魔剣を振るった。


その炎は、蜘蛛の巣を焼き落とす。


刃の切っ先が、ディータの首元を捕らえた瞬間、俺の投げた石はその刀身を弾いた。


「ふん。確かにその剣は、大魔道士エルグリムを倒した剣のようだ」


「……。魔法使いの子供か……」


 その剣士は、俺を見下ろす。


「子供でも、コイツに加勢するなら容赦はない」


 なにが聖剣士だ。魔剣だ。


お前のその剣こそ、呪われていることを教えてやろう。


「おい。ガキはさっさと、どっか逃げてろ」


「詐欺師ユファの加護だと? そんな物を振り回しありがたがる連中に、何を恐れることがある」


 呪文を唱える。


俺の目の前でそんな剣を振るったことを、後悔させてやる。


「おい! やめろ!」


 魔力解放。


激しい力が俺の体を貫通し、天から大地を貫く。


燃え上がる碧い緑の炎柱に体が包まれた。


「無茶しすぎだ! それじゃあ、お前の体がもたない!」


 聖剣士は呪文を唱えている。


魔石の色が赤から黒に変わった。


その程度の石で、俺の力を奪うつもりか? 


銀の鎧に身を包んだ聖剣士が、魔剣を振るった。


「やめろ!」


 ディータが飛び出す。


俺は標準をその聖剣士に定めた。


『滅びの声を聞け』


 ディータが結界を張る。


それに弾かれた俺の波動弾は、そのまま俺に戻ってきた。


「バカ! ちょっとは考えろ!」


 視界がぼやける。


あぁ、またやってしまった。


本当にこの体には、未だに慣れない。


聖剣士が慌てた顔で駆け寄ってくる。


その剣を鞘に収めたから、まぁいっか。


俺は誰かの腕に抱き留められると、そのまま意識を失った。

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