第十二話 マリアからの呼び出し

 次の日の朝――


「ノア、行くぞ」


「うん。分かった」


 今は午前五時。まだ多くの人が寝ている中、俺たちは宿を出て、古代大洞窟へと向かっていた。道中の魔物と戦うと、後始末が面倒と言うことで、今は地上から二十メートルの所を飛んで移動している。


「よし、見えた」


 十分ほど飛んだところで、俺たちにとって始まりの場所とも言える古代大洞窟に到着した。その後、洞窟の中に入った俺は、適当な場所で壁に〈創造〉を使って穴を開けると、その中に俺たちの荷物をすべて入れた。


「これでよし。あとは手ぶらだと怪しまれるから、〈創造〉!」


 俺は門にいる衛兵のことを考えて、〈創造〉で剣を作ると、前に使っていたロックコングの皮で作ったさやに入れた。


「じゃ、帰るか」


「うん」


 俺たちは頷きあうと、街に戻った。そして、そのままさっきの宿に入った。そして、部屋に入った。


「はぁ~これで準備は終わった。ちょっと休むか」


 俺は体を伸ばしながらそう言うと、ソファに座った。ノアは、ベッドの上にダイブすると、ゴロゴロと転がった。


「それで、この街を出たら、次はどこに行くか……」


 最初は直ぐに帝都に行こうと思っていた。だが、俺は復讐することにとらわれすぎていて、帝都の警備の厳重さを忘れていた。帝都には、〈気配察知〉や〈熱源探知〉などの索敵系のスキルをもつ人が警備隊として大勢雇われている。そんな場所で、俺がやったとバレずに復讐するのは無理だ。その為、俺は強くなることもかねて別の街に行こうと思っている、


「ん~メグジスとかよさそうだな」


 俺は、ゲルディンの隣にある街、メグジスに行くことにした。あそこには複数の鉱山があることから、鉱山街と呼ばれれている。俺はそこで鉱石を手に入れて、〈創造〉の素材にしようと思っている。何せ、〈創造〉で作れる金属は鉄しかない。〈生産〉のスキルなら、銅や鉛、熟練者なら銀だって作ることも可能だろう。まあ、〈生産〉で作った金属は、どうやっても鉱山で採掘したものより、ニ、三割ほど質が落ちてしまう、一方、〈創造〉で作った金属は一割ほどしか質は落ちない。なので、俺は〈生産〉のように種類豊富に作れるようになりたいとは思っていない……分かったか?


「まあ、あそこなら鉱石は買うのではなく、自分で採掘したほうが安上がりだしな」


 あそこは、鉱山の前にいる門番に冒険者カードを見せながら、「中にいる魔物は倒すから、代わりに少し採掘させてください」と言えば、快く入れてくれる。鉱山にいる魔物は、強くはないのだが、厄介なものが多いし、中には鉱石を食べる奴だっている。その為、鉱山の管理者からしても、金を出さずに魔物を討伐してもらえるのはありがたいのだ。まあ、出る時に、採掘した量に見合った数の魔物を討伐していなければ、鉱石を一部没収されてしまうので、注意が必要だ。

 あと、実はもう一つ、あそこには行く理由がある。それは、あの街の領主の息子が、ハルスのネイルだからだ。あの二人は俺を殺す案を立てた奴らだ。絶対に許すことは出来ない。あと、ハルスは影の支配者シャドールーラーを資金源にする案を立てた張本人だと、ケインから聞いている。そのことについても、詳しく聞きたいと思っている。

 そんなことを思っていたら、お腹が空いてきてしまった。今は午前六時半と、朝食にしては少し早いのだが、特にやることもない為、朝食を食べに行くことにした。


「ノア、少し早いが朝食を食べに行くぞ」


「うん。分かった。あ、今日は魚の気分かな?」


 ノアは目を輝かせながら、ベッドから跳び起きた。


「分かった。じゃあ、早速行くとするか」


「うん。行く」


 俺たちは頷きあうと、部屋から出た。そして、そのまま宿を出て、飲食店へと向かった。





「はぁ~美味しかった」


「うん。美味しかった」


 食事を食べ終えた俺たちは、街でのんびりと散歩をしていた。いや、散歩と言うよりは、マリアの部下が呼び出しに来るのを待っているという言い方の方が適切だろう。ケインは、マリアが今日の朝に俺たちを呼び出すと言っていた。なら、見つけてもらえるように、堂々と歩いていた方が良いだろう。

 そんなことを思っていると、一人の鎧を着た男性が近づいてきた。


「カイン様とノア様だとお見受けいたす。私は、マリア様に仕える騎士でございます。此度こたびは、マリア様があなた方に影の支配者シャドールーラーを滅ぼした褒美を与えたいとのことですので、これから領主館に来ていただいてもよろしいでしょうか?」


 男性騎士は、礼儀正しく、俺たちに領主館に来るよう言った。


「わ、分かりました。行きましょう」


 俺は、驚いた素振りを見せながら、男性騎士の言葉に頷いた。それにしても、あのマリアにはもったいないぐらい、礼儀正しい騎士だ。ただ、ぱっと見、強そうには見えない。大体Cランクの冒険者ほどの強さだろう。


「はい。では、どうぞ私について来てください」


 男性騎士はそう言うと、領主館に向かって歩き出した。俺とノアは、周囲から、驚きや興味の視線を向けられながらも、その男性騎士に付いて行った。

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