第四話 冒険者になりました

「ふぁ~よく寝た……」


 俺は目をこすりながら言うと、起き上がった。


「あ、おはよう」


 ノアは既に起きていたようで、ベッドの隅に座ってのんびりしていた。


「ああ、おはよう」


 俺もそう言うと、ベッドから出て、ベッドの横に置いてあった鎧を着た。そして、その横に置いておいた剣を腰につけた。


「じゃあ、朝食を食べて……で、その後に金不足問題を解決する為に冒険者になるか」


「冒険者?」


 ノアは不思議そうに言うと、首をコテンと横に傾けた。


「ああ、冒険者というのはまものを倒し、その素材を売ることで金を稼ぐ職業のことだ」


 俺は簡単に説明すると、ノアと共に部屋を出た。そして、宿の主人に鍵を返すと、宿の外に出た。

 鍵を返す時に、宿の主人から「恋人とはやらなかったのか?」と小声で聞かれたが、俺は主人の目の前で拳を「シュッシュ」と振って無言の圧をかけてから、宿を出た。





 朝食を食べ終えた俺たちは、とある建物の前で立ち止まった。


「ここが冒険者ギルドだよ」


 目の前にある、木造三階建てで、入り口に「冒険者ギルド・ゲルディン支部」と書かれているこの建物こそが、冒険者が素材を売る為にある冒険者ギルドだ。

 中に入ると、右側に受付、左側に素材売却所があった。

 受付では主に冒険者登録の申請や、パーティーを組みたいと思っている人同士の相性を見極め、仲介をしている場所だ。

 そして、素材解体所では、持ってきた魔物の素材を売ることが出来る。


「すごいなあ~」


 ノアは、暫くの間冒険者ギルドの中を子供のように目を輝かせながら眺めていた。そして、俺は、そんなノアを眺めていやされていた。


 少ししてから、俺はノアと共に受付に向かった。


「すいません。冒険者登録をしたいんですけど」


「分かりました。では、お名前を教えてください」


 受付嬢は落ち着いた口調で言った。


「俺はカインだ」


「私はノア……です」


「分かりました。では、少々お待ちください」


 受付嬢は一度頭を下げてから、受付の奥へ向かった。

 そして、大体五分ほど経ったところで、受付嬢は手のひらサイズの銀色のカード二枚を持って、戻ってきた。


「こちらが冒険者カードになります」


 そう言われて、渡された冒険者カードには、中央に名前が書かれてあった。そして、その下にはランクDと書かれてある。


「冒険者のランクはS、A、B、C、Dの五段階に分かれており、これは冒険者の強さを表すものになっております。強さは、Sが一番強く、Dが一番弱いです。ランクは、受付で試験票を貰ってから訓練場に向かい、そこで試験官と戦って合格ならばランクが一つ上がります。ただし、一度試験を受けたら勝ち負け関係なく一か月は試験を受けられませんので、あらかじめご了承をお願いします」


 受付嬢はそう言うと、再び頭を下げた。


「分かった」


 俺はその言葉に頷いた。

 俺は今のところ、ランクを上げるつもりはない。

 何故なら、冒険者ランクというのは冒険者を護衛として雇う商人や貴族が一目見て強さが分かるように後から作られたもの。つまり、冒険者ランクを上げてしまうと、貴族に目をつけられて、もしその貴族が俺のことを知っておる人だったらまずいことになると思ったからだ。

 ちなみに、今の俺の強さは剣のみの勝負ならBランクぐらいだ。そして、スキルを使えばAランク上位に匹敵すると思っている。だが、元父とアレンはSランク、ケイルとレインはAランクほどの強さだ。


「じゃ、金を稼ぎに森に行くか」


「うん」


 楽しく会話をしながら冒険者ギルドを出ようとした時、三人の男冒険者に絡まれた。


「よう。お前、新人だな。いい女連れやがって……調子に乗るなよ!」


 この三人は顔をグイッと俺の目の前に近づけてきた。俺は思わず半歩下がった。


(めんどくせ~)


 冒険者の中には他人を殴ることで優越感ゆうえつかんに浸り、ストレスを発散するクズもいる。こいつらはそのたぐいの人間だろう。

 こういうやつらは反論すれば逆上して殴りかかってくる。その為、こいつらに考える暇を与えすに去るのが一番マシな対応だろう。


「調子に乗ってすみません。では、さようなら」


 そう言うと、俺はそのまま通り過ぎようとした。だが、冒険者ギルドを出る前に拳が二つ飛んできた。


「調子に乗るな――痛っ」


 俺はその拳を〈創造〉で作った鉄の盾で防いだ。


「くっ……この野郎!」


 二人は痛みをこらえながら、今度は片方の男が盾を掴み、もう片方の男が俺に殴りかかってきた。


「はぁ……俺がどうやって盾を出したのか見てなかったのか……〈創造〉!」


 俺は〈創造〉で鉄の盾をもう一つ作ると、男の拳を防いだ。


「ちっ……一体何のスキルだよ」


 二人はまだ強気の態度をとっているが、恐怖を感じたように、半歩後ろに下がった。


「じゃ、俺たちは忙しいのでね。〈創造〉〈操作〉鉄鎖捕縛!」


 俺は鉄の盾を素材に〈創造〉で鉄の鎖を作ると、〈操作〉で動かして男二人を縛り付けた。その後、すねを蹴ってひざまずかせた。これで俺の仕事は完了だ。


 ――――え!?


 周りにいる人たちは、大半の人が信じられないものを見たような顔をしていたが、強そうな人たちはどこか納得したような顔をして、頷いていた。


「じゃ、行くか」


「うん」


 こうして俺たちは古代の森へ向かった。

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