第6話

「いやー、映画面白かったねー」

 そうだね。ってか、その格好、大宇宙の意思のコスプレだったんだね。

「そうそう」

 でも何で、そのキャラ選んだの? 最後一瞬出ただけのちょい役じゃん。

「いやー、一番感情移入できるキャラだったからさー」

 宇宙の均衡を保つとか言ってたっけ? どこに感情移入してんだ?

「どのキャラに感情移入するかは人それぞれじゃん。いっちゃんはどのキャラが好きだった?」

 やっぱ、主人公かな。ベタだけど主人公が覚醒する系の話好きなんだよね。あと、アクションシーンも格好良かったし。

「敵に囲まれた状態からさー、間一髪でワープして逃げ切るあのシーンすごくなかった?」

 確かに。あのシーンは迫力すごかった。映画館で見る価値あるね、あれは。

「あ、そういえば、リュックのシーンあったっしょ?」

 あぁ、あったね。そういえば、なんでリュックのシーン知ってたの?

「あーそれね。まあ、後で話すよ」

 後でって、僕もう帰るつもりだけど。

「まあまあまあまあ。もうちょっとだけいいじゃん」

 ……僕もう人気のない場所には行かないよ。人気のある場所で解散、絶対に。

「えー、まだ疑ってんのー?」

 そりゃそうだろ。映画中に色々考えたけど、僕に映画とポップコーンとジュース奢るだけって明らかにおかしいもん。なんかたくらんでなきゃ変だよ。

「たくらむって言い方はさー、表現がよくないよ」

 否定しないじゃん! やっぱり、僕に何かするつもりじゃん……。何度も言ってるけどさ、お金は。

「お金はないんでしょ! 知ってるよ!」

 じゃあ、なんなんだよ。何が目的なんだよ。

「うーん、ここでは説明が難しいんだよなー」

 人気のない場所には行かないからな、絶対。

「いやー、でも他の人に見られてると移動できないからなー」

 ……移動できない?

「うん。人気のない場所からしか移動できないからさ」

 ……誘拐する気じゃん! 言っとくけど、親もお金ないよ!

「親はお金あるでしょ。いっちゃんが今住んでる部屋も、親のアパートでしょ?」

 なんで知ってんの……? っていうか、いつから監視してるの?

「監視っていう言い方も表現よくないよ」

 やっぱ、否定しない! ……え、誘拐も否定してなくない……?

「……誘拐も言い方がなー」

 くっ!

「あーちょっと、どこ行くの!?」

 うるせー! ついてくるな!

「いや、待って待って。あ、いや待たなくていいや」

 は?

「走って走って」

 なん、は?

「はぁはぁ、はぁはぁ」

 はぁはぁ、はぁはぁ。

「そろそろ止まって」

 止まるかー!

「いや、でもその先行き止まりだよ」

 え。

「あと、この辺、人気もないねー」

 ……うわぁ。

「うーん。あのさー、誘拐っていう言い方が本当にダメなだけでさ、ついてきて欲しいだけだから」

 人気のない場所から?

「そう」

 ……人気のない場所へ?

「まあ、それもそうかな」

 よし。

「あ、ファイティングポーズとらないで。女子に手をあげるのよくないよー」

 じゃあ、どいてくれよ!

「ちょっと、ホント、聞いて聞いて! 人気のない場所からしか移動できない理由があるの!」

 ……どんな理由だよ?

「ちょっと、見てて、あの木と木の間」

 木と木の間? 何が……、うわ、眩し……。何が光ってるんだ?

「扉」

 は? 扉?

「いっちゃんについてきてほしい場所に繋がってる扉よ」

 繋がってるって……ワープ……とか、する?

「そうそう、ワープワープ」

 え、どこに?

「うーん、なんて言えばいいんだろ。宇宙ではないんだけど、地球が見える場所だね」

 は?

「行った方が説明しやすいからさ」

 え?

「ちょっとついて来てよ」

 え? え?

「ほらほら、行こ行こ」

 え、ちょっと、押さないで。眩し眩しっ。うわ、うわぁああぁあぁああ!

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