第5話

 今日は晴れてよかった。

 よく考えたら、女子と二人で会うの人生初じゃん。人生初デートか。しかも映画もポップコーンも奢りかぁ。

 テレパシーで話しかけてくるヤバいやつに絡まれたとか思ってたけど、なんか、女子とデートもできるし、映画もタダだし良かった部分もあるな。監視されてるっぽいのは嫌だけど……。

 向こうから声かけるって言ってたけど、結局どんな見た目なんだ?

 僕の格好に色々言ってきたし、おしゃれな感じなのか? でも、いきなりテレパシーで面識ない僕に話しかけてくるようなヤバいやつだからな……。やっぱり、見た目もヤバいのか? うわー、心配になってきた。

 うわっ、ヤンキーが近づいてくる。あのヤンキーが幻聴女か? ……違かったぁ。良かったぁ……。

 スーツの人が近いてくる。僕もスーツだし、合わせて来てきたのか? 見た目は普通だな。……違う。

 赤髪が近づいてくる。赤髪はやばいだろ……。違いますように。……うわー、でも、すごい美人だなー、この人……。うわ、僕を見てめっちゃ笑ってる。


「おまたせー」


 わぁ……。脳に直接聞こえてきた声と同じ声だ。

 白いワンピースが眩しいなぁ。後光さしてるのかよ。髪の色もあるけど、アニメのヒロインみたいだなぁ。


「おーい、いっちゃん?」


 うわ、近。いい匂い。美人。

 えーと、なんて返せばいいんだ?

 うわあー、やばいなー、声でない。

 美人すぎないか。


「いや、誉めすぎでしょ」

 ……え?

「ん?」

 僕の考えてること読まれてない?

「あー、そーだねー」

 なんで?

「だって、いっちゃん、テレパシー使ってるじゃん」

 どうやって?

「相手を思い浮かべて念じるだけでできるよ。まあ、でも、念じるだけっていってもそれが難しいんだけどね」

 ど、どうやってオフにするの?

「うーん、念じなければいいんじゃない?」


 なんだ念じなければって。こっちは初めから念じてないよ。

 どうするんだ? 脳内ダダ漏れのまま一緒に行動するのは嫌だぞ。

 視界から外せばいいのか?

 ……聞こえてる?


「聞こえてるよ」


 どうすりゃいいだよ!

 完全に目に焼き付いてるな。インパクトある見た目でくるなよ、美人が!

 心頭滅却! 心頭滅却!


 ………………。

「………………」

 聞こえた?

「心頭滅却まで聞こえてたよ」

 よし! 成功したっぽいぞ!

「おー、おめでとう」

 ははは、ありがとう。

「でも、よかったよ、いっちゃんが逃げ出さなくて」

 なに? どういうこと?

「いっちゃん、派手な見た目の人間苦手そうだったから。私見たら逃げ出すんじゃないかって思ってさ」

 たしかに赤髪は派手とは思うけど、怖い系じゃなかったら、別に逃げ出しはしないよ。

「よかったよかった、いっちゃんと初めて話した日にこの格好で会おうと思って準備してたからさ。でも、いっちゃんもよかったね、私が美人で」

 は?

「美人だったら映画一緒に見ようと思ってるみたいなこと言ってたじゃん」

 あぁ、そんなこと言ったっけ? っていうか、自分で自分を美人とか言うなよ。

「いやいや、自分じゃないよ。いっちゃんが、美人だって言ったんじゃん。いや言ったっていうか、心の声漏れた感じだったけど」

 まあ、美人だとは思ったけどさ。ただ、美人すぎて詐欺感が増したけどね。

「まーた、面倒くさいこと言ってるなー」

 ………………。

「え。なに? 帰るの? 詐欺じゃないよ?」

 ……帰りはしないけど。ほんとに、なんで僕に話しかけてきたの?

「あー、それかー。……まあ、それは映画終わってから話そうか」

 やっぱ、なんか理由あんじゃん……。え、なに、臓器とか取られるの? 

「ほら、映画行こう、映画。ポップコーン買うなら早めに行かなきゃ」

 あ、ちょっと、近いよ。離れて。

「ジュースもついでだから奢るよ」

 え、マジ?

「まじまじ。だから、ほら、行こ行こ」




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