第4話

「あのさー」

 うわっ。……おいー、だからいきなり話しかけてくるなよ。

「映画行くの明日だけど、結局服どうすんの?」

 えー。別にこの服で行くよ。

「いや、やめてよ、その服は」

 別にいいだろ、スウェット上下で映画なんてザラにいるだろ。

「私が嫌なんだよ」

 でも他に服ないよ。

「高校時代の制服とかないの?」

 卒業後に制服着るやつなんているかよ。女子じゃないんだから。

「制服のスラックスとYシャツでいいからさー。それだと、制服とは思われないでしょ」

 いや、わざわざ制服じゃなくても、スーツのでいいだろ、それだと。

「スーツ持ってるの? 意外」

 馬鹿にし過ぎだろ! 大学の入学式用に買ったわ!

「ごめんごめん、極貧じゃなくて貧乏だもんね」

 それはもういいんだよ……。それよりも、話を戻してさ。

「戻す?」

 ポップコーンはおごりなの?

「極貧じゃん!」

 違うよ。奢りじゃなくてもポップコーンは食べる。食べたいからね。ただ、奢りかそうじゃないかによって、晩ご飯のメニューが変わるから。

「奢りでいい、奢りでいい」

 よっしゃっ! 言質とったからね!

「分かった分かった。はぁ……。ただ、服装だけはお願いね」

 いいよ、スーツね。あと、『ソラハトオク』調べたら10時上映か17時上映だったんだけど、どれ見に行くの?

「あー。まあ、どっちでもいいよ」

 うーん、じゃあ、10時の方で。

「OK。待ち合わせはどうする?」

 9時半に駅前で。

「分かった。見かけたらこっちから声かけるね」

 そうだね、僕、君の顔分からないし。……っていうか、僕の顔は知ってるんだね……。

「え? 当たり前じゃん」

 当たり前じゃない! 会ったことないし。ホントに、どこから見てるの? いつから? 知らない間に監視されてるの嫌なんだけど。

「それは、気にしない方がいいよ。明日も早いんだからさ、気にして寝不足とかにならないようにね」

 誰が言ってんだ! ってか、君がどんな雰囲気なのかは聞いておきたいんだけど。

「それは、会ってからのお楽しみでいいじゃん」

 こっちもどんな人待ってるか分かっときたいんだよ。

「ネタバレ嫌い派でしょ?」

 これはネタバレとかじゃないだろ。……え、何? そんなすごい見た目なの?

「あー……、おやすみー」

 あ、おい! 逃げるな!

「………………」

 うわぁ……。もう僕の声、聞こえてなさそう……。

「………………」

 おーーーーい。

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