第5話
俺たちの修行が始まった。 まずは俺が魔法を使えないので、俺の魔法を教えてくれることになった。
「奏さん、体の中から魔力が外に出ていくような感覚です!」
体の中から、出ていく感覚……できない。かれこれ半日はしたぞ。だが全くできない。
「習うより慣れろっす。俺らと戦いましょう。」
「俺らって俺も入ってんのかよ……」
まてまて。今俺と戦ったら俺死ぬぞ。
「死なないでくださいね。」
そう言って魔法で俺を攻撃する。俺はとっさに避けた。さっきのは当たってたら確実に死んでたぞ。
「殺す気か。つか勝手に始めん……」
腹あたりに何かが刺さる感覚がする。腹が熱い。
「俺がいることも忘れんな。」
クロユリがどこから持ってきたのか、剣で俺の腹を刺していた。
視界が揺らいで、体が傾く。しかし、俺は倒れずに耐えた。
しかし、攻撃は止まない。俺に前からも、後ろからも攻撃が来る。もう動けそうにない。俺は自分を守ろうと顔を手で覆った。しかし、俺は死ぬだろう。もう覚悟はできているつもりだ。しかし、きたはずの攻撃は俺にこなかった。少し手を避けると、俺の周りにはバリアのようなものがあった。
「あんた、今どうやったんすか。」
ただ純粋に、期待を込めた疑問を問うようにイバラが言う。
「……分からない。」
自分でもこの答えはないだろうと思いつつも答える。
「大正解。」
予想外の答えに少し驚く。
「無意識、それでいいんすよ。人はどうやって息をするのか、そんな問いかけによっぽど頭よくないと答えられるわけないでしょう。今俺ァあんたの意識を魔法を使うことから逸らすために戦ったんすから。ただ、魔力が体の中から流れ出る感覚はあったと思うっす。その感覚さえ覚えていたら、あんたは強くなれる。」
これが、魔法……。不思議な感覚だ。これを、自分ができていることにまた驚く。
しかし、そう驚いている時間もない。さっき剣が刺さったところから流れ出る血も止む気配はないし、二人からの攻撃も止む気配はない。しかも
イバラに関しては全く本気を出していないだろうと思う。
「奏さん、こっからは本気で殺しにいきます。クロユリさんはどこかでみていてください。」
「何だよ、やれって言われたら今度は仲間外れかよ。まぁいいぜ。死ぬなよ、奏!」
やばいよな、これ絶対。イバラから猫耳のような、オーラが出てきた。これがイバラの言ってた猫化ってやつか。
一節によると、猫は人々を守る神様として、崇められているらしい。"猫神様"という言葉もあるくらいだ。よっぽど神と猫は近しい存在なのだろう。
そんなことを考えているうちにも、イバラの攻撃は迫りくる。先程とは段違いに強い。
「ぐはっ、」
イバラの一撃があたった。俺は随分遠くまで飛ばされた。痛い、もう意識を手放したい。だが、そんなことをしたら、みっちゃんを探し出せるかどうか、いや探すことなんて不可能だろう。
イバラは強い。それは分かる。だからこそ、弱い俺にしかできないこと。
俺はイバラに向けて手を伸ばし、魔法を放った。瞬間、イバラに魔法が当たる。かすり傷程度ではあったが、当たった。そのことに俺は安堵した。
「奏さん……合格っす。ちなみに今したこと、説明できますか?」
一瞬の出来事の中で考えたことだから、確証があるかはわからない。しかし、俺は、その時確かに思ったことを口にした。
「イバラは強い。俺は弱い。イバラの攻撃は繊細に操れていると思っていたが、あれはただ強かったから、その分攻撃の範囲が広まったんだと思う。逆に、俺は弱いから、その分正確に当てることができるんだと思う。」
「大正解っす。」
イバラが笑ってそう答えた。そして、イバラが続けて言った。
「あんたは弱い。決して強くなんかない。あんたは弱いなりに強くあれ。」
俺は弱い。だけど、やりようによっては強くなる。これから努力して、強くなれる。大切な人のためだったら、どこまでも。
「奏さん、クロユリさん。いいっすか、これから行くのは茨の道かもしれません。強い敵だっているかもしれないし、死にそうになるかもしれない。」
イバラは言った死にそうになるかもしれない、と。
「でも、俺がいる限り、あんたらは死なない。」
なぜか安心する一言。
「さぁ、見せてくださいよ、あんたらの実力とやらを。」
「あぁ。」
「おう。」
俺たちは、シオンさんを探すため、歩き出す。
イカリソウの想い人探し アオイ @nant918
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。イカリソウの想い人探しの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます