第1章 敵討ち&救出編

第4話 クロユリの敵討ち

 俺たちは少し歩くことにした。歩いて、歩いて、歩き疲れた頃、ちょうど街が見えてくる手前のところだった。あの光景を見たのは。

 そこにいたのは…黒と白で半々の髪色の三編みの少女だった。そして、その少女が飛び降りようとしているところだった。

 俺は走った。二度とあの光景は見たくない。

 彼女に追いつき、倒れようとする体を支えた。あとからイバラも来て支えてくれた。


「なんで死のうとした。」


「テメェにゃ関係ねーよ。」


「関係あるんだよ!」


 俺は思いきり腕を上げ、その少女を引き上げた。

 彼女が悔しそうにしていたが、あのまま死ななくて良かったと思う。


 「話してくれないか。」


 「やだよ。なんで見ず知らずのやつに話してやらねーといけねーんだよ。」


 全く口を割る気配がない。そこで俺はまず自分のことを言うことにした。


「俺さ、好きな人と離れて、今その人を探してる。俺は会ったら死ぬんだけどな。」


 そのとき、彼女が恐る恐る口を開いた。


「嘘、お前も……?」


 も?まさか、こいつも俺と同じなのか?


「俺さ、兄貴と弟と親父と暮らしてた。だけどさ、その日、変な奴らがやってきて、弟と親父を目の前で殺された。兄貴はあいつらが兄貴の力がどうとかって言って連れてかれた。俺はずっと隠れてた。そして最後にあいつらに釘を差された。兄貴を助けようしたら殺すってな。」


 俺よりも大変な世界を生きている気がする。


「なぁ、俺たちと旅をしないか。俺はお前の兄貴を助ける。お前は俺の好きな人を助ける。お互い利害が一致するだろ。」


 ちょっと照れくさそうに彼女が言った。

 

「おう、……どうしても俺と仲間になりたいっつーんなら、なってやらねーこともねーけど。」


「どうしてもお前と仲間になりたい。」


「そ、そうかよ。勝手にしろ。」


 少し照れて彼女が言った。


「そういえばまだ俺たちお互いに名前知りませんよね?自己紹介しましょうよ。俺ァイバラっす。」


 名前か、そういえばまだ自己紹介していなかったな。


「俺は碇奏。奏って読んでくれ。」


 「イカリ・ソウ?変な名前だな。俺はクロユリだ。」


 あっそうか。ここでは姓と名を逆にするのか。


「間違えた。ソウ・イカリだ。」


 クロユリが馬鹿にしたような声で俺に言った。

 

「何だよお前。自分の名前間違えるとか。変なやつ。」


 ちょっと腹が立つ。

 そういえば、そのお兄さんのこと知らないな。これじゃあ探せない。俺はクロユリにお兄さんのことを聞くことにした。


「なぁクロユリ。その、兄貴ってどんなやつなんだ?名前は?」


 クロユリが少し考える。そして、口を開いた。


「シオン。紫髪で胸まで伸びた髪を一つの三編み


している。身長は180cmくらい。」


 ……とりあえず紫の一つの三編みだけ覚えておこう。


「お前の探しているやつは?」


 俺の方も言わなきゃいけないな。どう言おう。


「名前はミズキ・ハナミ。ピンク髪のショートでメガネをかけている。身長は150cmくらい。」


「ふーん。」


 興味なさそうにクロユリが返事をした。こいつちゃんと覚えてるんだろうな?


「奏さん!クロユリさん!」


 イバラがちょっと慌てたように言う。


「これから敵討ちに行くんだったら、ちょっとここで修行してから行きましょう。きっと相手は今のあんたたちが簡単に勝てるような人ではないはずっすから。」


 修行……。そういえばまだ俺魔法の使い方も分からないし、このまま行ったところで、きっと犬死だった。せめてもう少し強くなってから行かないと。


「……安全…とこ…で…だめ…………か……」


 イバラが独り言のように小さな声でいう。何を言っているかあまり聞き取れなかった。


「イバラ……?」

 

 俺がそう言った途端、その声を聞きたくないとでも言うようにイバラが言った。

 

「よし、じゃあ修行開始しましょう。俺に一発でも魔法を当てられたらクリアっす。二人で協力してもいいっすよ。」


 こうして始まった、イバラとの修行。魔法の使い方すら分からない俺だけど、絶対クロユリのお兄さん助ける。もう二度と、誰かが悲しむ姿を見たくないから。

  


 

 




 




 






 

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